「4歳の壁」という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。
心も体も大きく成長するこの時期に子どもの情緒が安定せず、わがままを言う、癇癪をおこすなどの行動が見られ、その対応に困っている親御さんも多いのではないでしょうか?
ここでは、「4歳の壁」とは何か、その向き合い方や子育てのポイントを元幼稚園教諭の目線からお伝えしていきます。
目次
4歳の壁とは?
4歳児の発達段階
4歳児は幼稚園でいうと、年少、年中組の子どもたちで、心と体が急速に発達する時期です。
具体的な発達段階としては、生活習慣が身につくこと、社会性、知能や言語の発達が挙げられます。
生活習慣が身につく
生活習慣が身につくというのは、衣食住、日常生活のあらゆる場面で、身の回りのことが一人でできるようになるということです。
衣服の着脱や衣服をたたむこと、トイレにいって自分で始末ができること、うがい手洗い、荷物の準備片付けに、ものを整理整頓すること、今までは援助が必要だったものが、自分で自主的にできるようになります。
社会性、知能、言語の発達
社会性の発達としては、友だちとの関わりの中で、ルールを守ることや相手の気持ちを考え思いやることを学び、けんかをしても自分たちで解決する力が徐々に身に付いていきます。
知能や言語の発達も著しく、何事にも興味を持って「なんで?」「どうして?」と理由や仕組みを知りたがるようになります。
昨日や明日などの時間の感覚も身についてくるので、過去、現在、未来のことを理解し、話すようになります。
記憶力もアップし、歌や絵本の内容を覚えることや、園であったことを記憶して細かく話してくれることもあるでしょう。
もちろん発達には個人差がありますので、全てがいきなりできるようになるわけではありませんが、子どもたちの見ている世界がぐっと広がり、表現方法も変化していくことから4歳児は子どもの心が大きく成長する時期であることが分かるかと思います。
このような急激な心の発達に、子どもが戸惑い不安を感じることから、4歳前後に子どもの情緒が不安定になると考えられています。
では、具体的にはどのような行動の特徴があるのでしょうか?
4歳の壁と特徴的な行動
4歳の壁の特徴は「思い通りにならないと泣きわめき癇癪をおこす」「乱暴になる、暴力的な言葉を使う」「言うことを聞かなくなる」の3つがあります。
思い通りにならないと泣きわめき癇癪をおこす
イヤイヤ期にも手を焼いた子どもの癇癪、落ち着いたと思ったのにまたどうして?とお困りの方も多いことでしょう。
4歳児はイヤイヤ期の頃と比べて体が大きくなり、パワーもアップ、更に知能も発達して、いままでと同じ対応では通用しないという人も多いようです。
落ち着かせようとかけた言葉で更に癇癪がエスカレートすることもあります。
乱暴になる、暴力的な言葉を使う
どこで覚えてきたのだろうと疑問に思うような乱暴な言葉を使うことも4歳の壁の特徴です。
言葉の暴力だけでなく、思い通りにならないときに叩く、蹴るなどの手が出てしまうこともあります。子ども同士のけんかもエスカレートし怪我に繫がることが増えてきますので注意が必要です。
言うことを聞かなくなる
親が言うことを聞こえないふりをしてやらなかったり、わがままを言って聞く耳を持たなかったり、「やだ、やらない」と頑なに拒否したり…突然、親のいうことを全く聞かなくなり、困っている方も多いようです。
今までできていたことをやらなくなり、支度が進まない、食事が進まないといったように、できていたはずの習慣を急に拒否することもあります。
4歳の壁にどう向き合えばいい?子育ての3つのポイント
では、子どもの問題行動にどのように向き合い、対応していけばよいのでしょうか。
4歳の子育てをする上で大切な3つのポイントについてお話していきます。
今日はいいや!と割り切って甘えを受け止めてあげよう
身の回りのことをやらないとき、言うことを聞いてくれないとき、ついつい「早くやりなさい」「ママの言うことを聞いて」「もう自分でできるでしょ」など、親の都合で声掛けをしていませんか?
もう4歳なのに…と思ってしまいますが、子どもは成長の不安や戸惑いを感じる中で、まだまだ甘えたい気持ちがあります。
今日はいいか、と割り切り、子どもの身支度を手伝う、子どもの言い分を聞くなど子どもの甘えを思い切り受け止めてあげましょう。
しっかりと甘えを受け止めることで、子どもは安心感に包まれ、徐々に情緒が安定してきます。
「今日は一緒にお支度しようね、でも○○は自分でできるかな?とっても上手にできてかっこいいから、ママに見せてほしいな」など、受け止めて援助する部分と、自分で行うように促す部分の線引きをしていくと子どもは安心感を感じながら、自主性を高めていくことができます。
イライラしてしまうけれど、ゆっくりじっくり子どもの話を聞くのが近道!
癇癪を起こしているとき、いきなり暴力的な行動に出ているときは子ども自身も何がしたいのか、どうして泣いているのか怒っているのか混乱し分からなくなっている場合があります。
そんなときに落ち着くように言われても、なかなか落ち着くことができず、分かってもらえないイライラから行動が更にエスカレートすることも…。
そんな時は、まず子どもの混乱が落ち着くまで、とにかく待って、少し落ちついてきてから「どうしたのか、ゆっくりでいいからお話してくれるかな?」「○○したくない気持ちだったの、どうしてかな?」など、気持ちに寄り添う声掛けをしながら、ゆっくり話をききましょう。
早く解決したいと焦る気持ちは子どもに伝わり、より問題が長期化する場合があります。忙しいときに限って起こる子どもの癇癪、急がば回れの気持ちで、じっくり向き合うことが解決の近道になります。
親子で気持ちを落ち着かせる習慣を身に付けよう
癇癪やワガママがなかなか落ち着かないときにひと休憩、気持ちを落ち着かせる習慣を身につけておくことで問題が解決することもあります。
例えば、少しお茶を飲む。大人もイライラしているとき、疲れているとき、好きな飲み物を飲むことで気持ちが落ち着くことはありませんか?
「一回お茶飲んで落ち着こう」と声を掛け、休憩することで気持ちが落ち着くことがあります。気持ちをリセットできる簡単な習慣を身に付けておくと、一度癇癪をおこしてもすぐに気持ちをコントロールできるようになっていきます。
子どもだけではなく、大人にも同様に気持ちを落ち着かせる習慣が必要です。
乱暴なことを言われたり、言うことを聞いてくれなかったり、終わらない癇癪に付き合っていると、ついついこちらも感情的になってしまうと思います。
そんなときに、目を閉じて深呼吸をする、ポジティブな言葉を思い浮かべるなど落ち着かせる方法を身に付けておくといいでしょう。
4歳の壁は心の成長にとって大切なステップ!
4歳になって情緒が安定せず、子どもにどう対応していいのか、発達に問題があるのではと悩んでいた方も多いのではないでしょうか。
4歳の壁は、多くの子どもが直面する発達の過程です。
またイヤイヤ期が始まったのでは、と不安に感じていた方も、子どもの心の成長の大切なステップだということを理解して、焦らずじっくりと向き合い、子どもに合う対応方法を見つけていきましょう。