不動産経済研究所の「超高層マンション市場動向 2015」によると、全国で建設・計画されている超高層マンション(20階建て以上)は10.15万戸に達するそうです。
中古物件として値崩れの起きにくい、換金性に優れた超高層マンションの人気は根強く、首都圏、地方の中核都市を中心にその数を伸ばし続けています。
そんななか、ベランダから子どもが転落し、命を落とすという痛ましい事故があとを絶ちません。
その背景には、マンションで生活する子育て世代の増加により、幼少期から高い場所で生活していて高所に恐怖心を抱かない「高所平気症」の子どもの増加があると専門家は指摘します。
「興味のあるもがベランダの外にあれば、どんな恐ろしい行動でも取れるのが高所平気症の子どもの特性だ」と警鐘を鳴らします。
目次
どうして高所平気症になってしまうの?
そもそも、高いところが怖いという感覚は後天的に養われるものです。
ジャングルジムや滑り台などの遊具で遊んだり、ときには膝を擦りむくような痛みを味わう経験をとおして、高いところが危険だという感覚は自然に身につけられていきます。
高所の恐怖心は4歳までに発達する
一般的に、高い場所が危険かどうか判断する感覚は、4歳までには大人の8割程度まで発達すると言われています。
ところが、最近は転落事故を見越した公園遊具の撤去が進むなど、地域によっては遊びをとおして高さによる危険を学ぶ機会が以前よりも少なくなっています。
高層マンションに住む子は高所平気症になりやすい
さらに高層マンションに住んでいる子どもは、高さに対する感覚が麻痺しやすくなります。
子どもたちは、自分の目の高さを基準にして地面との距離を判断しています。
しかし、高層マンションなどのあまりにも地面から遠く、高さが判断しずらい空間で生活する子どもは、自分がどれほどの高所にいるのかを感覚的には理解できないまま、ひいては高い場所が怖いという感覚も養われないまま成長していくというわけです。
高所平気症にならないためにはどう育てていけばいいの?
先の項で触れたように、本来高所に対する怖いという感覚は、遊びをとおして自然に身についていくものです。
外遊びの機会を積極的に持つようにする。親が先回りして危険を排除しすぎない(もちろん、見守りは不可欠です)。
などの工夫で「滑り台の上って高いな、ちょっと怖いな」という感覚を養うことができます。
また、高いところにいる子どもに、親が心配して見守っている姿を見せることも、高所では慎重に行動しないと危ないんだなと理解させるうえで有効です。
難しいことですが、事故につながるような危険は排除しながら、子どもを成長させる小さな冒険の芽は摘まないであげたいですね。
どんなシチュエーションで事故は起きているの?
東京消防庁によると、同庁管内で発生した乳幼児の高所からの転落事故は、平成23年〜25年の間に65件発生しています。
高所平気症に事件の発生ケース
- 母親が近くのコンビニまでちょっと買い物に出かけている間に、マンションの12階で留守番をしていた4歳の女児がベランダから転落。
- 母親が兄弟の忘れ物を届けるために1階に降りている間に、妹と留守番をしていた4歳の男児が10階のベランダから転落。
乳幼児の転落事故は、子どもだけが室内に残されている状況で起こることが多いようです。
専門家によると「子どもは、親がいなくなった不安に耐えられず、何とかして親を探そうとする。外に親がいると分かれば、ベランダから覗きたくなってしまう」のだそうです。
転落以外のやけどや誤飲などの家庭内事故全般を予防するためにも、就学前のお子さんだけでの留守番は極力避けましょう。
高層マンションでも高所平気にしないためにはどうしたらいいの?
高いところが危険だという感覚が養われるのは4歳までだといわれています。
そのため、4歳までに身についてしまった高所感覚はその後も引き継がれていきます。
高所の危険性を知識として理解できる大人になれば別ですが、乳幼児期や成長期の子どもにとって「高所平気症」は、事故にあう確率を高めてしまう危険な感覚です。
しかし、子どもの高所感覚はそうそう変えられないとしても、大人が転落防止のための対策をきちんととれば、高層マンションでも安心して子育てすることができます。
転落防止の対策には、つぎのようなものがあります。
1.ベランダから物を片づける。室外機も子どもの足場にされないよう、柵から60センチ以上離しましょう
建築基準法でベランダの柵の高さは110センチ以上と定められています。
しかし、何か台になるようなものがあれば、子どもは簡単に乗り越えてしまいます。都内の幼稚園児約90人を対象に行われた調査によると、4〜6歳の子どもでも、高さ70センチほどの台のうえには簡単に足をかけてのぼることができたそうです。
もし高さ70センチの物の上に子どもがのぼった場合、体の大半は110センチの柵より上に出てしまいます。
「頭が大きい子どもは、その重みで少し乗り出しただけでも転落する」と専門家も警告しています。
2.窓は常に施錠。場合によっては補助錠の使用も有効
子どもがひとりでベランダに出てしまうことがないよう、窓は常に施錠する習慣をつけましょう。
子どもの手の届かないサッシの上部に補助錠をつけるのもよいですね。
サッシを少し(10センチ以内)開いた状態で補助錠のロックがかかるように調整すれば、風通しのための開閉もできて便利です。
3.転落防止ネットの設置
凹凸の少ないすっきりとしたシルエットで外観を壊さず、カラーバリエーションも豊富な転落防止ネットが3000円ほどの手頃な価格で手に入ります。
ベランダをリビングの延長として利用したい場合などは、設置を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
痛ましい事故を防ぐため、高層マンションで子育てする場合は「高所平気症」のリスクを十分理解して、必要な対策はきちんと取るようにしたいものですね。
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