4月に入り、新しい学年が始まりました。晴れて進学を迎え、新しい学校で新生活を始めたお子さんも多いのではないでしょうか。
さて、そんな時期に気になるのは「うちの子、うまく馴染めているかしら?」ということ。
学年が上がるだけならまだ、お友達の顔ぶれもそんなに変わりませんのでそんなに心配することはないと思います。
しかし、新しい学校に進学する年には、やっぱり親としてはどこか心配ですよね。
「小1プロブレム」という言葉は、よく聞くようになりました。
小1プロブレムとは、幼稚園や保育園から進学してきた子どもたちがうまく学校に馴染めず、立ち歩いたり、集中して話を聞けなかったりする状態が続くことを言います。
通常1・2か月程度で落ち着いてくるのですが、ずるずると長引いて学級崩壊に近い状態に陥ってしまうケースもあります。
これは、小学校での集団生活が幼稚園・保育園での集団生活よりも急にタイトになることに原因があると言われています。
また、小学校では机を並べて椅子にしっかりと座り、45分間(小1では30分程度に区切っている先生もいる)授業を聞かなければなりません。
これまで自由に遊んできた子どもたちにとっては、とても負担の大きいことです。
こう言った環境の変化が子どもたちに与える影響は、大人が思っている以上に大きい場合があります。
高1にも乗り越える壁がやってくる
小さい子だけかと思いきや、実は高校1年生にもそう言った環境変化に適応できない子がちらほらいます。
これまではさしあたり問題になってきませんでしたが、最近になって「高1クライシス」という名前がつくようになってきました。
高1クライシスとは、高校進学後に、新しい学校や学習に馴染めず、不登校になったり、ひいては退学したりしてしまうことを言います。
ストレスから、頭痛や腹痛、吐き気などの身体的症状を伴うことも多いです。高校の中退や不登校の問題が高校1年生に集中していることから高1クライシスと呼ばれるそうです。
公立中学校に通っていたならば、高校受験をしてその高校に入学していきます。
通学距離が比べものにならないくらい伸び、これまでずっと一緒だった友人たちはおそらく別々の高校に進学することになるでしょう。
一から、人間関係を構築していく久しぶりの機会に戸惑ってしまいます。
また、学習面でも中学と高校ではかなり量的に差があります。
これまで順調に好成績をとっていた生徒でもつまずきやすくなります。さらに高校は受験で入るので、自分と同じような成績の生徒が集まります。
ですので、ちょっとわからなくなっただけでも、テストの点や度数分布で一気に落ちてしまうことがあるのです。
こういうことが原因で高1クライシスは起こるとされています。
こんなことで?と思うかもしれませんが、少しのことで揺らぎが見えるのが思春期特有の不安定さであるようにも考えられます。
アイデンティティの崩壊や自信の喪失につながることも
思春期真っ只中であるからこそ、問題は根深く解決しづらいように思います。
小さい頃であれば、お友達が増えて学校に馴染むことで自然に解決する場合が多いのですが、高校生ともなれば、学校の中での人間関係は時として大人のそれよりも複雑になることもあります。
思春期や青年期では「自分って誰?」「どんな存在なんだろう?」という葛藤と闘っていると心理学では言われています。
確かに「キャラ」や「クラスの中の立ち位置」というものがこの頃の本人たちにとってとても重要そうですよね。
難しい時期だからこそ、高1クライシスに陥ると「キャラの崩壊」が起こりやすくなります。
中学生までは活発に過ごしていた子が突然高校で不登校になるケースも珍しいことではありません。
おそらく、その子の自信が環境の変化によってボロボロとくずれさり、本人ではどうしようもなくなってしまったのでしょう。「格好悪い」自分が受け入れられないのです。
問題は根深く、本人の気質の問題が浮き彫りになることも
不登校や引きこもりになってしまった時、親としてはなんとか立ち直ってもらおうといろんな手立てを打とうとします。
カウンセリングや心療内科を勧められて受診することもあるでしょう。
そういった時に、もしかすると「心身症」などの診断がつくかもしれません。
また、根本的な問題として、家族関係や母子関係の不安定さから高1クライシスに陥りやすい気質を持っていて、たまたま高校生の時に問題が表面化した、というケースも少なくはありません。
親としては驚いてしまうかもしれませんし、落胆してしまうこともあるかもしれません。
ですが、決して自責の念にかられず、子どもと二人三脚でまた関係を構築して、その先の進路をどうするのかゆっくりと考えていくことが大切です。
親としてできること
親としてできる高1クライシス対策の一つは、事前に進路は多角的によく考えることです。
偏差値や学校のネームバリューだけで進路を決定していませんか?もしそうだとして、お子さんはそれに背伸びしすぎていないでしょうか?
高校は青春時代を過ごす大切な場所です。
偏差値はその後の学習面のことを考えても適切なところに行くのがもちろん大切です。
でもその他の要素として、学校の雰囲気や人数、女子校か男子校か共学かというところも大きな要素であることは間違いありません。
本人の選択とはいえ、まだ中学3年生。
親御さんはこう言った他の要素も含めて、どの学校がわが子にあっているのか、アドバイスしてあげてほしいと思います。
もう一つは、進路選択のいい機会だと捉えて、もう一度親子でじっくり考えてみる体制をとることです。
不登校だから、退学してしまったから、とお子さんは自信をなくしていることでしょう。
ご両親はこれまで以上に温かく包んであげてください。成長とともに徐々に離してきた距離を、もう一度近づける必要があるかもしれません。
人より遠回りになってしまったとしても、必ずまたスタートラインに立ち直せる日が来ます。
ですのでどうか、ご両親が一番の味方になって、自信とアイデンティティの危機を迎えているお子さんを助けてあげてくださいね。