子どもが小さな時は、絵本の読み聞かせや一緒に図書館に出掛けたりしたこともあるけれど、子どもが小学生になると、段々とそういった機会は減っていってしまうご家庭も多いのではないでしょうか。
今回は教諭経験から小学生の読書について、目指すべき読書量や学力との関係に着目してお伝えしていきます。
小学生の平均の読書数!読書数は増えている?減っている?
小学生でもスマートフォンやタブレットを持っている、または家族のものを自由に使える環境が整っている家庭も多くなっています。
そのため、動画を観たり、ゲームをしたりする時間が増え、何となく読書をする時間が減少しているのではないかと思っていませんか?
結果から言ってしまえば、たくさんの市町村ごとの調査や企業調査があり、調査によっては「減少している」という結果もあれば、「減少はなくむしろ緩やかに上昇」という結果を発表している場合もあります。
調査対象者や人数の違い、地域によるところも多いのかもしれません。
今回、筆者が着目したのは「全国学校図書館協議会」と「毎日新聞社」が毎年6月に全国小中高校で実施している読書に関する調査です。
結果によると、小学生の1か月間の平均読書冊数は、2000年頃を境に、それまであまり大きな変化は見られませんでしたが、上昇傾向へと転じているのです。
2021年の結果では、小学生の1か月間の平均読書数は12.7冊となっています。
また、不読者(1か月間に読んだ本が0冊の児童生徒)の割合は、小学生5.5%となっています。
「朝の読書」の取り組みとその効果
では、なぜ意外にも小学生の読書量は増えているのでしょうか。
その1つが「朝の読書」にあると言われています。この記事を読まれている方の中にも、「朝の読書」を経験した方は多いのではないでしょうか。
朝の読書活動は、毎朝始業前の数分から数十分間、生徒と教師が一緒に全校一斉で、自分の選んだ好きな本を自分のクラスで読む活動です。
この取り組みは1988年に千葉県の高校ではじまり、全国の学校へ広がっていきました。
「朝の読書推進協議会」によると、2021年3月31日現在、実施校は全国の小中高校合わせて26,422校、実施率の全国平均は76%になります。
その中でもやはり小中学校での実施率の全国平均は高く、小中学校ともに81%となっています。
ではなぜ朝の読書が全国に広がったのでしょうか。
始業前に本を読むことで、授業に落ち着いて臨む姿勢を整えられ、子ども達も、本が話すきっかけになったり、本を読む習慣が自然と身に付いたり、嬉しい効果が教師をしていてみられました。
短い時間でも続けていくことで、子どもたちの集中力や知識が身に付き、心の豊かさに本当に影響してきます。
そして、いつしか子どもたちの中には朝の数分間だけ読めばよかった本を、続きが気になるからと、休み時間に読んだり、家に帰ってから読んだりと、自然と読書時間が増えていく子も出てくるようになります。
その結果が、読書量の増加へと少なからず影響していると考えられています。
読書量と学力の関係性は?
文部科学省の「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平成13年法律第154号)の基本理念(2条)には、「子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないものであることをかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。」とされています。
また、教科等の目標や大まかな教育内容を定めた小学校学習指導要領にも、小学1・2年生の国語で「言葉がもつつよさを感じるとともに、楽しんで読書をし、国語を大切にして、思いや考えを伝え合おうとする態度を養う。」。
小学3・4年生の国語で「言葉がもつ強さに気付くとともに、幅広く読書をし、国語を大切にして、思いや考えを伝え合おうとする態度を養う。」。
小学5・6年生の国語で「言葉がもつつよさを認識するとともに、進んで読書をし、国語の大切さを自覚して、思いや考えを伝え合おうとする態度を養う。」という目標があります。
このように、読書をすることはとても学習の面でもとても大切なものとされているのです。
国語以外でも、算数では文章を読み、内容を理解できなければ答えを導くことはできません。
本を読み想像することは、日常生活で友だちや周りの人がどう考えているか考える力を身に付ける等、「本を読む」ことで磨かれる力は多方面に亘ります。
高学年の読書量は幼い頃からの読書習慣でかわってくる!?
では、具体的にどのくらいの量を読ませたらいいか、どんな本を読ませたらいいか、というと、それは子ども次第になってしまうでしょう。
子どもにも得意・不得意、好き・嫌いがありますので、親が「本を読みなさい」と言っても、本に興味が持てない子もいるでしょう。
そういった子に無理やり読ませると、余計本に対してよいイメージがなくなってしまいます。
本を読むのが嫌いなら、「学校の朝の読書だけでもがんばればよし」としたり、様々なジャンルの本をさりげなく目のつくところに置くなど工夫したり、環境を整えてあげることが大切かと思います。
学年が上がるにつれ、特に高校生になると読書量はガクンと下がる調査結果もでています。
その理由の1つが「幼い頃に読書の習慣がなかったから」。
ですので、大きくなっても本を読み続けられるように、幼い頃からの読書の習慣を身に付けていけるとよいでしょう。
ちなみに「朝の読書推進協議会」が発表している子どもたちに人気の本の調査では、小学生は「かいけつゾロリ」(ポプラ社)シリーズが11年連続で1位、2位は学習漫画シリーズの「科学漫画サバイバル」(朝日新聞出版)とのことなので、もしお子様が読書に興味がないならば、このような結果を参考にすすめてみるのはいかがでしょうか。
まとめ
いかがだったでしょうか。
小学生の読書量が意外にもじわじわと上昇していることに、驚いた方も多いかもしれません。
「朝の読書」には、「みんなでやる」「毎日やる」「好きな本でよい」「ただ読むだけ」という4原則があります。
どんなことでも習慣化するには、小さく、簡単なことから、時間を決めて、コツコツと長い時間をかけて取り組む必要があります。
あまり細かく縛り付けてしまうと、子どもが窮屈に感じ、読書自体を好きになれずに成長してしまう可能性もあります。
学校での「朝の読書」の時間もあるかもしれませんが、子どもが落ち着くことができる家で、家族みんなで「読書タイム」をつくり、心を癒すのも子どもにとって素敵な時間になるのではないでしょうか。