皆さんは「科学の甲子園」ってご存じですか?
令和4年で第11回を迎えた科学の甲子園は、科学技術振興機構(JST)の次世代人材育成事業の1つとして行われている高校生向けの競技大会です。
中学生向けの大会としては、「科学の甲子園ジュニア」があります。
以前、筆者の息子も地方予選大会に学校代表として参加したのですが、出題される問題がとてもユニークで面白いなと感じましたので、是非皆さんにご紹介したいと思います。
将来の高校選びの指標としてはいかがでしょうか。
目次
科学の甲子園とは
科学の甲子園とは高校生など(中等教育後期課程、高校専門学校)を対象に、科学への興味と裾野を広め、実力ある未来の人材育成を目的として、平成23年より科学技術振興機構(JST)により主催されている競技大会です。
令和5年には第12回を迎えます。
生徒達は6,7人で1グループとなり、学校代表としてまずは47都道府県で開催される予選大会に参加します。
予め出されていた実技テーマについて競い合い、勝ち抜いた学校が県代表としてつくば市での全国大会に進むことができるようになっています。
平成27年の予選大会では輪ゴムを動力として走る車のキットが事前に参加者に配布され、当日までにそれを作成して行き、当日は会場で決められた条件の下、タイムを競い合いました。
社会人の様な特別な部材や本格的な機械を用いて競い合うのではなく、紙やワイヤー、クリップ、ストローといった学生らしい材料を使うところに特徴があります。
科学の甲子園で出題されるのは筆記問題と実技問題
本大会では、化学・物理・生物・情報に関する筆記競技や実技競技が3日に渡り行われます。
問題内には「話し合って意見をまとめなさい」などチームワークを促す記述がよく見られ、メンバーと力を合わせて競技することを推奨する高校生大会らしい一面もあります(コミュニケーション力も評価の1つとして位置づけています)。
出題問題はかなり難しいですので、まさに知力と能力を結集して挑む『チームワーク』は勝敗を分ける重要なポイントとなりそうですね。
科学の甲子園では物作りや実験の能力も競い合う
科学の甲子園で特に面白いのが、実技競技についてです。
例えば、科学に必要とされる実験技術を見極めるような、
「マグネシウムの燃焼熱について、机の上の試薬や器具を使って実験し求めなさい」といった問題や
「甲子園の土を持ち帰るのは今や高校球児にとっての常識である。なるべく多くの土を入れることができる容器を段ボールとカッターを用いて作りなさい」
「コーヒーフィルター8枚とたこ糸、ワッシャーを用いて60分以内になるべくゆっくり落下するパラシュートを作りなさい」
など、非常に遊び心のある実技問題が出されることが多く、高校生達は楽しんで競技をこなせているのだろうなと想像できました。
科学の甲子園常連校は集中化
毎年300校以上、8,000人以上が参加する科学の甲子園ですが、5年という歳月の中、初出場の学校もある一方、県によっては常連校が固まってきているという現象も見られています。
例えば栃木県立宇都宮高等学校や神奈川県にある栄光学園高等学校、鹿児島のラ・サール学園などの9校は、5大会連続で全国大会出場をを果たしています。
これらの中には、福井県立 藤島高等学校や滋賀県立 膳所高等学校など、科学技術振興機構より『スーパーサイエンスハイスクール』として認定を受けている学校も含まれており、高いレベルでの理数教育が実施されていることがうかがえます。
また、京都の洛星高等学校や愛知の海陽学園、鹿児島のラ・サール学園などは、偏差値が高く難関と言われる中高一貫校です。
特に愛知の海陽学園は第5回の大会では、初出場で初優勝を果たし、生徒の優秀ぶりをアピールしました。
スーパーサイエンスハイスクール:http://ssh.jst.go.jp/school/list.html
科学の甲子園 優勝校一覧
第1回 | 埼玉県立 浦和高等学校 |
第2回 | 愛知県立 岡崎高等学校 |
第3回 | 三重県立 伊勢高等学校 |
第4回 | 千葉県代表 渋谷教育学園幕張高等学校 |
第5回 | 愛知県代表 海陽中等教育学校 |
第6回 | 岐阜県立 岐阜高等学校 |
第7回 | 神奈川県代表 栄光学園高等学校 |
第8回 | 愛知県代表 海陽中等教育学校 |
第9回 | 大会中止 |
第10回 | 京都府立洛北高等学校(京都府代表) |
第11回 | 筑波大学附属駒場高等学校 |
現在の理数科教育
このように現代では、一昔前の様な画一的な教育でなく、中等教育・高等教育の時代からエキスパートを養成する様な専門教育の時代に移ってきています。
学校単位で参加するという“誰でも参加可能”な大会を通し、国を牽引していく分野の魅力を子供達に感じさせ、数学や理科への探究心や希望を掘り起こしています。
それでいて、ものづくりの技術や実験の能力(本大会では実際に白衣を着用)、実験結果を検証する力(実験ノートの使用)、仕事には必須のコミュニケーション能力(チームワーク)など、具体的なスキルを総合的に問いかけ、伸ばしていこうとしているのが、この科学の甲子園だと思います。
科学の甲子園での参加成績はまさに、学校に対する生きた成績表でもあると思います。
ご家庭で志望校として検討している学校が科学の甲子園でどんな成績を収めているかを調べてみるのも、志望校を選択する1つの良い方法ではないでしょうか。