まだ記憶に新しいかもしれませんが、東京医科大の入試問題を覚えていますか。
女子の入試の点数を低く計算し、女子の入学者数を抑えるための操作が行われていたことが分かり問題となりました。
そうしなければ女子の入学者が多くなってしまう、とのことでしたが、それはすなわち女子の方が試験結果は良いということにつながるのではないでしょうか。
一般的に“女子生徒の方が男子生徒より成績がよい”と聞きますが、実際はどうなのか、教育現場の経験などを踏まえてみていきましょう。
目次
男の子と女の子の学力差はあるの?経験からの持論!
実際に教師として働くと中学生ぐらいまでは女子生徒の方が成績がよい、という印象がないわけではありません。
女の子の方が“読み取る力があるな”と感じるのです。
しかし、数学や理科など特定の教科を考えると、男の子は空間認識が得意で、興味を持つ子も多く、女の子たちよりできる印象もあります。
また、男の子の中には、中学・高校3年生で部活をやめると驚くほど成績が伸びる子も多いようにも感じます。
結局持論として、女の子は地道にコツコツやる子も多く、全体的に一定の水準を超える割合が多いが、男の子はゲームや部活など勉強以外にも興味があるものがあり、勉強に集中すればできるのに、やらない。そんな印象を持っています。
学力差の現状
PISA(Programme for International Student Assessment)調査
OECD(経済協力開発機構)が進めている国際的な学習到着度に関する調査が3年ごとに行われているのをご存知でしょうか。
この調査は2018年がちょうど調査年だったため、ニュースや新聞で見かけた記憶もあるかもしれません。
PISA調査では15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野を調査しています。
この調査の特徴は学校で習った知識を測るものではなく、習った知識を使えるかという思考力を測る調査であるということです。
2018年の調査結果はまだ出ていないので、今回はそれ以前の結果を基に見ていきたいと思います。
まず、男女による学力差はあるのか、という点についてです。
PISA調査から15歳児は男子の方が女子より全般的に得点が低いことが分かりました。
特に読解力の習熟度が低い場合、読解力は他の学習の基礎にもなっているため、他の科目の成績も悪いことが分かりました。
ただし数学に関しては大多数の国や地域で女子の方が男子の成績より劣るという結果も出ています。
OECDは様々な結果から、「学業成績の男女格差は生まれつきの能力差ではなく、男子と女子の両社が持てる能力を十分に発揮し、自己の社会の経済成長と福利厚生に貢献できるようにするためには、両親、教師、政策決定者、オピニオンリーダーが一致協力する必要がある。」と結論付けています。
全国学力テスト
こちらの方が日本の男女間での学力差について明確になるであろうと調べてみましたが、残念ながら男女の教科別の成績についてはあきらかにされていませんでした。
体力テストでは男女差を明らかにしていますが、学力に関しては男女差を明確にする必要がない、ということなのかもしれません。
その他民間調査、テスト結果
その他の調査などをみてみると、国語は女子が、数学・社会・理科は男子がそれぞれ成績がよい、という結果をだしているところが多かったように思います。
また、テスト・調査の内容が「考える」ことが多いと女子の方が男子に比べて点数がよく、「知識のみ」を必要とする場合には男子の方が点数は高い傾向にあることがわかりました。
脳から見る学力差
脳が大きいのは男性、表面積が大きいのは女性
脳の大きさを男女で比べると、男性の方が8~13%ほど大きいそうです。
しかし、女性は脳皮質がたくさん折りこまれているため、表面積は男性に比べて大きいとのことです。
ただし、脳の大きさは知能に関係していないことは研究で明らかになっています。
男性は空間把握能力、女性は言語能力
男女の間には、知能指数そのものに有意な差はありません。
しかし、昔から男性は空間把握能力が、女性は言語能力がそれぞれ高いといわれてきました。
ただ、科学的根拠がないため最近ではそれも否定されつつあります。
「脳の作りが違うから」と言われれば、異性の理解しがたい言動にも諦めがつくために言われてきたものと考えられています。
まだまだ脳には分からない部分もありそうです。
環境要因による学力差
男性や女性といった生物学的な学力差はないかもしれませんが、国の文化や環境による影響が関係している可能性があります。
学習にどのくらい時間を費やせるか、学習にどれだけお金を払えるか、などは学力にも大きな影響を及ぼします。
学力向上には学習環境が大切!
結局のところ、男子女子によって多少の得意不得意分野はあるかもしれませんが、知能指数には男女間には差はありません。
どのような学習環境にあるかが、学力の差の原因となっていそうです。
学力を向上のためには、日常生活で本や新聞を読んだり、規則正しい生活を促すことが大切です。
そうしている家庭では好成績の傾向がありますが、だからといって、テレビゲームや漫画を批判したくはありません。
テレビゲームにも漫画にも良いところがあるからです。
学習と娯楽のバランスを保てるよう、親はしっかりと見守ってあげることが必要です。
自分の目標を持って、それに向かって頑張ろう、と思う心こそが大切で、その心が学力の向上に繋がっていくと考えます。「子ども任せ」にするのではなく、適度な声掛けで周囲の大人はサポートしてあげましょう。
そして、男女の学力に差がないならば、日本ではもっとリーダーとなる女性が多くなって欲しいものです。
男女差がない社会を目指して
冒頭に東京医科大の話を少ししましたが、「女性は将来結婚や妊娠でやめてしまう」と考える人はまだ多くいますが、現状では結婚や出産をしても働き続ける女性は多くなりました。
また、そのような理由で女性がやりたい仕事を我慢することがあってはならないと考えます。
今の子どもたちが大きくなったときには、「男だから、女だから」という理由を付ける必要がない社会にしてあげたいものです。