慶應義塾中等部は、慶應義塾の一貫教育での共学校として1947年に設立された中学校です。
慶應義塾の教育理念でもある「独立自尊」を尊重し、「自立した個人を育む、自由な」教育を理念としています。
教育の基本として「自由」を重視し、自立した人物として社会で活躍するための教育を行う校風に特徴があります。
今回は慶應義塾中等部の偏差値や倍率、合格のために必要なことについてご紹介します。
目次
慶應義塾中等部の特色
慶應義塾中等部の教育は、「学業」、「校友会活動(クラブ活動)」、「学校行事」の3つが軸となっています。
様々な学問や知識を学ぶことに加え、校友会や学校行事で多くの体験ができることを重要視しています。ただ学業を優先するのではなく、広い視野での教養を身につけることが、慶應義塾中等部の教育の特徴です。
慶應義塾では付属校と呼ばれずに一貫教育校という呼称がありますが、慶應義塾中等部は慶應義塾の一貫教育校となっています。
また、慶應義塾中等部は中等部長の推薦によって慶應義塾が設ける高等学校への進学が可能です。
そのため、受験を目標に勉強だけに専念するという校風ではなく、比較的自由な校風の中で幅広い教養や人間力を大切にする中学校となっています。
学校の沿革
慶應義塾は、福澤諭吉が1858年に蘭学塾を創設したことに始まる、長い歴史があります。
1868年には慶應義塾と命名され、1898年には5年制の大学部、5年制の普通部(中等教育)、6年制の幼稚舎(初等教育)の一貫教育が完成しています。
1947年、戦後の教育基本法によって男女共学が実現するなか、共学の慶應義塾中等部が設立されました。
施設
主な施設は、本館、新館、特別教室棟、体育館、小体育館、新体育館、プール、ポプラ館、F館(Future館)、綱町グラウンド、武道館があります。
このうち新体育館は平成23年の竣工した新しい施設で、アリーナ、中体育室、小体育室、セミナールーム、和室、多目的コート、プールなど、充実した施設を備えています。
進学先
慶應義塾中等部は、中等部長の推薦によって慶應義塾が設ける高等学校へ進学することができます。
これには、男子校の慶應義塾高等学校、慶應義塾志木高等学校、女子校の慶應義塾女子高等学校、共学校の慶應義塾湘南藤沢高等部、慶應義塾ニューヨーク学院高等部(アメリカ)があります。
※慶應義塾湘南藤沢高等部については、横浜初等部を卒業した児童が湘南藤沢中等部へ入学、湘南藤沢中等部を卒業した生徒が湘南藤沢高等部へ入学する形となったため、慶應義塾中等部は2021年度の新入生以降、湘南藤沢高等部へ進学することができなくなります。
学校へのアクセス
- JR山手線・京浜東北線の田町駅から徒歩15分
- 都営三田線・浅草線の三田駅から徒歩15分
- 都営大江戸線の赤羽橋駅から徒歩25分
- 東京メトロ南北線の麻布十番駅から徒歩15分
- バス「慶應正門前」から徒歩約3分
(田87)渋谷←→田町駅
(東98)東京駅南口←→等々力
(田70)新宿駅西口←→田町駅東口
慶應義塾中等部の受験情報
試験日
一次試験:2024年2月3日(土)
二次試験:2024年2月5日(月)
募集人数
男子:約120名
女子:約50名
一次試験
科目 | 試験時間 | 配点 |
国語 | 9:05〜9:50(45分) | 100点 |
社会 | 10:15〜10:40(25分) | 50点 |
理科 | 10:55〜11:20(25分) | 50点 |
算数 | 11:45〜12:30(45分) | 100点 |
二次試験
一次試験を通過した者が対象となり、内容は体育実技、保護者同席の面接となります。
時間は、以下の時間帯で2時間程度指定されて行われます。
女子:8時頃〜11時頃
男子:10時頃〜18時頃
慶應義塾中等部の偏差値と倍率
偏差値
慶應義塾中等部の偏差値は、偏差値で男子が65、女子が70となっています。難関中学の1つです。
倍率
男子 | 女子 | |
志願者 | 851名 | 445名 |
合格者 | 135名 | 58名 |
受験倍率 | 6.3倍 | 7.7倍 |
上記2023年度の志願者数を基準とした倍率です。毎年高い倍率で推移しています。
慶應義塾中等部の入学後の学費
入学金 | 340,000円 |
授業料 | 880,000円 |
教育充実費 | 200,000円 |
諸会費 | 15,000円 |
合計 | 1,435,000円 |
慶應義塾中等部の入試問題と対策
算数
試験時間は45分で、配点は100点満点となります。
大問は7問で、問題数が多いため、時間配分には特に注意する必要があります。部分点はなく、答えのみを解答する問題形式となりますが、試験時間が45分と短いので、油断はできません。
全体的に難易度はそこまで高いわけではありませんが、その分、かなりの高得点勝負になる傾向があります。
また、やさしい問題だけでなく難易度が高い問題も含まれます。その中でも速く正確に解くことが重要となるので、計算力などは重点的に鍛えておかなければなりません。
全体としては基本・標準レベルの出題が多いため、典型的な出題に対する演習を重点的に行うことが大切です。
そのうえで、難易度の高い問題をどう処理するか、試験時間との兼ね合いも含め、考えていかなくてはなりません。
過去問演習をはじめ、時間配分の感覚はしっかりつかんでおきましょう。
頻出範囲は図形、速さや比、数の性質、場合の数などをはじめ、幅広くなっています。図形や点の移動など、手間のかかる問題も多く見られます。
これらを速く正確に解くためにも、似たような傾向の問題を普段から多く解き、実力を鍛えておきましょう。
特に図形や点の移動などは演習量で差がつく分野でもあります。本番で焦らないように、日頃の重点的な演習が重要となります。
国語
算数と同様、試験時間は45分で配点は100点満点となっています。大問は5問で、読解問題、知識問題、漢字などから出題されます。
慶應義塾中等部の国語は、他校と比較してやや変わった問題に特徴があります。
読解問題のほか、一般常識、社会常識などと関連した出題もあり、時事問題を交えた問題も見られます。また、俳句や文学史も出題され、これらは特に知識が重要になります。
全体として、語彙力、文法、文学史など、国語としての知識が重要視されます。読解問題の演習を重ねるだけでなく、このような知識の定着にも意識を向けなくてはなりません。
過去問から傾向を把握したうえで、頻出分野の知識は重点的におさえておきましょう。
また、時間が少ない中で解くことになるので、読解問題を速く解く力ももちろん必要です。
そのうえで、独自の知識問題や一般常識などの問題に取り組めるよう、時間配分にも十分しておきましょう。
社会
試験時間は25分、配点は50点満点です。
大問5~7問程度が出題されていますが、2020年度は大問4問となっていました。全問題数も減少傾向が見られますが、試験時間が25分と短いので、引き続き時間配分には注意しなくてはなりません。
地理、歴史、公民、時事問題などから出題されますが、特に歴史と地理の出題が多い傾向が見られます。また、基本・標準レベルの問題が中心と言えますが、その分高得点での勝負になるでしょう。
日頃からスピードを重視した対策を行い、特に基本的な問題は必ず正答し、落とさないという意識が重要です。
設問形式は、選択肢問題や適語記入問題が中心ですが、記述問題などの出題もあるので、油断はできません。
また、総合問題形式の出題もあるので、各分野の知識を横断的に整理しておくことも大切です。
難易度が高い問題もいくつか出題されているほか、地図への書き込みなど、特徴的な問題も見られます。
こうした問題はある程度慣れておかないと対処が難しいので、過去問演習をはじめ、似た傾向の問題演習はしっかり重ねておきましょう。
基本的な知識の確実な定着、基本問題を速く正確に解く練習を中心としつつ、幅広い出題形式に対応できる力も磨いておく必要があります。
理科
社会と同様、試験時間は25分で配点は50点満点となります。
大問数は4~5問で、4分野からまんべんなく出題されます。こちらも試験時間が短いため、速く正確に解くことが求められます。
全体として基本・標準レベルの問題が中心となりますが、難易度の高い問題が出題されることもあります。
ただ、時間的な余裕は少ないので、難解な問題で時間をかけすぎないようにしましょう。基本問題など、確実に正答するべき問題で正答できるよう、時間をしっかり確保する必要があります。
高得点での勝負になる傾向があるので、速く正確に解き、ケアレスミスはしない、という心構えで臨みましょう。
設問形式は選択肢問題が多いですが、適語記入問題などの出題もあります。また、実験に関する問題のほか、日常の現象など、身の回りの理科について出題される傾向も見られます。
こうした特徴的な出題に対応するためにも、過去問演習などを徹底しておきましょう。
また、ただ問題集を解くだけでなく、図鑑などを見て身の回りの理科に関する現象に興味を持っておくことも重要です。
過去問
慶應義塾中等部合格のために必要なこと
慶應義塾中等部の試験問題は、全体的に短い試験時間の中で速く正確に解く力が求められます。これは4科目で共通する特徴といえます。
正答するべきものは必ず正答し、ケアレスミスは絶対に避けなくてはなりません。
また、慶應義塾中等部ならではの特徴的な問題も多く見られます。これらは過去問演習とともに、似た傾向の問題を数多く解くことで、対策を進めていくことが重要です。
例えば算数の図形、国語の知識や語彙力、社会の地図の書き込み、理科の現象の問題など、特徴のある出題形式をきちんと把握しておきましょう。
とにかく、短い試験時間の中で基本・標準レベルの問題を速く正確に解く能力がカギとなるので、4科目の基礎的な力を普段から磨き、本番に備えておく必要があります。
特に国語と算数は社会と理科より配点が高くなります。その中で、算数の計算力、国語の語彙力など、基本的な力をいかに活用するかがポイントとなります。
頻出分野や傾向に沿った難易度の高い問題の演習も大事ですが、速く正確に解くという基本も忘れず、実力を磨いていきましょう。