勉強は一生懸命やっているし、宿題もきちんとやっている。それなのに、お子さんが勉強内容をなかなか覚えられなかったり、成績が上がらなかったりなど、そういったことはありませんか?
もしかしたら、習慣や考え方を変えるだけで、勉強が今よりさらにできるようになるかもしれません。
せっかく勉強するのなら、少しでも成績を上げたいと思いますよね。
今回は受験専門家として、中学受験生の指導にあたっている筆者が、記憶力を鍛えるコツをご紹介していきます。
目次
長期記憶と短期記憶
人間の記憶には、長期記憶と短期記憶が存在します。短期記憶とは、新しいことを見たり聞いたりした直後の記憶です。
例えば、電話番号を用いる場面がわかりやすいですね。ある場所に電話をかけるとき、今は調べればすぐに検索できるとしても、電話番号を見たり聞いたりして覚えますよね。
しかし、その電話番号にかけた直後、覚えておく必要もないため、忘れます。これが短期記憶です。
覚えようとしていることは、短期記憶のままだとしても、1か月ほどはまるで脳の中を泳いでいるような不安定な状態です。
この短期記憶の状態となっている新しいことを繰り返し使いこんでいくことで、将来忘れずに覚えておける長期記憶となっていきます。
人間は忘れる生き物なのです!
新しいことを覚えたら達成感のようなものを味わえますが、次の日には忘れてしまっている、ということも多いはずです。
なぜなら、人間は忘れる生き物だからです。
新しいことは前述の短期記憶として記憶に残ります。簡単に忘れてしまうか忘れないようになるかは、覚えた後の行動で決まります。
エビングハウスの忘却曲線を知っておくと復習もさらに効率的に!
「新しいことを忘れないようにするために、いつ復習をすればいいか」を知っておくと、復習もさらに効率的になりそうですね。
そうお考えの方に紹介したい実験データがあります。エビングハウスの忘却曲線は聞いたことがあるでしょうか。
これは、新しく覚えた内容を、時間の経過ごとに一体何%忘れてしまうのか、その結果をグラフにあらわしたものです。
- 20分後…42%忘れる
- 1時間後…56%忘れる
- 1日後…66%忘れる
- 1週間後…77%忘れる
- 1か月後…79%忘れる
いかがでしょうか?
20分後には新しく覚えた内容を42%も忘れてしまうのですね。
さらに1日後には新しく覚えた内容のうち66%も忘れてしまうのですから、全体の約3分の2の内容、つまりほとんどの内容を忘れてしまうという計算となります。
そんなに簡単に忘れてしまうのかと考えると、あっけなさを感じてしまうかと思いますが、でも、仕方がありません。人間は忘れる生き物なのです。
ただ、察しの良い方は、ここまでの説明で、どうすれば短期記憶が長期記憶に変わっていくのか、何となく想像がつくのではないでしょうか。
1日に一気に勉強するより、毎日少しずつでも続ける
それでは、1日後に66%もの内容を忘れてしまうことを踏まえ、一体どのように勉強していけばよいのでしょうか。
それは、毎日少しずつでもいいので、習慣的に勉強を続けるということです。
1日にまとめて一気に勉強するより、毎日続けるということが大切です。新しい内容を、忘れる前に復習することにつながります。
これを繰り返すことで、短期記憶を完全に忘れることを防ぎ、徐々に長期記憶として定着します。
記憶力アップのための3つのポイント
記憶力アップのポイントは、以下の3つです。
- 24時間以内に復習する
- インプットとアウトプットをおこなう
- 毎日続けると定着しやすい
24時間以内に復習する
新しい内容を覚えたら、24時間以内に復習すると効果的です。
新しく覚えた内容は、時間が経過すれば経過するほど、忘れてしまいます。
24時間以内に復習をすることで、忘れかけていた新しい内容の記憶を掘り起こしてくれます。
早めの復習を心がけ実践することで、効果的に長期記憶として定着させることが可能です。
インプットとアウトプットをおこなう
見て覚える、聞いて覚えるといったインプットはもちろんですが、それだけでなく、書いたり答えたりするといったアウトプットの時間もしっかりと確保しましょう。
一生懸命勉強したはずなのにテストで点数が上がらないのは、「わかるけどできない」状態である可能性が高いです。
つまり、インプットばかりに時間をとってアウトプットをおろそかにすると、書く練習が不足してしまうため、テストのときに思い出せずに書けないのです。
テストでの動きを練習するつもりで、見たり聞いたりしながら覚えたものは、しっかりと書いて答えられるかどうかを確認すると効果的ですよ。
毎日続けると定着しやすい
できる限り毎日勉強することが、記憶力アップにつながります。
毎日続けることは、勉強以外でも、スポーツ・ダイエット、またはゲームなどの趣味でも同様ですよね。
スポーツは、毎日続けることで技術が磨かれて上手になります。たとえば、ランニングの習慣が続いていたのに、ぱったりとやめてしまったとします。
数日後などに再びランニングを始めたら、思うように体が動かないはずです。毎日ランニングをする習慣があれば、そんなことはないはずですね。
感覚や体の動きが運動によって研ぎ澄まされているからです。ただ、一度研ぎ澄ませたものは、また習慣化することですぐに勘を取り戻すことが可能です。
ダイエットも同じですね。毎日の軽い運動が続いているからダイエットの効果も維持できるわけであり、習慣が途切れたらリバウンドし、せっかくダイエットに成功しても元通りになってしまいます。努力が水の泡となってしまうのですね。
勉強もこれらに通ずる部分があります。
毎日計算練習をおこなっている時期は計算が速く上手になりますが、計算練習をやめて1週間も経過すると、思ったように計算ができないことに驚くお子さんも少なくありません。
計算練習の習慣があったころと比べ、感覚や脳の動きが鈍っているのですね。したがって、毎日勉強を続けることは大切なことであるといえます。
さいごに
エビングハウスの忘却曲線について説明したうえで、記憶力を鍛えるために必要なことは
- 24時間以内に復習する
- インプットだけでなくアウトプットの練習もする
- 毎日続ける
以上の3つを紹介しました。
効率よく繰り返し復習することが大切です。覚えた気でいても、アウトプットをすることは簡単なことではありません。
覚えた知識を使うことを楽しみながら、インプットだけでなくアウトプットをおこなう習慣をつくってみてください。