ピアノ演奏は、習い事の定番の一つですが、脳科学者である澤口俊之先生が、「人生の成功に関係する全ての基礎がピアノで高められる」と述べられた事で、最近、改めて関心を持つ人が増えているようです。
昔から、「ピアノをしている子は、言語や数学の能力が高い」「同じくらいの年齢の子ども達と比べると、落ち着きのある子が多い」などと言われてきましたが、具体的には、ピアノ演奏は、
「どのような能力を伸ばすのに役立つのか?」また、「人格形成において、どのように情操面へ働きかけるのか」
今回は、脳科学からのエビデンスを含めながら、ピアノの演奏がもたらしてくれる恩恵を、一つずつみていくことにしましょう。
以下でご紹介する7つは、ピアノ演奏を学び続ける事で得られる代表的なものです。
目次
実用的な面でのピアノ演奏のメリット
1.集中力が養われる
”右手・左手・足(ペダル)”という、全て異なる動きを一度にこなすことで、脳の様々な分野が活性化されると言われています。
「弾く」と同時に、自分の紡ぎだす音を「聴く」ことも必要になり、高度な集中力が養われます。
澤口先生は、このように全身の感覚を統合することを求められる事は、ピアノ以外には殆どないだろう、と指摘されています。
2.暗記力を鍛える
曲の演奏は、音の一連の連なりなので、発表会などで暗譜して弾く場合に限らず、常に、次の展開を常に意識しながら引き続ける短期の暗記力が求められることになります。
澤口先生によると、この暗記力が、脳のワーキングメモリを鍛えることになるのだそうです。
これらは、問題解決能力、社会性や創造性といった人生の成功の要素とも強い結びつきがあります。
3.リズム感が養われる
自分で演奏することで、”リズム感”(=「音の’長短’パターンを感じ、表現できる能力)が感覚として身に付いていきます。
これは、英語など、日常では普段意識しては聞かない外国語などを聞いた際に、無意識で、強弱パターンを素早く把握できる能力として、語学の面にも大きく貢献する要因となります。
情操面からのピアノ演奏のメリット
4.想像力を伸ばす
一つ一つの曲と向き合う時、その曲が作曲された背景や作曲者の環境など、曲をどう研究し解釈していくかの過程で、楽譜から読み取れる事に自分なりの想像力を働かせることになります。
楽譜の表面からだけではなく、多面的な角度から曲をみて、自分の表現へとつなげなくてはなりません。
想像力を駆使しながら、曲と自己の内面への双方向への探求を普段から自然な事として行うようになり、深いところで物事を捉えられるようになっていきます。
5.協調性が育まれる
音楽は、言葉を超えるコミュニケーションだとよく言われます。
感覚的には、作曲者⇔演奏者、また連弾の際は演奏者同士、発表の場では演奏者と聴き手の普遍的な感動の共有がなされます。
感動や感情の共有は、互いの時代も文化の違いも超越し、他者を受容する態度や、さらなる心の交流へと発展していきます。
6.持続力を培う
どんなピアニストにとっても、練習は楽しいばかりのものでは決してありません。
ちょっとしたスランプや、怠け心が起きても、それを乗り越えて継続した先に得られる、目には見えないものへの視点を培うことができます。
子どもが成長するにつれ、忙しくなってくると、ピアノの優先順位が下がって諦めてしまう場合が非常に多いようですが、人生の付け足しではなく、生涯学習としてとらえ、学びつづけるところにピアノ演奏の意義があると言えるでしょう。
難関校として名高い開成中学・高校(選択科目)では、入学後、全員が創作を含むピアノ演奏を学ぶことになっているそうです。
また、マサチューセッツ工科大学などの有名大学でも、音楽演奏にいつでも触れられる環境が整っています。
7.表現力を高める
演奏技能の習得はもちろんのこと、良い演奏をするためには、普段から、美しいものを美しいと感じ取る’感性’を研ぎすませて行く事が大切です。
表現とは、心の奥深くで感じ取った感動を、今度は、他者との共有をもとめて、内から外にむかうエネルギーへと変化させる事で、ピアノ演奏は、人が生まれながらに持っている自己表現への探求を深めながら、その表現力をより洗練されたものへと高めてくれます。
ピアノと長く付き合っていくために
ピアノは、アップライトでも大きな楽器なので、日本の住宅事情では、場所の確保や防音対策などで、習い事として、気軽に検討することが少し難しい側面ももっています。
しかし、昨今では、ヘッドフォン付きのものや、コンパクトなピアノも増えてきましたので、より自宅にあったものを柔軟に選択できるようになってきています。
特に、プロを目指したいということでなければ、これらでも十分だと言えるでしょう。
”生涯学習として長い目でみて楽しめること”として、ぜひピアノを検討されてみてはいかがでしょうか?