日本における小児喘息の患者数は2000年以降一貫して増加傾向にあります。
文部科学省の学校統計保険調査によると、小学校の低学年ではじつに4%前後の子どもたちが小児喘息だといわれています。
しかし、小児喘息は身体や心肺機能の成長に伴って自然に治ることが期待できる病気でもあります。
そのため、喘息症状の改善のために、水泳を習わせるご家庭も多いようです。
今回は、小児喘息の子どもが水泳をはじめる前に知っておきたい注意点をご紹介したいと思います。
目次
小児喘息に水泳がいいのはなぜ?
小児喘息は、空気の通り道である気管支が急激に収縮することで呼吸困難の発作を繰り返す病気です。
発作が起こると、突然プールでおぼれてしまったような苦しさに襲われます。
まだ体の小さい子どもにとっては、体力を大きく消耗させられるこわい病気です。
しかし、小児喘息患者の70%は身体が大きくなり心肺機能も発達する思春期には自然によくなるといわれています。
体質改善、体力向上が期待できる水泳が小児喘息によいとされるのはそのためです。
他にも、水泳には以下のような効果が期待できます。
小児喘息の子が水泳で得られる効果
- 水中の浮力を得られる状態で運動することで、関節などを痛めることなく筋力を鍛えることができる。
- 呼吸法を学ぶことで、発作が起きた時も上手に息ができるようになる。
- 心肺機能が向上することで、発作の回数を減らせる。
- 体力がつくにともなって免疫力が向上するので、小児喘息の大敵、風邪を引きにくくなる。
- 水泳が得意になることで、自信を持って他の運動にも取り組めるようになる。
小児喘息の子が水泳をはじめる前に気をつけたい5つのこと
水泳は小児喘息の子どもたちにとっても、たくさんの効果がきたいできるスポーツであることは間違いありません。
しかし、呼吸器疾患を抱えている子どもにとっては、どんな場合でも無理は禁物です。以下のことには十分注意しましょう。
1.体調の変化には十分気をつけましょう
呼吸にヒューヒュー、ゼーゼーなどの音がしていないか、背中を丸めて肩で息をしていないかなど、体調の変化には十分気をつけましょう。
小児喘息の発作を繰り返していると、血中の酸素濃度が下がってもあまり苦しいと感じない、酸欠に慣れてしまう子どもたちもいます。
苦しいと症状を訴えていなければ大丈夫と、安易に決めつけないようにしましょう。
季節に変わり目、温度や気圧が大きく変化する時期は喘息の発作が起こりやすいので、特に注意が必要です。
2.風邪を引かないように十分注意しましょう
小児喘息の発作は風邪をきっかけに起こることが多いので、プールの後は十分髪を乾かしてから帰る、冬場などは暖かい恰好を心がけて水泳の前後に体を冷やさないように注意しましょう。
保護者の更衣室への立ち入りができない教室も多いので、自分で髪を上手に乾かせるようご自宅で練習してみるのもいいですね。
3.塩素のプールに入っても体調に変化がないか確認しましょう
塩素は刺激物なので、気道を刺激して喘息の発作を誘発することがあります。
プールのあとにしっかりシャワーを浴びれば大丈夫といわれていますが、プールに入った直後に咳が出る、咳が止まらないような場合はすぐに上がるようにしましょう。
また、小児喘息と一緒にアトピーの症状が出ている子も多いですが、アトピーにとって塩素は大敵です。
濾過制度の高い濾過装置やオゾン殺菌、紫外線殺菌を併用することで、塩素濃度を低く抑えているプールもあるので、ご自宅の周辺でさがしてみるといいでしょう。
4.衛生的なプールかどうか確認しましょう
プールの水、更衣室などの設備は清潔に保たれているかなど、衛生面の確認も事前にしておきましょう。
プールは湿度の高い場所なので、カビなども発生しやすくなります。
カビは小児喘息の発作を誘発することもあるので、プールの周辺や更衣室の壁や天井、カーテンなどは直接確認しましょう。
5.苦しくなった時、症状をお話できるように練習しておきましょう
水泳の最中、急に苦しくなることがあるかもしれません。
お母さんがいないときでも、苦しくなったら必ず周りの大人に自分の症状をお話できるように練習しておきましょう。
吸入器などを子どもに携帯させるかどうかも、小児科の先生と相談して予め決めておくと安心ですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
小児喘息だからといって、なにも安静にしていなければならないわけではありません。
むしろ、小児喘息の子どもたちには、たくさんのことに挑戦して身体も心もどんどん成長させていってほしいなと思います。
水泳がそんなきっかけになるといいですね。