なぜ小学校受験を選ぶのか?私立と公立の違いから考える意味と理由

小学校受験の意味と理由

小学校受験は俗に「お受験」などと揶揄されるように、中学以降の受験とは異なる特殊な受験であると考えられがちです。

インターネット上でも、小学校受験に関するさまざまな質問を目にしますが、質問者側も回答者側もどこか小学校受験というのは一部の家庭だけの奇異な世界の話という印象を抱いているように思えます。

しかし果たして本当にそうなのでしょうか。

今回は小学校受験の「特殊性」に注目しながら、それでも小学校受験をする理由や意味を考えてみたいと思います。

小学校受験の現状と意識の変容

平成27年度の文部科学省の学校基本調査報告書によると、国立・私立小学校が全国に合わせて299校あるのに対して、公立小学校は全国に20,302校もあり、国立・私立小学校が全体に占める割合は約1.45%となっています。

これは同じ義務教育過程での国立・私立中学校が全体に占める割合が約8%であるのと比べるとかなり少ない印象を受けます。

また、平成26年度に文部科学省が実施した「子供の学習費調査」によると、私立小学校へ通う家庭の44.7%は世帯年収が1,200万以上、1,000万以上の家庭ともなると61.2%を占めることが分かっています。

平成26年度の「民間給与実態統計調査」によれば日本国民全体の平均年収は415万円ですので、世帯年収600万以上1,000万未満の家庭でさえも28.6%を占める私立小学校へ通う児童の家庭は特殊な環境にあるといえるのかもしれません。

とはいえ、平成26年度と平成27年度の統計を比較すると、全国で公立小学校が256校減ったのに対して、私立小学校は5校増えています。

また、東京都に限ってみてみると、国立・私立小学校が合わせて59校あるのに対して、公立小学校は1,292校であり、国立・私立小学校が全体に占める割合は約4.37%と全国に比べて大きくなっています。

結論として、年々「お受験」を考える家庭は増加傾向にあり、都道府県別の平均年収でも突出した地域の多い首都圏では特にその傾向が大きいといえそうです。

これらの背景には少子化や晩婚化、幼児教育への意識の高まりなど諸般の事情が影響していると考えられます。

小学校受験をする意味

このように年々、注目を集めている小学校受験ですが、そうはいってもまだまだ特殊な世界のお話と考えているご家庭が多いでしょう。

しかし、それでも小学校受験をお勧めする最大の理由は、学童期において環境の及ぼす影響がとても大きいからです。

学童期は肉体的にも精神的にも親に依存していた幼少期から一歩進み、また精神的にも親から独立しようとしていく思春期との過渡期の段階です。

この学童期において必要な「勉強」とは、学ぶことを楽しいと思える知的好奇心を養うことや社会に向けて興味をもつ目線です。

偏差値に表されるような「勉強」はあとからでも本人の努力次第で磨くことができます。それこそ受験のプロが指導する塾へ通えば効率的に習得できるでしょう。

しかし、この学童期において必要な勉強は偏差値では計れない、社会に通用する人間力の基礎を培うものであって、将来の可能性を左右する重大なものであるうえ、この時期にしか養うことができません。

そして、このような「勉強」を学ぶにあたって、非常に大きな影響を及ぼすのが教師および友人の存在です。

教師および友人の影響

この点に着目して、公立小学校と国立・私立小学校を比較してみましょう。

公立小学校では家庭環境や教育方針が異なるさまざまな環境で育ったこどもたちと文科省の学習指導要綱の下、さまざまな指導理念をもった教師に指導されて1日のほとんどを過ごすことになります。

それに対して、国立や私立小学校ではその学校の校風に合ったこどもたちや教師を選別しているので、公立小学校と比べて、ある程度似たり寄ったりの人間関係の中でこどもは過ごすことになります。

それはすなわち、こんな風に育ってほしいという保護者の描く教育方針をストレートに伝えやすい環境が国立や私立小学校には用意されているといえます。

この差をどのように評価するかが、公立小学校と国立・私立小学校のいずれへ通わせるかという問いの答えになると思います。

まとめ

小学校受験の話をすると、中学以降の受験において楽になるからということを理由に挙げる保護者の方がいますが、前述したように、偏差値を求めるならばそれは学校教育で求めるよりも塾に求めた方が効率的ですし、進学校と呼ばれる小学校でもほとんどの児童が受験のために塾へ通うのが現状です。

したがって、難関校やブランド校だからと安易に受験するのではなく、お子さんの性格に合わせて、その知的好奇心を育ててくれる学校を選択することが大切です。

この他にも、小学校受験をお勧めする理由として、2020年の大学入試改革から、日本の教育そのものが転換期であることや、共働き家庭が増えたことに伴い、私立小学校にもさまざまな放課後カリキュラムが設けられていることなども挙げられます。