年々中学受験をする家庭が増えています。
一昔前は6人に1人と言われていましたが、今では4人に1人が中学受験をすると言われています。
さて来年以降、中学受験を志すご家庭、敢えて回避するご家庭、双方に向け「中学受験という希少で貴重な機会をうまく利用するためには、『中学・高校受験リテラシー』を身につけるが不可欠だ」ということを提唱させていただきます!
目次
現代の受験事情を把握すべし
脅かすつもりはありませんが、親御さんのころの受験事情と現在の状況は大きく変化しています。
もはや親御さんの持つ経験則は時代遅れの無用の長物になっています。
当時の理論を振りかざすのはやめて、とにかく30年前から時計を進めましょう。
それから、中学受験を回避されるご家庭の皆様には、その先に控える高校受験がどのようになっているのかについて触れさせていただきます。
こちらもぜひ予習という意味でお読みいただきたいです。
また「確実に中学受験する」というご家庭でも、高校受験事情を知っておくことは決して無駄にはなりません。
高偏差値私立高校の募集枠は少ない!
2017年の駿台中学部の公開模試の結果、算出された偏差値順の上位校の一覧です。高校募集人数と中学募集人数を付記しました。(女子、男子別の偏差値でご紹介します)
私立高校偏差値一覧表(女子)
偏差値 | 学校名 | 募集人数:<>内は中学入試の募集人数 |
70 | 慶應女子(一般) | 80<50> |
68 | 渋谷幕張 | 295(男女)<260> |
68 | 筑波大附 | 80(男女)<80> |
66 | 早稲田実業 | 40<30> |
65 | 早大本庄学院(一般) | 100(α選抜込) |
64 | 東京学芸大附(一般) | 120(男女) |
64 | 市川(千葉) | 90(男女)<220(男女)> |
63 | 栄東(東・医) | 400(単願・併願・特待すべて含む)<240> |
62 | 青山学院(一般) | 80(男女)<140> |
62 | お茶の水女子大附 | 約60<35> |
62 | 慶應湘南藤沢(帰国) | 30(男女)<一般120> |
61 | 青山学院(一般) | 150(男女)<140> |
61 | お茶の水女子大附 | 約60<約35> |
61 | 明大明治 | 50<70> |
私立高校偏差値一覧表(男子)
偏差値 | 学校名 | 募集人数:<>内は中学入試の募集人数 |
72 | 筑波大駒場 | 約40(帰国含む)<120> |
69 | 開成 | 100<300> |
67 | 渋谷幕張 | 295(内部進学者を含む)(男女)<215> |
66 | 慶應志木(一般) | 230(帰国含む) |
66 | 筑波大附 | 80(男女)<80> |
65 | 早稲田実業 | 50<70> |
65 | 早大本庄学院(一般) | 約145(α推薦込) |
65 | 早大学院(一般) | 260(帰国含む)<120> |
64 | 慶應義塾(一般) | 330(帰国含む)<普180> |
63 | 市川 | 90(男女)<第1回180、第2回40(男女)> |
63 | 東京学芸大附(一般) | 120(男女) |
62 | 栄東(東・医) | 400(単願・併願・特待すべて含む)<240> |
上記は偏差値60より上にランクされた学校のみ掲載しています。
参考リンク:https://www.sundai-net.jp/frog/wp-content/uploads/2022/08/202208_hensachi_ichiranhyo.pdf
もし、お子さんが成績優秀で、レベルの高い高校に進学させたいと思ったときに、首都圏で選択が可能な私立高校はこれらの学校に絞られてしまいます。
いかがでしょうか。少ないとお感じになりましたか?これしか選択肢がないのです。
高校募集をしていない有名校
次に、高校募集をしていない主な中高一貫校を(ほんの一部ですが)列記します。
男子校
- 麻布
- 武蔵
- 早稲田
- 海城
- 暁星
- 芝
- 高輪
- 駒場東邦
- 栄光
- 聖光
- 浅野
女子校
- 桜蔭
- 女子学院
- 雙葉
- 白百合
- 鴎友
- 頌栄
- 吉祥
- 立教女子学院
- 東洋英和
- 大妻
- 共立
- 聖心
- 普連土
- 三輪田
- 恵泉
- 光塩
- 実践
- 山脇
- フェリス
- 横浜雙葉
- 横浜共立
共学
- 渋谷学園渋谷
- 穎明館
30年前と比較してみると、当時は高校募集をしていた学校が多く見られますが、武蔵も早稲田も海城も、今は高校募集はやっておりません。
女子も御三家はすべて中学入試のみです。
また、高校募集をしている上位偏差値校を見ても中学募集の数字の方が大きいところが多く、高校募集人数の方が多いのは、早慶の付属校が目立つくらいです。
公立中学から進学高校入学は厳しい戦いになる
このように上位私立高校はパイ自体が著しく縮小しており、とりわけ進学校(開成、筑駒、学芸附など)を目指すとなると倍率面でもきわめて厳しい戦いを覚悟しなければなりません。
つまり公立中学から私(国)立上位校を目指すことにほとんど旨みはないのです。
こうした状況も手伝って、今や、多くの私立狙いの家庭は中学受験に狙いを絞るようになりました。
そのため、公立中学は多数の公立高校志望者と早慶やMARCH附属を狙う若干名の生徒で構成されているのが現状です。
繰り返しになりますが、都内を中心にした私立高校への進学を希望する子供は既に中学受験で抜けています。
私立志望のご家庭は公立中学に進んだ時点で、大幅に選択肢が減り、僅かなパイの奪い合いを余儀なくされる「レッドオーシャン」での戦いを覚悟しなければならないのです。
※早慶志望者は公立中学に進むことに一定の意義があります。詳しくはまた別の機会にご紹介します。
高校募集を取りやめる学校からみる中学受験事情
さて、ではなぜ高校募集を取り止める学校が増えたのでしょう。
わが国はご存知の通り少子化に歯止めがかからず、子供の人口は年々減少しております。
昨今ニュースなどで話題になっている、経営難の大学が増加している問題も根源は同様なのですが、少子化によって定員割れする学校が急増しているのです。
公立なら学校を統廃合することで何とかなりますが、私立学校は企業と一緒ですから、手をこまねいていては経営破綻を待つだけです。
特に上位校はレベル(偏差値)の維持も同時に行なっていかねばならないため、優秀な生徒を一人でも多く集めたいという事情も持ち合わせています。
誰でもいいから生徒を集めればよいという訳には行かないのです。
優秀な生徒の獲得競争は加熱し低年齢化を促し、競争の舞台は高校入試から中学入試へとシフトしていきました。
私立中学へ進学することは子供にとって何が得なのか?
中学入試を実施することは学校側にとって、いち早く生徒を確保できるというメリットをもたらしました。
一方3年分余計に高い学費を強いられる生徒側にも、当然メリットがなければ受験をしてくれません。
では生徒側のメリットとは何でしょうか?
大学入試を見据えた私立中学の学習の進度はこんなに違う
中高一貫校の最大の利点は高校受験がないということかもしれません。
それは生徒側にとって、中学から受験をして中高一貫校に入るメリットは、大学入試に向けた充実したカリキュラムが受けられることで、それは高校受験がないからこそ可能なのです。
公立中学生は3年生くらいから高校受験に向けた勉強を始めますが、ここで大きな時間のロスをすることになります。
高校受験対策は中学履修範囲の復習のようなもので直接的に大学入試に結びつくものではありません。
その間に私立中高一貫校は何をしているのか?授業はどんどん進み中学1年から高校2年までの5年間で中高6年分の学習範囲を終わらせる学校が殆どです。
同レベルの生徒が揃う授業が受けられる
さらに言えば中学受験を経験した子は、公立中学で習う一定の範囲は既にマスターしていたり、またほぼ同レベルの生徒が揃っていることもあって、理解の遅い生徒に授業の進度を合わせる必要がなく、授業の進みは非常にに速いのです。
そして最後の高校3年生の1年間は大学入試に向けて演習をし、実践的な訓練に使うことが出来るのです。
このように公立中学から公立高校へ進学のパターンと比べると一歩も二歩も先に進んでいるわけです。
また公立は学習指導要領にある程度縛られてしまう傾向がありますが、私立では予備校並みの実践的な授業も問題なくできるので、大学入試という観点からすると私立一貫校の方にかなり分があると言えるでしょう。
中入生と高入生の学力差
高校からも募集をしている進学校は、公立中学にお子さんを通わせているご家庭には、たいへん心強い存在ではないでしょうか。
選択肢も拡がり、何らかの理由で中学受験をしなかった家庭にとっては、行きたかった中学に高校からチャレンジが出来ます。
しかし上述した中高一貫校の学習進度の速さは、高校からも募集をしている一貫校においては難しい問題となります。
高校から入学してくる生徒(「高入生」という)は入学早々、1年近く先に進んでいる同級生の中に放り込まれても、当然付いていけません。
そのため、高入生は中入生(中学から入学した生徒)とは当初は別のクラスにする学校が多いようです。
合流するのは高校2年か、3年か…。
とにかく高入生は入学して1年間は中入生に追いつくために必死で勉強をしなくてはならないと聞きます。
下手をすれば最後まで中入生に追いつけないまま、大学受験で惨敗、浪人ということだって十分ありえるのです。
学校側からしても、同じ学校内でダブルスタンダードを実施することは非効率です。
また、進学実績を稼いでくれるのは中入生がほとんどという学校が多いため、高入生枠を削って中入生に割り当てるという学校も増えてきています。
公立中学で高校入試の勉強をしていた1年間はハンデになることは否めない
こうして生徒側、学校側、双方にとってあまりメリットがないことから、高校募集を取り止める学校が増加してきたのは自然の流れなのでしょう。
もちろん高入生でも、一流大学合格という大きな勲章を勝ち取ってくる優秀者は居ますし、高入生が大学受験で成功すれば、それは学校にとってもアピールにもなりますから、指導で手を抜くようなことは考えられません。
しかし実際問題、高校受験に費やした約1年の時間と労力は高校3年間において大きなハンデとなってしまうことは否めないのです。
子供のためにすべきことは目先の3年ではなく、中高大の10年まで見通すこと
ここまでは中学受験の持つ意味と高校受験との関連を中心に見てきました。
なにか、「公立中学に進学しても良いことなんてない」と感じられた方も多いかと思いますが、決してそんなことはありません。
公立中学から公立高校へ、そして一流大学へという道は確立されていますからご安心ください。
最後に、わが子の進路を目先の3年だけで考えてはいけないということだけは認識しておいてください。
今、小学生のお子さんならば、将来を中高大の10年まで見通すべきです。
お子さんの性格、周辺の地域特性、家庭の経済状態など、多くの要素を考慮した上で、「中学受験をする」「しない」、を決めてください。
「とりあえず近所の公立中でいいや」と安易に決めるのではなく、公立に行くなら、少なくとも3年後の高校入試までは視野に入れておくべきでしょう。