幼児期から小学生にかけて、今「我慢ができない子ども」が増えています。満3歳児の子どもは友達とのトラブルの中で噛みつくことが増え、小学生になってからも、友達を叩く、暴言を吐くなどのトラブルも増えてきているといわれています。
保育士の経験を踏まえて、こうした我慢ができない子どもの心にはどのような背景があるのか、みていきましょう。
目次
しつけの問題
核家庭となり、親が主体でしつけを行う家庭が増えました。
もちろん、ほとんどの家庭では、「人に迷惑をかけないようにする」「子どもが社会に出て困らないようにする」ために、我慢をする訓練をしているように見受けられます。
例えば、電車の中や病院では騒がない、座って待つなど、言い聞かせたり、叱ったりして、我慢をする訓練を重ねている家庭が多いでしょう。
子どもが人に迷惑をかけた時には、親が頭を下げる姿を見せたりする場合もあるかもしれません。
しかし、中には「子ども主体」に考えすぎて、こうした「しつけ」をしない親も少なくありません。
我慢を経験させるのも社会勉強の一つです
昔ながらの祖父母がいる家庭では、親のしつけができていない場合は、子どもだけでなく、親も叱られることもありました。
また近所のおじさんやおばさんに叱られてしつけを知ることもあったのですが、核家族が主流となった現代社会では、家庭のしつけを客観的に判断してくれる存在が少なくなりました。
子どもを大事にするあまりに、「子どもがしたいようにさせている」という親も増えてきているのが現状です。
子どもはまだ社会のルールを知りません。「したいようにさせている」のは子どもの将来にとって良いことなのでしょうか。
我慢をすることを経験させるのも、子どもにとっては大切な社会勉強かもしれません。なぜ今我慢をしなくはならないのか、理由を言葉で話す、しかも繰り返して話す必要が親には求められるでしょう。
我慢ができた時には、ご褒美をあげるのではなく、愛情あふれる誉め言葉で子どもの自己肯定を高めることも必要です。
親と過ごす時間が少ないという問題
共働きで、子どもと一緒に過ごす時間が少なくても、子どもとしっかり触れ合い、話をする時間をとっている場合は、自分を認めてもらえる=親の愛情をしっかりと受け止めているため、我慢することできる子どもに成長します。
限られた時間でも子供と向き合ってください
しかし大人の時間を優先させすぎている親や子どもに向き合えていない場合、そうした空気を敏感に受け取った子どもは、集団生活や友達との間でトラブルを起こす場合が多いようです。
また、親の過剰な期待に応えようとする子どももまた、自分の欲する愛情を十分に受け止められていないため、我慢ができず、トラブルを起こすことも多いようです。
赤ちゃん返りの問題
下に子どもが生まれる場合、今まで親や回りの大人の愛情を一身に受けていた子は、自分の存在に危機を覚えます。
可愛がられていた自分のポジションを、未知の存在の弟や妹に奪われてしまうのです。そうした本能的な退行行動が「赤ちゃん返り」です。
今までできていたことをしなくなったり、わがままを言ったり、泣いたり、怒ったりして自分の存在を精一杯アピールしようとします。
赤ちゃん返りをした時はしっかり甘えさせてあげてください
こうした赤ちゃん返りのときには、無理に叱ったりせず、むしろしっかり抱きしめたり、話を聞いたり、甘やかせてあげることが大事です。
この赤ちゃん返りの時期は、子どもによってさまざまですが、長く継続することはありません。自分が大事にされていることがわかれば、次第に落ち着いてきます。
発達障害の問題
ADHDやアスペルガー、自閉症など、発達障害がある子どもも我慢ができないケースが多いです。発達障害は脳の障害で見た目ではわかりにくく、家庭では気が付かないことが多いかもしれません。
幼稚園、保育園や小学校などの集団生活を送る中で、集団行動ができない、自分が思いついたことをすぐに実行しなくては気が済まない、順番やルールが守れない、好きなことは集中できるが、それ以外は全くしようとしないなど、様々な場面で、我慢できないケースが浮き彫りになることがあります。
こうした発達障害の子どもは自分の感情や気持ちを言葉で上手に伝えられないケースも少なくないため、噛みついたり、叩いたり、暴言を吐いたり、パニックになったりすることも多いのです。(必ずしも発達障害の子すべてが我慢できないということではありません。)
訓練を行う事で学習していくことが出来ます
しかし、我慢できない子どもであっても、支援や療育を受けて、ケースごとに我慢する訓練を行い、繰り返し状況を説明することで、子ども自身が学習、理解し、集団生活が送れるようになる場合も少なくありません。
発達障害を疑った場合には、まず学校や幼稚園、保育所に連絡をとり、各自治体の支援センターなどで発達相談を行います。通院や療育などその子に合った支援を提供してもらう必要があります。
また、こうした発達障害がある子どもは、スケジュールの見通しが立つと我慢できる場合があります。「◯◯したら、片付けよう」「◯時になったら、外に出よう」など子どもがわかりやすい言葉や絵カードを使うことで、子ども自身も我慢していられることもあるのです。
我慢をする体験は集団生活では必要不可欠
社会のルールを守る大人に成長するためには、子どもが我慢することを学ぶことが必要不可欠です。
特に日本社会では、個性より集団活動ができることを美徳とするところもあるといえるため、小さな子どもの頃からの我慢する体験が、その子どもが集団生活を送る上で楽になることもあります。
我慢を強いることは良くありませんが、順番を守る、公共の場所で騒がないなど、お互いに気持ちよく過ごすために「我慢する」というしつけは成長するに従い身につけておくべきことでしょう。