ある日突然、子どもの言葉遣いが悪くなったことでお悩みの親御さんは多いのではないでしょうか。
そんな言葉、家では使っていないのに…どこで覚えてきたのだろう…この言葉遣いは直るのだろうかと心配や不安が尽きないと思います。
子どもの言葉遣いが悪くなることや、乱暴で汚い言葉をふざけて使うようになることは、多くの人が経験していて特別なことではありません。
ここでは、子どもの言葉遣いが悪くなる理由や背景をお伝えしながら、どのように対応したらいいのかその対処法まで、元幼稚園教諭の目線から紹介していきたいと思います。
目次
幼児期の子どもの言葉遣いが悪くなる原因は?
子どもの言葉遣いが悪くなる背景には何があるのでしょうか。子どもの発達面や環境の変化といった背景を詳しく説明していきます。
環境の変化
子どもが乱暴な言葉を使うようになる、言葉遣いが悪くなるといった様子が見え始める時期は、3~4歳の幼稚園や保育園に通い始めた頃が多いようです。
今までは家族や周りの友だちと過ごしていた毎日の環境が、幼稚園や保育園に通うことで大きく変化します。
同じクラスの友だちに年中、年長組のお兄さんお姉さんと話すようになり、会話の中で初めて聞く言葉に興味を示すようになります。
汚い言葉や乱暴な表現を今まで聞いたことがない子どもにとって、新しい言葉は新鮮で、何だか響きも面白く、友だちが使って周りが大盛り上がりしているシーンを見たら、「きっと面白い言葉なんだ」と、意味も分からず使いたくなるものです。
幼稚園や保育園では先生や、友だちからさまざまな言葉や表現を学び、成長していきます。
しかし、正しい言葉遣い、悪い言葉遣いの線引きがまだ難しい3~4歳児の子どもたちは、覚えた表現を何でも全て使ってみることで、周囲の反応を楽しみ、さまざまなシーンで使いながら言葉の意味や使い方を理解していくのです。
言葉やコミュニケーションの発達
幼児期の子どもは言葉を学び、徐々にコミュニケーション能力を身に付けていきます。
まだ2~3歳のころは、会話をしていても言葉が足りずに伝わらなかったことも、語彙数が増えることで表現が豊かになり、自分の感情や意見を相手に伝えることができるようになります。友だちと遊ぶ楽しさを学び、ルールのある遊びやごっこ遊びを楽しむようになると、遊びを通して、子どもたちは今まで知らなかった言葉や表現をどんどん覚えていきます。
特にごっこ遊びは、各家庭で大人が使う表現や、兄弟の言葉、テレビで学んだ言葉が出やすい遊びです。子どもは大人が思っている以上に、親が何気なく使っている表現や、思わずつぶやいてしまった一言を聞いて記憶しています。
テレビで聞く表現も同様に、初めて聞く言葉は興味関心が高く、すぐに覚えて使うようになります。
しかし、子どもが覚えるから…といって家庭内の会話も、テレビの内容も全てに気を遣っていては大変です。
いくら家庭内で気をつけていても子どもはいつどこから新しい言葉を覚えてくるか分かりません。
家庭内で正しい言葉遣いを意識していくことはもちろん大切なことですが、子どもが汚い言葉や乱暴な言葉遣いを覚えてしまったときに、正しく対処できるようにしていきたいですね。
言葉遣いの悪い子どもへの対処法
では、子どもの言葉遣いが悪いとき、どのように対応したらよいのでしょうか。ここでは、おすすめの対処法を3つ紹介していきます。
言葉に過剰に反応しない
「うんち」「おしっこ」など…排泄に関わる言葉を日常のありとあらゆるシーンで使いたがるのが幼児期の子どもの特徴です。
その言葉を聞くことで、友だちが笑ったり盛り上がったり、大人が「やめなさい」「そんなこと言っていたらだめよ」と言う反応が面白くて繰り返し言っている場合があります。
そこで、大人は過剰に反応しないということがひとつの対処法です。
汚い言葉を注意したいという気持ちは一旦ぐっとこらえて…聞こえないフリをしてみてください。繰り返し、繰り返し、知らん顔を続けることで、子どもは何の反応もしてもらえないことがおもしろくないと感じ、次第に汚い言葉遣いをやめるようになります。
この過剰に反応しないという対処法にはいくつか注意点があります。
それは、「バカ」など、言われた相手が傷つくような乱暴な言葉遣いに関しては、きちんと反応し注意すること。
また、外食中や公共の場など、聞いている周りの人たちが不快な思いをする場面でもすぐに注意をするということです。
家庭内で家族の反応を見て楽しんでいるときは、子どもの自由にさせて、気が済むまで覚えた言葉を試す経験をさせて、子どもが飽きて使わなくなるときを待ちましょう。
注意するときは、どうして使ってはいけないのか理由を伝える
子どもの言葉遣いが悪いとき、みなさんはどのように声掛けしていますか?「そんな言葉使っちゃだめ」「やめなさい」など、子どもの言葉遣いをその場でやめるように注意するだけになっていないでしょうか。
子どもの乱暴な言葉遣いは、響きが面白い、周りが使っているからという理由で使っていることがあるため、ただ単純にやめるように注意されても聞く耳を持ちません。そこで、なぜその言葉遣いが悪いのか理由をきちんと伝えていくことが大切です。
「そんなこといわれたら、ママは悲しい気持ちになる。バカって言葉はね、言われた人が嫌な気持ちになる言葉だよ。だから大切な家族やお友だちには使ってはいけないよ」など、どうしてその言葉を使ってはいけないのか、言われた相手はどのように感じるかなどを明確に伝えて子どもが「乱暴な言葉は使ってはいけないもの」ときちんと認識できるようにしましょう。
今までは、自分中心で好きなことを好きなだけ話していた状況から、相手の気持ちを考えて話すことができるようになることも幼児期の大切な成長過程のひとつです。
子どものコミュニケーション能力を向上させ、友だちとの関わりがより楽しくなるように、丁寧に繰り返し子どもに言葉の大切さを伝えていきましょう。
正しい表現を伝える
子どもに言葉の意味を伝えていく中で、どうしてその言葉を使ったのか、理由を聞き、正しい表現を伝えていくことも大切です。
勤めていた幼稚園での出来事ですが、遊びの中で「バカ」「やめろ」など乱暴な言葉を連発する女の子がいました。話を聞くと「○○くんがお話し聞いてくれないから…」という理由でした。
その子は全く話を聞いてくれない友だちを振り向かせたくて、乱暴な言葉を使っているようでした。そこで「○○くんちょっとお話聞いて!って、もう一回大きな声で言ってみよう。もしかしたら、○○ちゃんの声、聞こえてなかったのかもしれないよ」と声を掛けると、もう一度その友達の元に行き、落ち着いて話ができたようでした。
子どもが乱暴な言葉を使う理由は何かを確認し、変わりにどのような表現をすればよいか、繰り返し伝えていくことも正しい言葉遣いを身につけていくために必要な対処法です。
最後に
子どもがある日突然、言葉遣いが悪くなることに、ショックを受けて悩んでいる親御さんも多いと思います。
幼児期は言葉の発達が著しく、新しい言葉を覚え、さまざまなシーンで使ってみることは成長過程で大切なことです。
そこで、子どもの言葉遣いが悪くなったときにどのように対応したら良いのか、正しい対処法を身に付けておくことが必要です。
言葉遣いが直るまでには時間がかかる可能性がありますが、焦らず繰り返し丁寧な対応を心掛けましょう。