子どもが小さいうちは、「まだご飯食べない!」「着替えない!」「まだ遊ぶ!」「帰らない!」…と、子どもの気持ちの切り替えに時間がかかり、大人の思うように予定が進まないことばかりですよね。
子どもは、一歩進んでは立ち止まり、更に戻って…やっと一歩進むことを繰り返し、それを積み重ねて、成長していきます。
しかし、まだまだ大人の援助や見守りも必要な為、付き合う親御さんには、大変な気力と労力が必要となります。
ここでは、保育士の経験からそのような日々を、お子さんも親御さんも、心穏やかに過ごせる手がかりとなるような、子どもの気持ちの切り替え方法についてお話ししていきます。
目次
なぜ、気持ちが切り替えられないの?
子どものわがままを聞いていると、なんでそんなにこだわっているの?泣いているの?と、思うことはありませんか。
特に食事や着替えなどの日常的なことだと、尚の事、不思議ですよね。
子どもは、大人と比べて、生きてきた時間の長さがまだ短いです。それ故に、大人とは時間感覚が異なります。
加えて、子どもは、時計の読み方を知らない、または、習慣が備わっていないので、大人のように時間を気にして行動することがありません。
また、子どもにとっては「いま、現在」が全てであり、“またの機会”という認識はありません。
その為に、気持ちの切り替えが難しいのです。
子どもとの生活の工夫
上記のことを踏まえ、生活の中で出来る3つの工夫をご紹介していきます。
見通しの持てる生活
1日の生活の流れ、パターンを決め、基本的にその流れやパターン通りに、毎日繰り返して過ごします。
繰り返す中で、子ども自身が次の行動を予測できるようになっていき、例えば「今遊びをやめても、食後に遊ぶ時間があったな」という見通しを持てることで、スムーズな気持ちの切り替えにつながります。
視覚からのお手伝い
子どもは、目に入る刺激の影響を大きく受けます。どんなに大人が声をかけても、子どもに届いていない感じることも、多いと思います。
ですから、視覚から訴えかけることも有効です。
例えば、ホワイトボードにタスク表を作り、上から順に、着替え・食事・歯磨き…など、生活の流れに沿った絵を貼ります。
出来た項目には、○やニコちゃんマークなどを描いた磁石を貼ります。そうすることで、「出来た」達成感を味わえるのと同時に、次にするべき活動を、子どもが自分で確認することができます。
イレギュラーな用事での配慮
生活のパターンを決め、そのように過ごしていても「今日は買い物に行かなきゃ」「知人が訪ねてくる」など、イレギュラーな用事は必ず発生します。
そういった時の子どもへの対応として、『事前に説明しておく』ことで、子どもが心構えを持つことができます。簡単な絵を描きながらや、写真を見せながら説明することで、子どもが理解をしやすくなりますよ。
ここでのポイントは、説明の前に、親御さんがお子さんの姿を予想し、それを踏まえた上で、説明と合わせて、対応策をお子さんと話し合っておくことです。
例えば“買い物に行ったら、必ず近くの公園で遊びたがるし、帰りたがらなかったな…”とお子さんの姿を想像します。
お子さんの年齢が小さければ、滑り台を3回滑ったら終わりにしようなどの、具体的な提案をし、子どもが納得すればそれを“約束”とします。
お子さんの年齢が大きい場合は、子どもがどのくらい遊んだら満足して帰られるのか、なぜいつまでも遊んでいるのはダメなのか、などについて、子ども自身にも考えてもらいながら話し合います。
そして、子どもと一緒に“約束事”として決めます。
この時にお子さんから、話し合いや約束をする理由を尋ねられたら、“子どもが出来ていない”から、約束するのではなく、“自分が(親御さんが)、困っている”から、とお話ししてくださいね。そうすることで、お子さんも前向きに取り組むことができますよ。
そして、子どもも大人も、時間にも心にも余裕がある時に、話し合っておくことが大切です。
ここまでしても、ごねる時はごねる!子供の状態別から試してほしい方法
親御さんからは、ため息が聞こえてきそうですが、ここからが、子どもの本領発揮でしょうか。
そんなお子さんへの対応と、親御さんの心構えを、子どもの状態別にお話ししていきます。
レベル1 :子どもが大人の話しに、耳を傾ける余裕がまだある段階
子どもと視線の高さを合わせ、手や肩に優しく触れ、子どもの話しを聞来ましょう。この時に、否定はせず、子どもの気持ちに寄り添い、共感するようにしてください。
子どもが、自分の思いを受け止めてもらえた安心感を得たり、話しをしているうちに、気持ちが整理できて冷静になったりすることで、気持ちが切り替わることがあります。
レベル2:子どもが親御さんには反発するものの、その他の周りの様子は、気にかけている段階
より楽しそうなことを提案したり、魅力的なものを見せたりして、子どもの気をそらせる。もしくは、ご褒美を設定してみましょう。
「癖になるんじゃないか」と心配する親御さんも多いですが、子どもが成長し、気持ちの切り替えができるようになるにつれて、このようなやり取り自体がなくなるので、大丈夫です。
可能であれば、お子さんと親御さんが、落ち着けるような場所に移動する、もしくは子どもに対応する人間が変わることも有効です。
レベル3:子どもが泣き暴れて、混乱してしまってる段階
年齢が小さかったり、家庭内など我を出しやすい環境だったりすると、突然この状態になってしまうことも多いと思います。
このような時は、子ども自身も何にこだわっていたのか、などのきっかけがわからなくなってしまっていることもあるので、子どもが落ち着くまで見守りましょう。
お子さんから「抱っこして」「手を握って」などの要求があれば、その通りにしてあげてください。
そして、子どもが落ち着いて、話し出したら、それに耳を傾けるようにします。
子どもがどの状態にあったとしても、自分や他の誰かを傷つけたり、物を壊したりするようなことがなければ、概ねのことは、大人が許容して大丈夫なのです。
お子さんにとって、自分を許し受け入れてもらえた経験は、いつかお子さん自身の心のゆとりや広さにつながり、周りへの優しさになっていきます。
最後に
子どもが、気持ちの切り替えを出来ない状況や場面は、様々だと思います。
どんなに大人が万全を尽くし、寄り添っても、子どもが眠たい、お腹すいた、体調不良など、コンディションが悪いと、心のバランスも取るのが難しくなります。
そもそも、大人の思いもよらないことに、こだわっている時もあります。
ですから、親御さんが「どうにかしなきゃ」と思い詰める必要はなく、場合によっては、大人の諦めも肝心です。
また、お子さんの大変な状態に、親御さんが辛さや苦しさを感じていらっしゃる時には、一人で抱え込まずに、保育園や支援センター、保健所などに相談してみてくださいね。