幼稚園や保育園に入園してしばらく経つと気になってくるのが我が子の運動神経。
特に小学校受験を考えている家庭では運動能力が一朝一夕で向上するものでないために焦りを抱えることもあるかもしれません。
とはいえ、勉強などとは異なり、子どもに運動を教えるのは難しくてどう指導していいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はご家庭でできる、子どもが運動音痴にならないために、運動神経をよくする子育ての方法についてご紹介していきます。
目次
子どもの運動神経は遺伝では決まらない
子どもの運動神経について話をすると「私も運動神経が悪いから」と親の運動神経、すなわち遺伝を原因とお答えになる親御さんをよく見かけます。
しかし、スポーツ科学の見地からは、運動神経の良し悪しを大きく左右するのは環境と考えられています。
運動神経は遺伝ではなく環境で決まる
もし運動神経が良くないと自覚されている親御さんのもとで育ったお子さんが運動を不得意とするのであれば、それは親自身が運動を苦手と感じてしまっていませんか?
苦手意識から、日々の生活の中でお子さんに運動をする環境を十分に与えられていないことが原因であることがほとんどです。
実際、運動が得意なお子さんの親御さんにお話を伺うと、入園前までの時期にしていた遊びは外遊びが中心だったのに対して、運動が苦手なお子さんの入園前の生活はインドアやショッピングモール内での遊びが中心だったというようなお話をいくつも聞いたことがあります。
運動神経の発達する時期をお見逃しなく
子どもの運動神経が大きく向上する時期は2回あります。
それは4歳から8歳までのプレ・ゴールデンエイジと呼ばれる時期と9歳から12歳までのゴールデンエイジと呼ばれる時期です。
そもそも運動神経とはその言葉どおり神経系の発達によるものです。
子どもの発達・発育についての研究結果の一つに、アメリカの医学・人類学者であるリチャード・スキャモン氏による「スキャモンの発育・発達曲線」というものがあります。
これは人体各器官の発育過程について表したものなのですが、これによると神経系統は5歳までに80%まで成長し、12歳までに100%近く成長します。
そこで運動についても12歳頃までに育む必要があると考えられています。
そして、神経の発達・発育には脳の働きが大きく関係していて、さまざまな「動き」という経験を通して、神経回路が多様化し、運動能力の向上と結びつくようになっています。
運動神経発達のために幼児期に必ずしておきたい運動とは
それでは幼児期にしておきたい運動とは一体どのようなものでしょうか。
これに関して、学研から出版されている書籍「ママだからできる 運動神経がどんどんよくなる子育て」について興味深い内容が掲載されています。
それは、「投げる」「道具を使う」「頭を逆さにする」といった動きは6歳までに経験していないと苦手な動きになるといったものです。
ボールは「女の子投げ」しかできないとか、他のスポーツは得意なのだけれども球技は苦手だとか、逆立ちや逆上がりができないといった方は、幼少期にあまりこの3つの動きをされてこなかったということはありませんか。
どんな運動をすれば運動神経は良くなるのか?
運動を得意にさせたいと考えた場合、まず思い浮かぶのが運動系の習い事をさせることかもしれません。
しかし、子どもの運動神経の発育のためには、最低1日1時間以上させることが理想とされており、これを習い事で実現させることはなかなか現実的とはいえません。
また、子どもの運動神経の発達のために必要なのはさまざまな動きを経験することで、偏った動きばかりをさせても十分とはいえません。
お勧めしたいのが日常的な外遊びと歩くこと
親世代の方にとっては拍子抜けするような方法かもしれませんが、現代の子どもたちは運動不足であることが指摘され、近年、子どもの骨折は30年ほど前と比べ2倍近くも増えたことが報告されています。
その背景には外遊びの減少と交通機関の発達が考えられています。
子どもは外で走り回る中で、さまざまな動きを経験します。
特に公園は最高の教育の現場になります。
さまざまな遊びや遊具などを通して、運動神経をどんどん向上させることができます。
子どもと一緒に本気で公園遊びをしてみると、ここの筋肉を使わないとこの動きはできないのだなとか、この動きは日常ではしない動きだななんてことを思うはずです。
それこそまさにこどもにとって必要な運動神経を発達させるための経験であり、それを親御さんが身を持って体感することで「ここを意識してやってみてごらん」などと運動神経向上のために必要かつ適切なアドバイスもできるはずです。
また、体幹を鍛えるためには、歩くことや階段の上り下りをすることなどでも身につけることができます。
運動することが減った現代社会の子供たち
現代は車社会となり、さまざまな場所にエスカレーターやエレベーターが完備され、それを利用することが当たり前になってきました。
意識的に歩くことや上り下りをしなければ、お子さんにはその経験が足りないものとなっているかもしれません。
まずは運動不足の解消。
それが子どもの運動神経の向上に役立つ最初の一歩といえるでしょう。
さて、ここからは鍛えたい運動能力に必要な運動方法を具体的にみていきましょう。
足の遅さは遺伝しない!かけっこが得意な子どもにするには?
運動会の目玉競技といえば、言わずもがなリレーや50メートル走。
小学校時代はかけっこが一番な子が人気者だったりしますよね。
最近では運動会の直前に体育の家庭教師を雇って猛特訓をされる方も多いようですが、走るコツを身につけることができても、運動神経そのものは一朝一夕で身につくものではありません。
「走る」動きを上達させるための方法は鬼ごっこ
鬼ごっこでは追いかける、逃げる、かわすといった動きを行うことになりますが、バランスを取りながら全力で走りこむ中で、さまざまな動きを体感することができ、持久力向上にもつながります。
また、お子さんとかけっこの練習をしても、ほんの少しで飽きてしまって継続させることができないことがほとんどかと思いますが、鬼ごっこなら、親がクタクタになって根を上げるまで続けたがる子がほとんどです。
芝生や比較的柔らかい土があるところなら、転ぶことにトラウマを持たずに全力疾走することができるようになるのでそのような場所を選んで行うといいでしょう。
また、数人のお友達と一緒に遊ぶことができ、ボールを投げることができるのであれば、ドッチボールもお勧めです。
走る、かわす、追いかけるという動作を飽きることなく続けることができます。
幼児期にできる早く走るための基本動作
早く走るためには足裏の使い方、姿勢、腕の振りが要になります。
そこで、幼児期においては、足全体をしっかり地面につける動きであるグーパージャンプやつま先で地面を押す動きを身につけることができるケンケンパーなどを意識して行いましょう。
特にケンケンパーは縄跳びの基礎練習にもなるので上手にできるまで繰り返しやってみましょう。
なかなか上達しないというお子さんは、まずその場で片足ずつケンケンを10回できるようにすることを目標とし、それができるようになったら、一緒に手をつないでケンケンパーをしてみましょう。
こうすることで、ケンケンパーのリズムを覚えることができます。芝生や土の上ですると、転んでも怪我につながることが少なく、足への負担も小さく済みます。
なお、これはまたスキップでも同じことがいえます。
球技が得意な子にするには
幼児期の子どもにとっては特定の動作を行うよりも、走ることを通して全身運動を行ったり、公園にあるさまざまな遊具を使って多種多様な動きを行う方が運動神経全般の向上には効果的です。
また、時には道具を使った動きを取り入れることも将来さまざまなスポーツを楽しむために大切です。
ボールを遊びを運動に取り入れる
ボールを使って、転がす、投げる、受け止める、蹴る、ボールをつくなどの練習をしてみましょう。
ただその場で練習していることに飽きてしまったらお勧めしたいのがキックベースです。
親御さんの負担は大きいですが、遊び方を工夫すれば3人でも十分に楽しめます。
まだ転がすしかできないお子さんなら、お子さんが投手となりお子さんの転がしたボールを親御さんがちょこんと蹴ってあげるだけでもお子さんにとっては楽しい遊びです。
投げることができるようになったお子さんなら、捕手となってもらい、投手に投球する役割でもいいかもしれません。
このように投手、捕手、打者という役割分担とルールを学びつつ、ボールを使った動作だけでなく精一杯走ることもできるのがキックベースの魅力です。
逆立ちや逆上がりができる子にしたい
逆立ちや逆上がりなど、頭を逆さにする動きは年齢とともに習得するのが難しくなってきます。
日常動作の中であまり自然とする動きではなく経験が少ないこと、頭を逆さにすることへの恐怖心などがその理由です。
そこで、三半規管が発達しはじめる3歳頃から、頭を逆さにする動きを遊びの中に取り入れてみましょう。
家庭でも簡単にできてお勧めしたいのがでんぐり返しです。
布団やベッドを利用するのでも十分ですが、最近では、ネット通販やIKEAなどでもお安くジムマットを手にいれることができます。
でんぐり返しが上手にできるようになると、鉄棒も上手にできるようになります。
またこのほかにも幼児期にできる頭を逆さにする動きとして、足を支えてあげての逆立ちや三点倒立をさせてあげるのもお勧めです。
運動神経は遺伝でなく、どれだけ「遊ぶ」環境を与えたか
いかがでしたでしょうか?
子どもの運動神経は遺伝で決まるわけではありません。
次のお休みにはぜひ、お子様と一緒に外遊びしてみてはいかがでしょうか?