中学受験を考えているご家庭の中で、そろばんや公文は中学受験に役立つのか、有利になるのか、気になる親御さんも多いのではないでしょうか。
そろばん・公文は計算力や集中力のアップに役立ち、中学受験で活かすことも可能です。
一方、そろばん・公文と受験勉強は何かと違いが多く、受験勉強は受験勉強としてしっかり行い、傾向に沿った実力を磨かなくてはなりません。
この記事では、そろばん・公文のメリットや注意点、活用法などを、中学受験の視点からご紹介していきます。
目次
そろばんや公文は中学受験に役立つ?
そろばん・公文と受験勉強は大きく異なります
そろばんや公文の算数は、計算力や集中力アップには大きなメリットがあります。
一方、パターン的な学習が多いため、思考力などを必要とする中学受験勉強とは大きく異なります。
例えばそろばんは暗算力や計算スピードをアップすることができますが、中学受験の算数は他にも処理能力や思考力が要求されます。
また、公文は問題演習を徹底して繰り返しますが、暗記に近い形となるため、中学受験の勉強とはやはり内容が違います。
中学受験を乗り切るには、その傾向にあった勉強をしなければならず、そろばん・公文をやっていれば絶対に有利とまでは言えません。
計算力・集中力を磨くことはできる!
一方、計算力・集中力も受験勉強の基本となります。
その基礎を鍛えるという意味では、そろばん・公文も大きなメリットがあります。
特に複雑な計算処理が必要な問題であれば、計算が早いに越したことはありません。
そろばんや公文の算数で暗算を得意にしておけば、尚更計算は早くなるでしょう。
また、そろばんや公文を通じて集中力を鍛えておけば、全科目で役に立てることも可能です。
メリットはあるが、絶対に有利とまでは言えない理由
このように、そろばん・公文にメリットがあるのは確かです。
ただし、そろばん・公文の勉強と受験勉強は違いが多く、当然ながら受験勉強は受験勉強としてしっかり行う必要があります。
その受験勉強の中で計算力・集中力を鍛えることも可能であり、そろばん・公文経験者が絶対に有利とまでは言えないのです。
確かにそろばん・公文に通っていた子どもは計算の正確さやスピードに強みがありますが、受験勉強は受験勉強として他の子ども達と同じように勉強し、思考力が必要な問題をはじめ、受験特有の傾向に慣れていく必要があります。
また、得意不得意は子どもによって異なるので、計算力や集中力があっても思考力が必要な問題が苦手な子もいます。
もちろん、思考力は高くても細かい計算力や集中力に弱い子もいます。
まさに得意不得意は人それぞれであり、計算力・集中力があるから絶対に有利とは言えません。
あくまで受験勉強とそろばん・公文は別物として考えたうえで、活用するかどうか検討すべきでしょう。
中学受験の視点からみる!そろばん・公文のメリットと注意点
ここまでの話を大前提として、そろばん・公文のメリットと注意点を、中学受験の視点から整理していきます。
計算力や、数字のイメージ力が伸びる
繰り返しますが、そろばんや公文の算数は、とにかく計算力の向上に役立ちます。
そろばんは暗算力を鍛えることができ、計算のスピードが速くなります。
公文の算数は反復学習に強みがあり、数多くの問題演習を通じて計算力を鍛えることが可能です。
また、そろばんや公文の算数を経験しておくと、数字そのものに抵抗がなくなります。
算数が苦手な子どもは数字自体に苦手意識があり、頭の中で数字や式をイメージできない場合が多いです。
しかし、そろばん・公文の経験者は数字のイメージが得意なため、受験算数の理解も早い傾向があります。
中学受験で使う全ての計算に対応できるわけではない
一方、そろばんや公文の算数だけでは、中学受験の計算全てに対応はできません。
例えばそろばんの足し算・引き算・かけ算・わり算は、基本的に分数には対応していません。
分数をわり算として変換すればできないことはないですが、分数のままで計算するわけではなく、受験で使う計算方法とも異なります。
また、公文の算数は分数も含めて学習できますが、中学受験で使う複雑な計算処理とはやや異なります。
計算の基本を学ぶという点では効果的ですが、複雑な計算に必要な処理能力は、やはり受験勉強として別個に学ぶ必要があるでしょう。
文章題や図形には対応できない
公文の算数は計算に特化しており、文章題や図形には基本的に対応していません。
もちろん、計算力・暗算力を鍛えるそろばんも、文章題や図形とはまた異なります。
一方、中学受験では図形分野が頻出のほか、あらゆる分野で文章題も登場します。
そのため、そろばんや公文の算数はあくまで基礎的な計算力向上のためと考え、文章題や図形は受験勉強として別に学習し、実力を磨かなければなりません。
こうした受験算数とそろばん・公文の算数の違いはしっかり確認する必要があります。
学習習慣が身につくのは大きな強み
そろばんや公文の経験者は、「集中して何かを学ぶ」という経験に強みがあります。
すでに学習習慣がある程度備わっており、勉強に対してそこまで抵抗感がありません。
そのため、受験勉強のスタートをスムーズに切りやすく、勉強を軌道に乗せるのが早い傾向があります。
もちろん学習習慣があまりない子どもでも、時間をかけて勉強を軌道に乗せることは可能ですが、スタート時点では学習習慣があるかないかで大きく変わり、この点、そろばんや公文の経験者が有利と言えるでしょう。
もちろんそろばん・公文経験者も、最初からハードスケジュールで勉強するのは好ましくありませんが、集中して勉強する習慣があるのは大きな強みです。
そろばん・公文は思考力が落ちるという弊害はある?
そろばんや公文の算数に対して、「暗記ばかりになると思考力が落ちる」という意見もあるようです。
しかし、これは意見の一つであり、絶対にそうだと言える話ではありません。
確かにそろばんや公文は暗算力・計算力を鍛えるもので、どちらかと言えば暗記に近いですが、暗記力の向上と思考力の低下に因果関係が絶対あるとは言えないでしょう。
暗算力もあって思考力もある子どもはたくさんいます。
そもそも思考力は思考力として受験勉強の中で鍛えていけば良いのです。
繰り返しますが、そろばん・公文は暗算力・計算力の向上というメリットが必ずあります。
そして中学受験は他にもいろいろ学習しなければなりませんが、暗算力・計算力を使うのもまた事実です。
そろばん・公文経験者が絶対に有利とまでは言えませんが、経験して不利になることもありません。
ましてや「暗記ばかりになると思考力が落ちる」という話も、一般論として語れることではなく、「暗記の弊害」と断定することもできないと思われます。
「文章題が苦手になる」は本当?
そろばんや公文の算数では文章題が扱われず、暗記が多いため、「そろばんや公文をやりすぎると文章題が苦手になる」という見方もあるようです。
しかし、これも絶対にそうだと言える話ではなく、因果関係があると断定することはできません。
暗記と文章題は単純に勉強方法が異なるという話であり、文章題は文章題として受験勉強で鍛えれば良いのです。
たとえ勉強=暗記という感覚の子どもがいたとしても、受験勉強で文章題をきちんと学んで慣れを作れば、徐々に対応できるようになります。
そこは他の子どもと同じですし、そろばん・公文をやったから損になるという話ではありません。
むしろ、文章題は国語力も必要ですので、公文で国語も学習すれば読解力向上に役立ちます。
また、文章題といえども、算数である以上計算力は必要ですので、やはりそろばんや公文を活用するメリットがあることに変わりはありません。
もちろん思考力は思考力として受験勉強で鍛える
もちろん、中学受験は柔軟な思考力が求められるので、暗記やパターン的な学習だけで対応するのは困難です。
だからこそ、そろばん・公文の勉強とはまた別の話として、中学受験の傾向に沿った勉強を行い、思考力等を鍛えなくてはなりません。
ただ、そろばん・公文の経験が何か不利になることはなく、暗記は暗記、計算は計算、文章題は文章題、そして思考力は思考力といった形で捉えることが大事です。
そろばん・公文の活用法と気をつけるべきポイント
ここまでの話も踏まえ、そろばん・公文の活用法と注意点について、中学受験の視点からポイントを整理しておきます。
受験勉強を始める前に通わせる
そろばん・公文に通うなら、受験勉強を開始する前にした方が良いでしょう。
小学校低学年でそろばん・公文を経験したのち、高学年になっていったん辞め、受験勉強に切り替える、といったケースが多いです。
もちろんお子さんの希望によりますが、学習塾と並行してそろばん・公文に通うと、やはり子どもの負担は大きくなります。
特に公文の場合、受験勉強と公文の勉強とで違いがたくさんあるため、両方続けると勉強方法がごっちゃになり、子どもが混乱する可能性があります。
個人差はありますが、なるべく受験勉強の効率が下がらない方向で検討すべきでしょう。
一方、そろばんは公文とは異なるため、習い事として続けてもそこまで大きな負担にならない場合もあります。
ただ、受験勉強と習い事の並行は、一般的にハードスケジュールになりがちです。
お子さんの希望に合わせつつ、なるべく負担の少ない方向で調整した方が良いでしょう。
特に受験直前期は受験に集中した方が良いですし、学習状況も見て適宜調整する必要があります。
公文は中学内容に入ってしまう場合がある
公文の算数を続けていると、途中で方程式に入る場合があります。
中学校の予習という意味では効果的ですが、中学受験で方程式は使わないため、注意しなくてはなりません。
受験で使う特殊算の知識と方程式の知識がごっちゃになってしまうと、受験勉強の効率は下がってしまいます。
そのため、方程式に入る前に一度公文をやめ、まずは受験勉強に集中するという選択肢も必要になるでしょう。
もちろんお子さんの希望によっては公文と受験勉強を並行する場合もあるかと思いますが、受験勉強をするならその範囲に全力で集中すべきですので、公文と受験勉強の区分けには十分注意してください。
そろばんと公文の違いもしっかり把握
当然ですが、そろばんと公文の算数にも違いがあるため、それぞれの強みを理解して活用を検討しなくてはなりません。
そろばんは暗算力や計算スピードに強みがあり、頭の中で計算をイメージすることに焦点が置かれます。
一方、公文の算数は反復学習として問題演習を繰り返すため、より暗記に近い側面があります。
また、複雑な計算を作業としてコツコツ進めるのは、中学受験とも似ています。
ただ、そろばんも公文も小学校低学年で行う場合が多く、どちらをやらせるかは最終的に子どもの希望・好みによるでしょう。
両方通う子どももいるでしょうし、数字が好きな子どもならどちらも熱中しやすいと言えます。
どちらが受験に有利かを一概に言うのは難しいですが、計算を作業としてコツコツ行うという意味では公文の方が受験勉強に近いです。
ただ、そろばんも暗算力・計算力に加えて集中力を鍛えることができるので、中学受験に役立てることが可能です。
どちらを選択するかは子どもの好みや性格も踏まえて判断しましょう。
そろばん・公文を通じて勉強習慣が身につくことで受験勉強がスムーズに始まります!
今回は、そろばんや公文は中学受験で有利になるのか、メリットや活用法、注意点などをご紹介しました。
そろばん・公文は計算力や集中力の向上、学習習慣の定着といったメリットがありますが、中学受験勉強とは大きく異なります。
例えば中学受験では文章題や図形が多く登場しますが、こうした傾向の問題はそろばん・公文では対応できません。
また、思考力が要求される問題も多く、そろばん・公文で学習する内容とは違いがあります。
そのため、そろばん・公文経験者が絶対に有利になるとまでは言えません。
ただ、受験勉強で計算力や集中力が必要になるのも事実であり、そろばん・公文を経験して損になることもありません。
また、そろばん・公文を通じて勉強する習慣を身につけておけば、受験勉強のスタートがスムーズになりやすいです。
このように、そろばん・公文と受験勉強は異なるということをご理解いただいたうえで、お子さんの好みや性格に合わせ、そろばん・公文の活用を検討してみると良いでしょう。
小学校低学年など、本格的な受験勉強を始める前に一度そろばんや公文を経験させるなど、それぞれの状況に応じて調整してみてください。