東京都立小石川中等教育学校(以下:小石川中学校)は、東京都文京区にある都立の中高一貫校です。
東京都立小石川高等学校が前身となりますが、現在では中等教育学校として、高校からの募集を行わない完全中高一貫校となっています。
今回は小石川中学校の学校の特色や受検情報、そして合格のためにすべき試験対策についてご紹介します。
目次
小石川中学校の特色
小石川中学校では、「自ら志を立て、自分が進む道を自ら切り拓き、新しい文化を創り出す」ことができる人材を育成し、「立志」「開拓」「創作」を教育目標として掲げています。
全ての教科・科目を学ぶことで教養を身につける「小石川教養主義」のほか、「理数教育(SSH)」「国際理解教育」を教育活動の柱としており、理数系カリキュラムやグローバルな教育にも強みがあります。
教育機関としての認定
平成18年度より文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けており、特に理数教育に力を入れていることが特徴的です。大学や研究施設などとも連携し、研究開発が進められています。
また、東京都から「東京グローバル10」の指定も受けており、グローバルな人材の育成を目的とした国際理解教育も行われています。
英語の各授業はもちろんのこと、全生徒が参加する国内語学研修や海外語学研修、海外修学旅行なども充実しています。
学校の沿革
小石川中学校は、1918年に東京府立第五中学校が創立されたことが始まりとなります。
1943年には東京都立第五中学校、1948年には東京都立第五新制高等学校、1950年には東京都立小石川高等学校に改称されています。
そして2006年に現在の小石川中学校として中高一貫での教育が開始されました。
進学先
2023年の合格実績を見ると、東京大学16名、東京工業大学6名、一橋大学11名といった国公立大学のほか、早稲田大学81名、慶應義塾大学44名、上智大学61名など、私立大学への合格実績も豊富です。
施設
主な施設としては、多目的ホール、アリーナ、柔道場、剣道場、プール、テニスコート、グラウンド、CALL教室、地学室、化学室、物理室、生物室、図書館、美術室、音楽室などがあり、充実した施設環境が見られます。
学校周辺の環境
交通アクセス
- 都営三田線千石駅から徒歩3分
- JR山手線・都営三田線巣鴨駅から徒歩10分
- JR山手線・東京メトロ南北線駒込駅から徒歩13分
最も近い最寄り駅は千石駅ですが、JR山手線の巣鴨駅や駒込駅からも通学でき、多方面からのスムーズな通学が可能です。
小石川中学校の受検情報
検査日
- 特別枠募集:2024年2月1日
- 一般枠募集:2024年2月3日
検査内容は、特別枠募集と一般枠募集で異なります。また、公立中高一貫校となるため、総合成績には報告書点も含まれます。
募集人数
160名(男子80名・女子80名)*特別枠5名
特別枠募集の検査内容
受検にあたっては、自然科学分野の全国的なコンクールに入賞するなど、所定の応募基準を満たす必要があります。
また、検査内容は作文(45分)と面接(25分程度)で構成されます。
配点
報告書点が100点(450点から換算)、作文が400点、面接が500点で合計1000点満点となります。
一般枠募集の検査内容
適性検査Ⅰ〜Ⅲに分かれ、全ての都立中高一貫校で共同作成される「共同作成問題」と、独自の「独自問題」で構成されます。
適性検査Ⅰ
共同作成問題
適性検査Ⅱ
大問1、3が共同作成問題、大問2は独自問題
適性検査Ⅲ
独自問題
それぞれの検査の内容
検査の主な内容は、適性検査Ⅰが文章の読み取りや論理的な表現力、適性検査Ⅱが資料の読み取り、適性検査Ⅲが身近な事象を通じ、課題を総合的に解決する力が求められます。
配点
配点は、報告書点が200点(425点から換算)、適性検査Ⅰ~Ⅲが合計600点(各100点満点、合計300点を600点へ換算)で、合計800点満点となります。
配点は換算が行われますが、基本的には適性検査Ⅰ~Ⅲでそれぞれ100点満点と考えることができます。
また、適性検査Ⅰ~Ⅲのいずれも、検査時間は45分です。
教科ではなく総合的な検査
一般的な私立中学校の試験科目は、算数や国語といった教科で区分けされますが、公立中高一貫校の適性検査は教科ではなく総合的な検査となります。
その内容として、上記で挙げた文章の読み取り、表現力、資料の読み取りなどが含まれます。
小石川中学校の偏差値と倍率
偏差値
偏差値は男子(一般)が67、女子(一般)も67となります。
倍率
2023年度の最終応募倍率は、特別枠募集が0倍、一般枠募集が4.65倍となっています。
いずれも前年度よりやや下がっていますが、特に一般枠募集は依然として高倍率で推移しています。
小石川中学校の問題と対策
適性検査Ⅰ
問題内容
適性検査Ⅰは共同作成問題となります。文章の読み取りや論理的な表現力などが求められる検査で、国語の読解問題と似た内容となっています。
文章は2つ出題されますが、大問で区切られているわけではありません。まず2つの文章が紹介され、設問は最後にまとめて設けられています。
設問は合計で3問出題され、記号問題ではなく、書き抜き問題や記述問題となっていることが特徴です。
また、最後の設問は2つの文章に共通したテーマについての出題で、400字~440字以内の三段落構成で記述するという形式で例年出題されています。
この記述問題は特に注意が必要で、400字~440字以内という長さに加え、三段落構成で書くなどの「条件」と、各段落の最初の字は一字下げて書くといった「きまり」があらかじめ指定されており、これらの条件・決まりに従って記述しなければなりません。
文章を速く正確に読解する練習は大前提ですが、細かい指定を守って記述する練習も徹底し、傾向に慣れておく必要があります。
対策
適性検査Ⅰは記述問題がややこしいため、日頃から自分の考えをまとめる練習や、段落を構成して記述する練習を行い、とにかく傾向に沿った対策を進めることが大切です。
なるべく早い段階で過去問に触れておくほか、似たような出題形式の問題も数多くこなし、慣れを作っておきましょう。
もちろん、通常の国語の対策と同じく読解問題の演習も重ね、スピーディーかつ正確に読解する力、書き抜き問題などに対応する力を養うことも重要です。
適性検査Ⅱ
問題内容
適性検査Ⅱの内容は、大問1、3が共同作成問題で大問2が独自問題という構成になります。いずれも登場人物の会話の中で、資料などが登場し、それらを読み取って解くという形式です。
一般的な中学入試の科目で考えると、共同作成問題の大問1が算数、大問3は理科となります。
大問1は、単純な計算問題ではなく作業が中心の出題も多いので、長い問題を正確に読み取り、細かい作業・計算をコツコツ進める力が必要です。
また、大問3は実験や観察の問題が多いので、資料を素早く読み取る力が求められます。正確な知識に加え、情報処理能力もしっかり鍛えなくてはなりません。
一方、独自問題の大問2は、身近な社会や情報化社会に関する問題が出題されます。
こちらも資料が登場し、設問は計算や記述式となっています。扱われる題材は社会に関するものですが、計算問題は算数の計算力が、記述問題は国語の記述力が重要になります。
対策
適性検査Ⅱは、全体的に手間のかかる問題が多く見られます。いずれも与えられた資料を正確に読み取り、計算や記述などの作業を一つ一つ進めなくてはなりません。
こちらは過去問をもとに対策を行い、資料問題などは似た傾向のものを重点的に解き、実戦的な力を鍛えておきましょう。
適性検査Ⅲ
適性検査Ⅲは独自問題で、大問は2問出題されます。大問1は理科に、大問2は算数に相当します。
大問1の対策
大問1は理科の内容ですが、問題形式としては記述が多く出題されます。特に自分の考えを述べる問題が多いので、実験などについて考察し、自分で表現・記述する力が不可欠です。
日頃から実験問題などに多く触れ、与えられた情報を整理し、きちんと自分で思考・考察する練習をしておきましょう。ただ知識をつけるだけでなく、思考力や考察力、分析力、表現力など、実戦的な力を意識する必要があります。
これは習慣がかなり影響する内容なので、普段から自然科学分野に興味を持ち、知識とともに思考を深める習慣をつけましょう。
大問2の対策
大問2は算数の内容となり、規則性の問題が多く出題されます。
また、規則性の中に図形が含まれることもあり、図形に関する知識も求められます。
計算問題のような出題とは異なるので、日頃から規則性に関する問題の演習を重ね、実力を磨いていくことが重要です。
図形についても、基本的な知識を定着させたうえで、似たような傾向の問題で応用力を養っておきましょう。
また、解答に至った理由を書く問題もあります。きちんと説明できるよう、こちらも重点的に対策し、記述力を鍛えなくてはなりません。
解法を記述させる問題など、似た傾向の問題に多く触れ、慣れを作ることが大切です。
過去問
小石川中学校合格のために必要なこと
小石川中学校の適性検査は、独自問題と共同作成問題が混合していることに特徴があります。
国語に相当する検査は共同作成問題ですが、理解と算数に関しては共同作成問題のほか、完全な独自問題が適性検査Ⅲで出題されます。
小石川中学校は理数教育に力を入れていることもあり、理科と算数に関しては難易度の高い出題が行われるものと考えられます。
一方で、傾向は比較的つかみやすいので、規則性の問題や実験問題など、似た傾向のものを重点的に解いておくことが大切です。
理科と算数の分野以外でも、ある程度傾向はつかみやすいです。
適性検査Ⅱの大問2は身近な社会・情報化社会に関すること、適性検査Ⅰには三段落構成の記述問題が出題されることなど、特徴的な出題となっているので、これらも傾向に合わせて対策をしておきましょう。
また、全体的に記述問題が多くなります。どの分野でも自分の考えを表現する問題が多く、単に知識をつけるだけの対策では不十分です。
日頃から記述が多い問題をできるだけ多く解き、演習を重ねて実戦力を鍛えなくてはなりません。
過去問で傾向をつかむだけでなく、似たような問題に数多く触れ、記述による表現の仕方に慣れておきましょう。