「森のようちえん」とは〜自然の中で子どもを育てる北欧うまれの教育法

森の幼稚園わが子をのびのびと自然の中で育てたい!そういうニーズは、もしかすると人間の生活が発達すればするほど強くなるのかもしれません。

幼児期の都会ではなくて田舎で育てたいとの思いで暮らしを変えたり、そこまではできないけれど頻繁に山登りやハイキングなどのアウトドアに連れて行ったり。

何かしら工夫して意図的に子どもが自然に触れ合う機会を作っているご家庭はたくさんあります。

では「森のようちえん」のことをご存知でしょうか?

もしお家の近くに森のようちえんがあれば、子どもを自然の中で強く育ててみたいという願いが叶うかもしれませんよ。

「森のようちえん」とは?

森のようちえんとは、ざっくり表現すると、「幼児が自然の中で日常的に過ごすことのできる幼稚園や保育園、サークル、子育ての方法」といえましょうか。

小学校に上がるまでの子達が、保育士や親などの大人とともに、自然の中で様々な活動をしながらすごします。

山や川、森に出かけて行って思いっきり遊ぶことができます。

自然の中で遊ぶ様子

もともとは、50年ほど前に、デンマークのある母親が、わが子と近所の子どもを連れて森の中で保育を始めたことがきっかけだそう。そのため、特に北欧の方では、ポピュラーな教育の方法だといいます。

日本での森のようちえんの形態は、様々です。おおむね次の3つに分類できるでしょう。

森のようちえんの形態

1.日常型

NPO法人などの団体が運営しており、雨や気温などの天候に関係なく、基本的に毎日山や川、田んぼや畑、森に行きます。

日常型の魅力は、なんといっても、「自然の中で育つ」という希望を叶えられるところ。普通の幼稚園や保育園に通うように、毎日森に通うと言ったら分かりやすいでしょうか。

活動のフィールドが、用意された幼稚園や保育園ではなく、自然の中、ということですね。

とことん自然の中で過ごすことができるので、そういった環境を望んでおられるご家庭にはぴったりと言えます。

今の日本では、残念ながら、まだ設置基準などの面から森のようちえんを認可された幼稚園や保育園にすることはできないので、運営母体は各種団体ということになりますが、スタッフはきちんと保育士や自然に熟知した人で構成されています。

森のようちえんには、園舎のような拠点をもつところ、もたないところがあります。園舎があるところは、昼からそこで午睡をとることができます。

完全にスタッフに子どもを預けるところもあれば、お母さんたちが当番制でスタッフとして入るというところもあります。

2.非日常型

イベントや定期的な活動、一般の幼稚園や保育園の活動の中の一環として行われるものがこれに当たります。

普通の遠足よりも、より自然での体験活動を重視しているといえましょうか。

どこかの団体が単発で企画するイベントであれば、気軽に親子で参加してみることができるでしょう。

日常型の森のようちえんがプレスクールとして2〜3歳のお子さん向けに催していることもあります。

3.自主保育型

ママサークルなどの集まりが自主的に行っているものを指します。

森のようちえんに通わせたいと思っていても、行ける範囲になかなかないところも珍しくありません。

そのような場所では、お母さんたちが人を集めて主催しているところが一定数あるようです。

さすがに毎日とはいきませんが、定期的に開催して活動を行っています。

子どもと一緒になって親も活動することができるので、親としても当事者意識をもって関わることができます。

保育士さんに力添えをしてもらって、保育士と母親が共同で行うかたちもあります。

「ようちえん」とつくくらいだから、通常思い浮かべる幼稚園ではないの?と思われたかもしれませんが、幼児が遊ぶところ、という意味合いを持って、広い意味で使われているようですね。

積み木で遊ぶ子どもたち

森のようちえんでは子どもが自ら育っていく力を養う

自立していく子供たち森のようちえんでは、主体は大人ではなく子どもたちにあります。

大人の立ち位置は、「見守る人」「待つ人」です

一般の幼稚園や保育園、学校などは、ある程度、大人側が設定したり管理したりする環境にありますが、森のようちえんの活動の中では、保育者は子どもの活動の支援者。

遊びの内容もお友達とのケンカも、過度に干渉することはせず、子どもの主体性に任せるようです。

木に登ったり、草花を摘んでみたり、それらで何かを作ってみたり…、子どもの想像力は大人が思っているよりもずっと自由です。

様々な遊びを編み出し、展開していくことができます。

そして、そこで大切になるのが、友達との関係。

自然の中は、一般の園よりも厳しい環境にありますから、「協力する」ことが重要な意味を持つようになります。

森のようちえんは、その多くが異年齢での活動ですから、その中で、みんなで力を合わせて成し遂げたり、年長さんに頼ったり、年下の子に優しくしたりという関わり方が自然に身についていくのではないでしょうか。

子どもが自ら力強くたくましく育っていく環境が、森のようちえんにはあるように感じられます。

リーダーシップのある子供

危険も含めて、自然を味わうのが森のようちえん

特に日常型の森のようちえんでは、雨や風、雪といった天候の良し悪しに関わらず、基本的に毎日森へ出かけていきます。

それは、子どもたちにとってはかなり大変なこと。

幼児期であれば、普通は環境をその子に合わせて調整しますが、大きな自然の中では、こちら側を環境に合わせなければなりません。

小さいながらにも、順応力の芽とたくましい体と心を育てることができます。

また、もちろんのことですが、自然の中で過ごすということには危険が伴います。

時にはケガや思わぬアクシデントに見舞われることや、難しい難題が現れることもあるでしょう。

そういった中で過ごすことで、工夫して乗り越えられたという達成感や自信を得ることができるます。

また反対に、これはできないんだという自分の限界を知ることもできます。

偉大な自然の危険とは常に隣り合わせですが、その分自然で得られるものは非常に大きいのです。

単に自然に対する知識やテクニックが増えるだけではありません。

生きていく力そのものを、力強く育むことができるといえるでしょう。

感性の育て方

全国各地に「森のようえん」が広がっています

全国に目を向けてみると、自然の豊かな場所を中心に、各県だいたい平均して3〜5の団体が森のようちえんを運営しています。

森のようちえん全国ネットワークの団体会員数は、徐々にではありますが年々増加しています。

子ども時代の経験というのは、その後の人格形成に非常に深く関わっているようで、とりわけ自然とのふれあいが、とても良い影響を与えるといわれています。

もし、自然の中でたくましく育てたい!と思われるのであれば、ぜひ、森のようちえんという選択肢を考えてみてはいかがでしょうか?