中高一貫校はどのような基準で選ぶ?「中等教育学校」「併設型中学・高等学校」「連携型中学・高等学校」それぞれの違いと強み

中高一貫校に通う中学生

中高一貫教育を行う学校は、制度上、「中等教育学校」「併設型の中学校・高等学校」「連携型の中学校・高等学校」の3つがあります。

一方、中高一貫教育といっても「中等教育学校」「併設型」「連携型」で特徴は異なり、学校を決めるときに迷ってしまう親御さん・お子さんも多いでしょう。

この記事では、塾講師の経験から、「中等教育学校」「併設型」「連携型」の違いを整理し、それぞれの特徴・強みやメリットなどをご紹介していきます。

「中等教育学校」「併設型」「連携型」とは何?

「中等教育学校」「併設型」「連携型」が生まれた背景

1998年、中高一貫教育が制度化され、中高一貫教育は以下の3つに分類されました。

  • 中等教育学校
  • 併設型の中学校・高等学校
  • 連携型の中学校・高等学校

具体的には、1998年に「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立、翌年4月から上記3つのいずれかで中高一貫教育を導入できる形になりました。

もちろん、上記の学校教育法等の改正以前も、中学校と高等学校で一貫した教育を行う学校はありました。

私立の学校や国立大学の付属学校など、中学受験で中学1年生から入学し、そのまま高校3年生の終わりまで在籍するというケースは多かったのです。

ただ、上記のように具体的に制度化されたのは1998年で、その制度の実施がスタートしたのが1999年4月、という流れになります。

3種類それぞれに様々な違いがある

このように、中学校・高校の6年間で一貫した教育を行う学校は、現在では制度上3つに分類されています。

一方、「中等教育学校」「併設型」「連携型」のそれぞれで違いがあり、実際にどのような基準で選べば良いのか、疑問に思う方も多いはずです。

以下、「中等教育学校」「併設型」「連携型」それぞれの特徴や、メリット・デメリットなどをご紹介していきますので、学校選びの際の参考にしていただければ幸いです。

中等教育学校の特徴

私立中学校の生徒

中等教育学校は中高一貫校の一つですが、「中学校」「高等学校」という区分けがありません。

中学校に該当する最初の3年間を「前期課程」、高等学校に該当する後半の3年間を「後期課程」と位置付け、6年間の一貫教育が行われます。

「6年制の学校」として設置される

より正確に言うと、中等教育学校とは、同一の設置者(地方公共団体や学校法人など)が6年制の「中等教育学校」として設置する学校です。

「中学校」「高等学校」という名称ではなく、6年制の学校の「中等教育学校」として設置されることに特徴があります。

また、「中等教育学校」は一つの学校ですので、設置する者(地方公共団体や学校法人など)ももちろん同一です。

市が「公立の中等教育学校」として設置したり、学校法人が「私立の中等教育学校」として設置したりします。

つまり中学校と高等学校で設置者が異なるという形ではなく、そもそも「中学校」「高等学校」という名称でもなく、「中等教育学校」という完全に一つの学校として設置される形になるのです。

他の中高一貫校との違い

一般的な中高一貫校であれば、6年間のカリキュラムといえども、一応は「中学校」「高等学校」で区別されます。

中学校1年から高校3年の終わりまで在籍するにせよ、中学校3年の終わりには卒業式がありますし、高校1年の最初には入学式もあります。

最終的に6年間在籍するとしても、立場としては中学1年〜3年生、高校1年〜3年生で6年間過ごすことになるわけです。

しかし、中等教育学校はそもそも「中学校」「高等学校」の区分がなく、6年制の「中等教育学校」として、「前期課程」「後期課程」で6年間を過ごします。

一般的な中高一貫校と比べ、より一貫した指導体制に特徴があり、まさに「一つの学校」として継続した6年間の学校生活を送る形になります。

修了証書授与式などはある

ただ、中等教育学校といっても前期課程と後期課程に分かれているため、前期課程が終わるとき、修了証書授与式などは行われます。

一般的な中学校の卒業証書授与とは異なりますが、前期課程の修了にあたり、「修了証書授与式」という形で式が開かれます。

前期課程が中学校に該当する以上、前期課程の修了は、義務教育課程が終わることを意味します。

6年間の指導体制とはいえ、前期課程の修了は生徒にとっても学校にとっても特別なもののはずですし、「修了証書授与式」といった形で何らかの式は開かれるでしょう。

国立・公立・私立の全てがある

中等教育学校というと公立のイメージが強いですが、国立や私立でも中等教育学校はあります。

同一の設置者であれば、市や学校法人などが中等教育学校として設置することが可能です。

例えば神戸大学附属中等教育学校は、国立の中でも特に難関校として知られていますが、こちらは分類としては「国立の中等教育学校」となります。

また、桐蔭学園中等教育学校であれば「私立の中等教育学校」に、東京都立小石川中等教育学校であれば「公立の中等教育学校」になります。

そして、いずれも「中学校」「高等学校」が「前期課程」「後期課程」になることも同じです。

「併設型の中学校・高等学校」の特徴

併設型の中学校・高等学校は、同一の設置者が中学校と高等学校を併設して設置する学校のことをいいます。

「中学校」「高等学校」として設置される

こちらは中等教育学校と異なり、「中学校」「高等学校」という区分けで6年間の中高一貫教育が行われます。

6年間在籍できる学校を同一の設置者が設置するという点で、中等教育学校と同じですが、区分としては「中学校」「高等学校」となるため、中学校の卒業式や高等学校の入学式もあります。

ただ、あくまで中高一貫校ですので、中学校で入学した生徒は高校入学時に入試を受けることはありません。

中学受験を経て入学したら、基本的にそのまま高校卒業まで6年間在籍できます。

高校からの生徒を募集することも可能

併設型の中学校・高等学校では、中学校だけでなく高校からの生徒を募集することもできます。

この場合はもちろん、高校から入学するには高校入試を経て合格する必要があります。

そして高校では、中学校から内部進学で入学した生徒と高校から入学した生徒の両方が在籍する形になります。

このように、併設型は中高一貫6年間の教育体制を基本としつつ、中等教育学校よりはやや緩い形態を採用していることが特徴です。

中等教育学校は6年制の学校として完全な中高一貫体制を採用していますが、併設型はあくまで中学校と高等学校を接続している形となります。

そして高校からの募集も可能であるなど、より柔軟な体制が特徴的です。

「連携型の中学校・高等学校」の特徴

連携型の中学校・高等学校は、中学校と高等学校で設置者が異なる形態の中高一貫校です。例えば、区立広尾中学校と都立広尾高等学校は連携型の中高一貫校となります。

中等教育学校や併設型の中学校・高等学校と異なり、設置者の異なる中学校と高等学校が連携して中高一貫体制を実施することに大きな特徴があります。

「設置者が異なる」の具体例

市町村立の中学校と都道府県立の高等学校が連携し、中高一貫教育を行うなどの例があります。

この場合、中学校は市町村が、高等学校は都道府県が設置しており、中学校と高等学校で設置者が異なります。

他にも、市立の中学校と学校法人が設置する高等学校、A学校法人が設置する中学校とB学校法人が設置する高等学校、といった形で、中学・高校で設置者が異なる例は様々です。

この点が中等教育学校や併設型の中学校・高等学校との最大の違いで、両者よりさらに緩やかな中高一貫体制となっていることが連携型の大きな特徴です。

設置者間の協議によって教育課程の編成等が行われる

中学校と高校で設置者が異なるため、教育課程の編成等は設置者間の協議によって行われます。

そして教員や生徒間の交流なども含め、中学校と高校で各種連携が実施され、中高一貫教育が行われていくという形になります。

同一の設置者が連携型を採用することも可能

このように、中学校と高校で設置者が異なることが連携型の特徴ですが、実は制度上、同一の設置者が連携型を採用することも可能です。

この場合、もちろん同じ設置者が教育課程の編成等を行うことになります。

高校からの選抜はどうなる?

連携型の中学校・高等学校では、連携する中学校から高校に入学する際の選抜は、調査書および学力検査の成績以外の資料によって行うことができる、とされています。

つまり、成績以外の態度なども含めて選抜の資料となりうるということです。

このように、連携型では高校入学にあたって選抜が行われることが大きな特徴です。

制度上、かならず高校にそのまま入学できるとまでは言えません。

ただ、よほどの問題行動がない限り、選抜を経てそのまま進学するケースが多いでしょう。

また、出席日数が足りないなど、何か重大な問題があって内部進学できない場合があるのは、他の中高一貫校でも言えることです。

そのあたりは各学校でしっかり説明を聞き、高校にそのまま進学するか、場合によっては他の学校に進学する道を選ぶか、総合的に検討する必要があります。

その他の中高一貫校

実は、上記で挙げた中高一貫教育制度に基づかない中高一貫校もあります。

現在の制度上、中学校学習指導要領や高等学校学習指導要領の範囲内で一貫教育を行う場合であれば、必ずしも「中等教育学校」「併設型」「連携型」のいずれかになる必要はない、とされています。

つまり、「中等教育学校」「併設型」「連携型」になるための届出をせず、中高一貫教育を行うことも可能ということです。

そもそも、「中等教育学校」「併設型」「連携型」という制度ができる前も、中学校と高校で一貫した教育を行う学校はありました。

こうした独自の中高一貫体制を採用していた学校が、引き続き「中等教育学校」「併設型」「連携型」のいずれでもない中高一貫教育を行うケースも制度上は可能なのです。

ただし、これはあくまで「中学校学習指導要領や高等学校学習指導要領の範囲内で一貫教育を行う場合」に限られます。

中高一貫教育制度には教育課程の基準の特例がありますが、特例を活用して学習指導要領の範囲を超えて一貫教育を行う場合には、「中等教育学校」「併設型」「連携型」のいずれかを選択しなければなりません。

このように、中高一貫校といってもその仕組みは様々ですが、ここでは「中等教育学校」「併設型」「連携型」に絞り、以下、メリット・デメリットについて補足していきます。

中等教育学校のメリット・デメリット

メリット

中等教育学校は、完全な6年間の中高一貫体制が整っていることが最大の特徴で、ここに様々なメリットがあります。

勉強だけでなく部活なども含め、6年間同じ環境で学校生活を過ごすことができるため、大きな環境の変化は少ないでしょう。

もちろん高校入試の必要もありません

6年間の継続されたカリキュラムのもと、基礎から大学入試対策まで、じっくり学力を磨いていくことが可能になります。

もちろん他の中高一貫校も6年間のカリキュラムは充実していますが、中等教育学校は6年制の学校として、もっとも一体的なカリキュラム・指導体制を実現しています。

独自のカリキュラムを導入している学校も多く、先取り学習なども含め、6年間で余裕・ゆとりのある勉強をすることが可能です。

デメリット

中等教育学校は、良くも悪くも6年間で環境がそこまで変わりません。

もちろんこれはメリットでもあるのですが、環境が変わらないことに対し、若干物足りなさや退屈さを覚えてしまう子どももいるかもしれません。

例えば、環境が大きく変わらなければ人間関係もそこまで変わらないでしょう。

そうなると、いろいろな人と話していろいろな価値観に触れるという機会が減る可能性もあります。

ただし、これは生徒や学校にもよりますし、固定化された人間関係の中でも、様々な価値観に触れる機会はあるでしょう。

また、人間関係がそこまで変わらないということは、その中で深い付き合いができる可能性が高まります。

このあたりは人間関係に対する価値観によっても変わるため、必ずしもデメリットというわけではありません。

大学実績のよい学校の特徴

併設型の中学校・高等学校のメリット・デメリット

メリット

併設型の場合、高校からの募集も可能のため、いろいろな生徒が集まりやすくなります。

中学校から入学した生徒にとっては、中高一貫の中で環境の変化を楽しめることにもなり、程良い刺激を求める子どもにとっては面白味が増えるかもしれません。

特に高校から入学した生徒と話すことは、自分とは全然違う中学時代を歩んだ人と話すことでもあり、価値観が広がるきっかけにもなります。

もちろん中高一貫校のため、中学校で入学すれば高校入試の必要もなく、6年間でゆとりをもってじっくり学力を伸ばすこともできます。

さらに、中高一貫でありながらも中学校の卒業式や高校の入学式が普通に行われるため、これらの式を友達や親と一緒に楽しむことも可能です。

デメリット

併設型は高校からの募集も可能ですが、内部生と高校からの外部生で学力に差がつく場合があります。

例えば高校入試の難易度のほうが高い場合、高校1年の段階で外部生のほうが勉強が得意である可能性があり、学力で差がつくことを内部生が気にしてしまうおそれもあります。

また、内部生のカリキュラムと外部生のカリキュラムの調整等が難しい場合があり、学校としても悩みどころになるでしょう。

ただ、この点も必ずしもデメリットとは言えず、内部生と外部生の違いを良い刺激として捉え、互いに切磋琢磨して学力を磨き合うこともできるのです。

また、学校側としても、カリキュラムの調整等は工夫のしどころでもあり、さまざまな価値観を持つ生徒に接することは大きなやりがいとも言えるでしょう。

連携型の中学校・高等学校のメリット・デメリット

メリット

連携型は中等教育学校や併設型よりも中高一貫色が薄く、中学校と高校の設置者が異なり(※同一の場合もあり)、連携という形で各校のカラーが反映されます。

もちろん中学校と高校でカリキュラムや雰囲気が大きく異なるわけではありませんが、連携という形の中高一貫体制のため、中等教育学校や併設型よりも環境の変化や多様性を楽しめる可能性があります

また学校側としても、例えば市立の中学校と私立の高等学校を連携させるなどのパターンが可能のため、両者にとって新たな価値観の発見にもつながるでしょう。

シナジー効果で教育体制の改善やさらなる充実につながる可能性も考えられます。

こうした新鮮さが生徒に良い影響・刺激を与えることもあり、一般的な中高一貫校とはまた違った面白さがあります

デメリット

連携型の場合、中等教育学校や併設型より中高一貫体制が緩いため、中高一貫校ならではのメリットが弱まる可能性があります。

6年間の一体的な教育体制のもとでじっくり学力を伸ばしていくという点では、やはり中等教育学校や併設型のほうが強いと言えるでしょう。

また、連携型は高校に入学する際に選抜があり、制度上、そのままエスカレーターで必ず進学できるとは限りません

生活態度などで何か問題行動があれば、選抜の際に問題にされることもあるでしょう。

もちろん、どの中高一貫校でも、あまりに問題行動が多ければ内部進学に支障を来たすことはあります。

ただ、連携型は制度上、高校に入る前に選抜があるため、中高一貫校ならではのメリットが薄れる可能性があるのも事実でしょう。

受験勉強をする子供

まとめ

今回は、中高一貫校の話として、「中等教育学校」「併設型の中学校・高等学校」「連携型の中学校・高等学校」の違いやそれぞれのメリットなどをご紹介しました。

「中等教育学校」「併設型」「連携型」は制度上の区分けとなり、いずれも中高一貫教育を実施していますが、その特徴は様々です。

例えば、中等教育学校は「中学校」「高等学校」の区分けがなく、「前期課程」「後期課程」で6年間過ごす形になります。

一方、併設型と連携型はあくまで「中学校」「高等学校」という区分けで6年間の中高一貫教育が実施されます。

また、併設型は同一の設置者が中学校と高校を併設して設置しますが、連携型は中学校と高校で異なる設置者が連携して一貫教育を行います(※同一の設置者の場合もあり)。

このように3種類で特徴は異なりますが、それぞれに強みやメリットがあり、中学受験を検討するときは3種類の違いや特徴をしっかりおさえることが大事です。

例えば中等教育学校は完全な6年間の一貫教育に強みがありますが、併設型は高校からの募集もでき、多様な生徒が集まりやすいです。

また、連携型は各学校のカラーも出やすく、中等教育学校や併設型とは異なるユニークさがあります。

こうした各学校の特徴・環境や、お子さんの性格なども踏まえ、どの形態の中高一貫校が向いているか、様々な観点から検討してみてください。