設立以来、高い人気を誇る都立中高一貫校ですが、その入学試験にあたる「適性検査」は私立中の入試と問題の傾向が大きく異なります。
そんな中、私立受験型対策から都立中高一貫校に合格するお子さんがいますが、どのような勉強をしたら私立受験型対策から都立の「適性検査」を突破できるのか気になる親御さんも少なくないかと思います。
そこで今回は、私立受験型対策の勉強をしながら都立中高一貫校にも合格した子どもを持つ筆者が、私立受験型対策から都立中高一貫校にも合格するためにすべきことをご紹介していきます。
目次
都立中高一貫校合格に必要な学力とは
公立でありながら、6年間を通して高水準の教育を受けることができる都立中高一貫校(以下、都立中)はいまだに人気が衰えず、現在ある10校の平均倍率は5.74倍(2020年度)と高倍率を保っています。(参考:令和2年度東京都立中等教育学校及び東京都立中学校入学者決定応募状況)
都立中の入学試験にあたる「適性検査」は、私立中の入試と問題の傾向が大きく異なるため、都立中を目指すお子さんの多くは、都立中対策を得意とする塾や講座を利用しているのが現状です。
しかし、実は私立受験型対策をしているお子さんの中にも、都立中を併願し、合格しているお子さんがいます。
なぜ、私立受験型対策から都立中に合格できるのでしょうか。
都立中高一貫校の適性検査と私立型入試問題の違い
私立中学の入試の多くは、国語・算数・理科・社会の4教科、または国語・算数の2教科など教科ごとに出題されますが、都立中高一貫校(都立中)の入学試験にあたる「適性検査」は教科ごとではありません。
適性検査はⅠ、Ⅱ、学校によってはⅢとあり、適性Ⅰは、自分の考えを401字~440字で述べる、いわゆる「適性検査の記述」を含む国語的な問題が出題されます。
適性Ⅱは、「社会」で取り扱うようなグラフ・統計資料、地図などから正しく情報を読み取り、ときには計算して必要な値を導き、説明する問題が出題されます。
適性Ⅲは、「理科」や「算数」の複合的な問題で、自然現象や科学などの内容に関する設問や、パズルや立体などの設問が並びます。
このように、都立中の「適性検査」は、教科を跨いだ総合的な問題になっていて、解答も自分で導きだした答えを説明する力や自分の意見を述べる力が問われるものになっています。
都立中受験をする家庭がしている対策
都立中高一貫校(都立中)の入学者は、実際にどのような受験対策をしているのでしょうか。
まず、都立中の入学者で大半を占めるのは、多摩地区を中心に展開し、都立中受験で実績をあげている進学塾「ena」に通塾していたお子さんです。
各学校により多少の違いはありますが、例年、学年全体の3分の2前後は「ena生」で占められます。
次に多いのが、Z会などの「適性検査」対策講座に通塾、もしくは通信教育で勉強していたお子さん、私立受験対策がメインながら「適性検査」対策講座を設けている受験塾に通塾していたお子さんなど、enaでないところで「適性検査」対策をしたお子さんです。
こう見ると、都立中はやはり「適性検査」対策をしたお子さんでないと合格できないように思えますが、少数ながら、毎年確実に、私立受験型対策の勉強をしながら都立中に合格するお子さんはいます。
実際に、我が家の2人の子どもたちは、大手受験塾の私立受験型対策のクラスに通塾していましたが、2人とも併願した都立中に合格することができました。
同じ私立受験型対策クラスの塾友にも、併願した都立中に合格したお子さんが数人いました。
私立受験型対策から都立中に合格する子供の学力
このことから、私立受験型対策をしているお子さんでも、「ある一定以上の学力」があると、都立中の「適性検査」にも対応できると考えられます。
ここで気になるのは、「ある一定以上の学力」ですよね?
筆者の知る、私立受験型対策から都立中に合格したお子さんは、以下の学力がありました。
- 私立受験型偏差値が60以上で安定している
- 学校の作文など、長い文章を書くことが苦手でない
- 国語が比較的得意
- 算数の基礎問題は難なく解答できる
- 語彙や漢字問題はほぼ完答できる
- 社会・理科の基礎問題はほぼ完答できる
私立中でもいわゆる「難関校」以上に合格したお子さんが、併願した都立中にも合格していました。
都立中高一貫校に合格するために、私立受験型対策をしながらすべきこと
私立受験型対策の勉強は、学習すべき内容が多く、いくら時間があっても足りないほどです。
そんな中、都立中高一貫校を併願し、合格するには、私立受験型対策にも「適性検査」対策にもなる勉強を意識して行い、さらに必要最低限の「適性検査」対策をする必要があります。
そこで次から、都立中高一貫校に合格するために、私立受験型対策をしながら、これだけは“しておくべきこと”をご紹介します。
記述問題は「語彙力」強化と「経験」の整理で対策
都立中高一貫校の「適性検査」で、一番厄介だと思われているものが、「記述問題(国語系問題)」ではないでしょうか。
この「記述問題」で大切なのは、自分の考えを400字ちょっとでまとめる「記述力」、正しい文章を書く「文章力」、文章の表現力を豊かにする「語彙力」、正しい漢字を書く「漢字力」などですが、同様に必要なのが、出題されるテーマに自らの経験などを関連づける「対応力」です。
このうち、「記述力」は私立中学の入試でも、ある一定量の記述問題を出題する学校があるため、私立受験型対策の勉強で行う問題集などにある100字~200字前後の記述で「記述する練習」はできます。
400字以上という字数についても、後で紹介しますが、模試や過去問を実際に解くことでカバーできます。
表現力を豊かにすることと、自分の経験を出題されたテーマに関連付ける力を強化しよう
それよりも、重視したいのは、私立受験型対策としても必須であると同時に、「適性検査」の「記述」でも表現力を豊かにすることができる「語彙力」と、自分の経験を出題されたテーマと関連付ける「対応力」です。
「語彙力」は、私立受験型対策で求められるレベルはもちろんのこと、「適性検査」対策として、その語彙を実際に使えるように使い方(例文)も一緒に学習しておくことがポイントです。
また、出題されたテーマと自分の経験を関連付ける「対応力」は、普段から経験したことを「〇〇のテーマに使えそうかな」と意識することが大切です。
実際に我が家でも、学校の道徳の学習内容や、合唱祭の練習でクラスをまとめた経験などについて、「〇〇ってテーマの具体例になりそうだね」と、「経験」がどんな出題テーマの時に使えそうか、どう結論付けることができそうか、親子で話題にしました。
そうすることで、子どもなりに「記述」に使う「経験(材料)」を頭の引き出しに整理しておくことができたようです。
総合力を問う問題は私立型勉強の総力戦
都立中高一貫校(都立中)の「適性検査」のうち、適性Ⅱ、適性Ⅲにあたる社会分野と算数、理科分野と算数の総合的な問題は、実は私立受験型対策をしているお子さんが得意とするケースが多いです。
なぜなら、社会分野と算数の融合的な問題である適性Ⅱでは、人口や面積、農産物などについて日本と他国を比較したグラフや統計を利用した問題が出題されることがあり、これらは私立受験型対策でも基礎知識として学習していることが多いからです。
同様に、理科分野と算数の融合的な問題である適性Ⅲでも、学校で取り扱うような実験や私立受験型対策にも出てくるパズルやサイコロなどを扱った問題が出題されることがあるため、「適性検査」の対策をしていなくても、問題の正解は分かるお子さんが多いのです。
グラフや表を読み取り簡潔にまとめる練習をしよう
あと一押し、都立中合格のためにプラスして必要なのは「説明しながら解答する力」。
そこで、「説明しながら解答する力」をつけるために、社会のテキストで見かけるグラフや表が何を表しているのか正しく読み取り、簡潔にまとめる練習をしたり、理科分野や算数では現象や解法を説明する「短記述」の問題を正しく答えられるように学習しておいてください。
具体的にどんな問題を解けばよいか分からないときは、塾の先生に相談するのも一考です。
模試・過去問をフル活用する
私立受験型対策をしているお子さんが、都立中高一貫校を受験するときに最大限活用していただきたいのが、公立中模試と過去問です。
私立受験型対策をしているお子さんは、受験勉強のほとんどを私立受験対策に費やす必要があるため、「適性検査」対策にはあまり時間がかけられません。
短時間で効率よく都立中の「適性検査」を行うには、実践に近い模試や過去問で適性検査の“解答方法に慣れる”のが一番です。
都立中の併願を検討したい場合は、まずは一度、公立中模試を受けてみてください。
模試を受けることで、「適性検査」に本当に対応できるか否か、感覚的にでも分かると思います。
そして、都立中も視野に入れることを決めたら、受けた模試や過去問は、必ず解き直しをしてください。
記述対策に必ず解き直し、塾の先生に添削をしてもらうなど時間を割くことを覚悟しておこう
特に適性Ⅰの「記述」は、及第点が取れるレベルまで、何度も書き直すことが大切です。
できれば、通っている塾の国語の先生に添削してもらってください。
我が家は、通っていた塾の国語の先生に、過去問だけでなく模試の「記述」の解き直しも添削していただくようお願いし応じていただきました。
「適性検査」対策を受講しているお子さんは、とてつもない量の「記述問題」演習をして本番に臨んできます。
そういったお子さんと合否を競うわけですから、「記述」対策には、多少の時間を割くことを覚悟してください。
私立受験型対策で都立中高一貫校を併願するときの注意点
私立受験型対策をしながら、都立中高一貫校(都立中)を併願するときに一番注意したいのが、都立中の「適性検査」対策に費やす時間の上限を明確にしておくことです。
私立受験型対策をしているお子さんでも、一定以上の学力があれば都立中に合格する可能性はありますが、それでも模試や過去問演習、その解き直しなど「適性検査」対策に僅かでも時間を割く必要があります。
私立受験型対策に多くの時間が必要で、都立中の「適性検査」対策にあまり時間を配分できない場合は、「適性検査」対策は「模試と過去問のみ」など割り切ってしまうのも手です。
都立中を含む受験予定校の志望順にもよりますが、都立中の「適性検査」は「勉強しただけ点数が取れる」問題ではありません。
思うように「適性検査」対策が進まなくなった場合にどうするのか、都立受験自体の取りやめ条件など、主軸にしている私立受験型対策まで影響がでないよう、親子でよく話し合っておくのが大切です。
まとめ
今回は、私立受験型対策から都立中高一貫校にも合格するためにすべきことをご紹介しました。
私立受験型対策をしていても、都立中高一貫校に合格することは可能ですし、実際に合格するお子さんは毎年います。
もし、都立中高一貫校の併願を考えるなら、まずは公立中模試を受けてみてください。
そして、都立中高一貫校の併願を決めたら、いくつかある志望校の中で都立中高一貫校の扱いをどうするのか事前に決めておくのが大切です。