中学受験は第一志望校だけでなく、併願校も決めて受験することが一般的です。
ただ、併願校といっても具体的にどのように決めるべきなのか、悩んでしまう親御さんも少なくありません。
偏差値はどのように考慮すべきか、滑り止め校とチャレンジ校はどのように決めるか、日程はどうするかなど、疑問点は多いでしょう。
この記事では、塾講師の経験から中学受験の併願校を選ぶ基準、注意点について、様々な視点からポイントをご紹介します。
併願校の基準とは?
中学受験では、第一志望校だけでなく併願校も決めるケースが一般的です。
もちろん第一志望校に合格することが目標ですが、やはり受験ですので、どうしても失敗してしまう場合もあります。
そのため、滑り止めの意味で他の学校も受け、受かった学校から進学先を決める、というパターンが多いでしょう。
一方、滑り止め校ではなくチャレンジ校として他の中学校を併願する場合もあります。
このあたりは各ご家庭によって変わりますが、まずはこうした併願校を選ぶ基準やポイントから整理していきます。
併願校の偏差値の基準
現時点での偏差値を基準とすると、併願校は「偏差値プラスマイナス10」の範囲で検討すると良いでしょう。
偏差値プラス10の学校がチャレンジ校、偏差値マイナス10の学校が滑り止め校(おさえ校)となります。
場合によっては「偏差値プラスマイナス5」で決めるのもアリです。
併願校といってもただやみくもに選べば良いわけではなく、あまりにレベルが高すぎる学校を選ぶのは好ましいとは言えません。
また、滑り止め校といっても、なるべく第一志望校のレベルに近い学校にしたいと考えるご家庭も多いでしょう。
そのため、「偏差値プラスマイナス10」や「偏差値プラスマイナス5」の範囲で考えると、第一志望校に合った学校に絞りやすくなります。
ただし、併願校は偏差値だけで決めて良いものではありません。
これは第一志望校を決める際にも言えることですが、受験する学校はあくまで校風や教育方針、そしてお子さんの意向等も踏まえ、総合的に考えるべきです。
このあたりの注意点については、詳しくは後述します。
チャレンジ校と滑り止め校のバランス
もし第一志望校に合格できなかったときのために滑り止め校も受験しておく、というケースはごく一般的です。
一方、もっと上位の学校をチャレンジ校として併願する場合もあります。
ただし、併願校はやはり保険の意味合いが強く、まずは安全圏として滑り止め校から決めておくべきでしょう。
あまりにチャレンジ校をたくさん受験しても、合格する確率はやはり下がります。
また、チャレンジ校に合格できたとしても、入学後にうまくやっていけるかどうか不安に思うお子さんや親御さんも少なくありません。
その場合、チャレンジ校自体受験しないという選択肢もあります。
さらに、日程等の問題で受験できる学校も限られてくるでしょう。
そのため、まずは早めに滑り止め校を決め、日程を固めたのち、チャレンジ校を決めた方が好ましいです。
第一志望校と滑り止め校のスケジュールをきちんと固めたうえで、さらに余裕がある場合にチャレンジ校も決める、といったイメージです。
第一志望校と同程度のレベルの学校を併願する場合
滑り止め校やチャレンジ校のほか、第一志望校と同程度のレベルの中学校を受験するケースもあります。
ただ、滑り止め校よりレベルが上がるので、チャレンジ校ほどではないにせよ、子どもの負担は大きくなります。
そのため、やはり第一志望校と滑り止め校をきちんと固め、余裕を作ったうえで決めるべきでしょう。
中学受験は数多く受ければ良いわけではなく、受験日程や子どもの負担等、様々な点を考慮しなくてはなりません。
12月中に受験できる学校を選ぶのもアリ
中学受験というと1月〜2月に受験するイメージが強いですが、12月に入試が行われる中学校もあります。
受験に慣れる意味でも、こうした12月中に受験できる学校を併願する方法もあるのです。
ただし、慣れ・腕試しで受けるのであれば、あまりに難しい学校を選ぶのは好ましいとは言えません。
お子さんの学力や勉強の進行状況等を踏まえ、なるべく余裕のある学校を選んであげると良いでしょう。
併願校を決める際の注意点
ここまでご紹介したポイントも踏まえ、併願校を決める際の注意点についてさらに詳しく整理しておきます。
校風・教育方針等は必ず確認し、子どもの意向を尊重する
第一志望校を決める際にも重要なことですが、受験する学校を偏差値だけで決めるのは絶対に避けるべきです。
もちろん子どもの学力や偏差値も考慮すべき点にはなりますが、それだけで決めると、「入学してみたら校風や教育方針が子どもに合わなかった」などの事態になりかねません。
偏差値だけでなく、学校の教育環境はどうなっているのか、各学校の資料や説明会・見学などを通じてしっかり調べる必要があります。
こうした校風・教育方針等をきちんと確認するのは、第一志望校でも併願校でも変わりません。
例えば、第一志望校の校風・雰囲気と似た学校から検討していくなど、学校の中身をしっかり見ることが大事です。
そして子どもの意向を尊重し、本当に子どもに合う学校なのか、様々な点から検討を進めましょう。
後悔しない中学受験にするためにも、併願校も含めて各学校の現場の情報はしっかりチェックしておいてください。
第一志望校と出題傾向が似ているかどうか
併願校は、なるべく第一志望校と似た出題傾向であることが好ましいでしょう。
中学受験といってもその出題形式は多岐に渡り、記述問題が多い学校、途中式・考え方を書かせる問題が多い学校もあれば、選択肢問題が中心の学校もあります。
子どもによって向き不向きもありますので、出題傾向の似ている学校を併願できるに越したことはありません。
もちろん、完璧に出題傾向が同じ学校はありませんが、あまりに傾向の異なる学校を併願するのはやはりリスクが高まります。
偏差値だけで決めることなく、こうした受験問題の中身もしっかり検討してみましょう。
滑り止め校の受験はなるべく早めに
2月に第一志望校の受験がある場合、なるべく1月中に滑り止め校を一つ受験できると良いでしょう。
ここでひとまず合格できれば、気持ちの面でも少し余裕が生まれるはずです。
一方、滑り止め校を後回しにすることはあまりオススメできません。
よく言われる話ですが、第一志望校の後に滑り止め校を受験する場合で、万が一第一志望校に合格できなかったら、焦って受験して滑り止め校も合格できなかった、などの事態になりかねないからです。
そのため、できれば滑り止め校は早めに、特に1月に一回受験できることが好ましいでしょう。
滑り止め校に合格できなかった場合のフォローを忘れずに
受験というのは本番で何が起こるかわかりません。
滑り止め校とはいえ、場合によっては合格できないこともあります。
特に、第一志望校前に滑り止め校を受けて合格できなかった場合、かえってプレッシャーが強まるおそれもあるのです。
そのため、早めに滑り止め校を受ける場合、特に余裕のある学校を選ぶことが大切です。
また、もし合格できなかったとしても、親がしっかり声かけをしてフォローしてあげてください。
中学受験は親と子どもの二人三脚で乗り切るものです。
受験日程や併願校を決める際にも、細かい部分まできちんと配慮してあげ、本番に臨むようにしましょう。
併願校はいつ頃までに決めるのがベスト?
目安としては、9月中から併願校を決めておくことが好ましいです。
第一志望校の過去問を9月あたりから本格的に解くとすれば、併願校の過去問は10月には解き始めたいところです。
そのため、9月から徐々に併願校を決めていき、遅くとも12月前には一通りの受験校が決まると良いでしょう。
もちろん、これは各ご家庭によって変わる問題ですが、少なくとも併願校の1〜2校は9月あたりから決めておくことが大切です。
公立中高一貫校と私立中学校を併願する場合
公立中高一貫校と私立中学校を併願するケースももちろんあります。
ただし、公立中高一貫校は適性検査、私立中学校は4科目受験が基本となるため、両者は出題傾向が大きく異なります。
先ほども触れましたが、あまりに傾向が違いすぎる学校を併願するとリスクが高まるので、やみくもに併願を決めるのは好ましくありません。
子どもの希望や、第一志望校の出題傾向、日程等も踏まえ、無理のない範囲で併願を検討すべきです。
例えば第一志望校の私立中学校で、各分野が横断的に出題される問題や長めの記述問題があれば、一部の公立中高一貫校と傾向が似ているので併願を考える、といった形で、出題傾向を一つの目安にすると良いでしょう。
日程は細かい部分まできちんと確認する
当たり前といえば当たり前の話ですが、受験日程は細かい部分まで必ず確認しましょう。
各日程がきちんと把握できないと、受験期直前になって焦ってしまいます。
また、やみくもに併願校を決めてしまうと、どうしても受験日程に無理が生まれます。
12月や1月に受験する場合、2月にまとめて受験する場合、私立中学校と公立中高一貫校を両方受ける場合など、しっかり日程を確認してスケジュールに余裕を持たせ、なるべく子どもの負担を軽くする方向で調整することが大切です。
また、午前入試、午後入試、さらには他県で通学できる範囲の中学校なども含め、どのように受験日程を組むのが効率的なのか、それぞれ確認して決めましょう。
併願校に合格した場合の選択肢
最後に、併願校に合格した場合の選択肢についても、ポイントを整理しておきます。
第一志望校に受からず滑り止め校に複数合格した場合や、第一志望校もチャレンジ校も合格した場合など、どこを進学先にするのか、非常に悩ましい問題となるでしょう。
ただ、いずれも重要なことは、親と子どもで考えをしっかり共有し、最終的には子どもの意向を尊重することです。
滑り止め校のみに合格した場合
たとえ滑り止め校のみの合格でも、子どもが進学に意欲的であれば、もちろんその意思を尊重しましょう。
中学受験は第一志望校に合格することが目標とはいえ、滑り止め校に進学できることもまた、中学受験の成果です。
その成果を無駄にすることはないので、子どもが意欲的なら尚更、進学を後押ししてあげましょう。
また、複数の滑り止め校に合格しているなら、各学校の校風や教育方針、部活動などの各環境をもう一度チェックし、どこの学校に行くのがベストなのか、親と子どもでしっかり意思を共有して決めることが重要です。
そのほか、第一志望校に合格できなかったことで子どもが落ち込んでしまう場合もあるかと思います。
その際にも子どもにきちんとアプローチし、滑り止め校に進学できるという選択肢はしっかり残されていることを再確認してあげてください。
いずれの場合も、とにかくコミュニケーションは丁寧に行い、考えを共有することが大切です。
第一志望校もチャレンジ校も合格した場合
第一志望校のほか、チャレンジ校にも合格できた場合、進学先の選択は難しくなります。
第一志望校よりレベルの高い学校に合格できて嬉しい気持ちの一方、チャレンジ校に進学した後、本当に学校の勉強についていけるのかどうか、不安に思うお子さんや親御さんも見られます。
ただ、チャレンジ校に合格できたことは事実であり、その点では他の受験生と大きな差はないと言えます。
そのため、自信を持ってチャレンジ校に進学することは何ら悪いことではないのです。
むしろ、チャレンジ校に進学することで、これまで以上に頑張ろうと意欲的になるケースもまた多いです。
ただし、子どもが第一志望校に強いこだわりを持っているなら、その意思を優先してください。
学校はレベルが高い方が良いというものではなく、最終的には子どもの意思によって通学すべき場所だからです。
親としてはよりレベルの高い学校に進学させてあげたいという気持ちもあるかと思いますが、第一志望校に対する子どもの思いはしっかり考慮し、コミュニケーションを重ねて進学先を決める必要があります。
まとめ
今回は、中学受験の併願校を選ぶポイントについてご紹介しました。
併願校選びは難しい側面もありますが、「偏差値プラスマイナス10」や「偏差値プラスマイナス5」の範囲で検討してみること、チャレンジ校と滑り止め校のバランスに注意することなど、各ポイントをおさえていけば、だいぶ絞れるかと思います。
また、校風や教育方針はしっかり確認し、偏差値だけで決めないこと、子どもの意向を尊重すること、併願校を決めるタイミングや受験日程など、諸々の注意点もしっかりおさえ、総合的に決めていく必要があります。
あくまで受験するのはお子さんですので、お子さんに合った学校かどうか、無理のない受験日程かどうか、など、細かい部分でしっかり配慮してあげましょう。
そのほか、滑り止め校のみに合格した場合や、第一志望校とチャレンジ校両方に合格した場合など、合格後のことも考え、お子さんとしっかりコミュニケーションを行うことが大切です。
どんなケースでも、中学受験は親と子どもの二人三脚で乗り切る必要があります。
このことを忘れず、第一志望校に加え、併願校を様々な視点から検討してみてください。