近年、中学受験でも推薦入試を導入する学校が見られ、選択肢の一つとして検討するご家庭も多いでしょう。
一方で、推薦入試は主にどのエリアで行われているのか、どのような種類があるのか、試験日程は早いのかなど、疑問点も多いかと思います。
この記事では、塾講師の経験から中学受験における推薦入試の特色や内容などについてご紹介していきます。
目次
中学受験の推薦入試は増えているの?
推薦入試というと高校受験や大学受験のイメージが強いですが、中学受験でも一部で推薦入試が導入されています。
推薦入試は一般入試よりも日程が早く、合格できればひと足早く受験勉強期間を終えることができ、何かとメリットのある入試形態です。
また、もし推薦入試に落ちてしまったとしても、一般入試で受験することは可能ですので、合格できる選択肢を増やすというメリットもあります。
さて、東京の中学校では推薦入試はあまり馴染みがないかもしれませんが、関東圏の一部や関西圏などでは推薦入試を採用している中学校がいくつか見られます。
特に千葉県では推薦入試を実施する学校が多く、「一志入試」などと呼ばれます。
こうした中学受験の推薦入試は、「合格した場合は必ず入学する」という誓約が基本となり、千葉県の「一志入試」も「第一志望入試」という意味を持っています。
推薦入試は強く第一志望校を希望する場合にオススメ
このように、推薦入試は「この学校に行きたい」と強い思いのある子どもにとっては何かと便利なシステムです。
「絶対にこの学校に行きたい」という思いが強ければ強いほど、その学校に集中して対策を進めたいでしょうし、「合格した場合は必ず入学する」という基本的な誓約にも迷いはないでしょう。
一方、第一志望校があまり定まっていない場合は、推薦入試はそこまでオススメできません。
例えば、他の併願校と志望順位を変更する可能性のある場合など、絶対に第一志望校を変えないとまでは言えないようなケースでは、より選択肢の広い一般入試のほうが適しているでしょう。
確かに、推薦入試に合格すれば早めに受験勉強生活を終えることができるメリットはありますが、「絶対にこの学校に行きたい」という思いがそこまで強くないのであれば、後になって「他の学校にすれば良かった」と後悔してしまうおそれもあるのです。
このように、一般入試にするか推薦入試にするかは、第一志望校への思いの強さによって判断することが大事です。
もちろん第一志望校への思いが強ければ絶対に良いという話ではなく、いろいろ考えて第一志望校を変更したり、他の併願校と志望順位を変更したりすることが悪いわけではありません。
ただ、「絶対にこの学校に行きたい」との思いが強ければ、一般入試だけでなく推薦入試があればそちらも選択肢に入れ、そのための準備を早いうちから進めておくと良いでしょう。
一般入試以外の選択肢もあることを知ろう
中学受験というと2科目・4科目で受験する一般入試を想像する方も多いですが、他にも特待生入試や帰国生入試、そして上記で挙げた推薦入試など、いろいろな受験形態があります。
そして、中学受験の目的は当然ながら志望校の合格であり、合格してしまえばどの受験形態でも構わないのです。
一般入試だろうと推薦入試だろうと、合格という目的を達成できるなら、利用できる受験形態は積極的に利用して良いでしょう。
第一志望校に一般入試も推薦入試もあるのなら、「絶対にこの学校に行きたい」という思いが特に強ければ推薦入試を利用し、そこまででなければ一般入試で他の学校も併願するなど、状況に応じて利用できる受験形態を利用すれば良いわけです。
このように、中学受験には一般入試以外の選択肢もあることはきちんと知っておく必要があります。
このうち推薦入試について、以下、もう少し詳しく見ていきましょう。
中学受験!推薦入試の主な試験内容
推薦・自己推薦
推薦入試を受けるには、まず推薦書を志望校に提出しなくてはなりません。
その推薦書と、各学校で行われる学力試験や面接などを経て、総合的に合否判定が行われます。
そしてこの推薦書は、小学校が推薦するパターンと自己推薦の2種類があります。
小学校からの推薦は、文字通り学校が生徒を推薦する形になり、学校長から推薦状・推薦書をもらって志望校に提出する必要があります。
一方、自己推薦の場合は自分で自己推薦書を作成し、出願する形になります。
どの推薦形式を採用するかは中学校によって異なりますので、志望校の推薦制度は事前にきちんと確認し、小学校から推薦状・推薦書をもらう必要があるのか、それとも自分で自己推薦書という形で作成しなければならないのか、正確に把握しておきましょう。
小学校からの推薦の場合
小学校からの推薦の場合は、成績基準などが設定されることが多いです。
そのため、低学年のうちからある程度良い成績を残し、推薦の基準をしっかり満たさなくてはなりません。
小学校側が推薦する以上、「この生徒は成績等において優秀なため、推薦できます」といった形で推薦されるため、当然なんらかの推薦基準は設けられます。
もちろん成績だけでなく、日頃の生活態度などもきちんとする必要があるでしょう。
こうした推薦基準はあらかじめ注意しておかなければなりません。
自己推薦の場合
自分で自己推薦書を作成する場合、自己PRや学校で学んでみたいことなど、自分の言葉でしっかり書く必要があります。
なぜその学校に行きたいのか、なぜその学校でないとダメなのか、その理由をしっかり伝え、意欲を示さなくてはなりません。
小学校から推薦されるケースと異なり、自己推薦は文字通り自分で自分をアピールする必要があるのです。
自己推薦書の内容の指定などは事前にしっかりチェックし、そこに合わせて自分の言葉で推薦書を書く必要があります。
推薦入試の試験内容
推薦入試は推薦状・推薦書や自己推薦書に加え、学力試験などの結果も含めて総合的に合否が判定されます。
ただ、推薦入試の学力試験は一般的な2科目入試・4科目入試だけでなく、英語、作文、面接などが実施される場合もあります。
また、2科目入試・4科目入試といっても、推薦書と合わせて合否判断が行われるため、一般入試の2科目入試・4科目入試より有利に進めることも可能です。
もちろん英語、作文や面接などが試験内容に含まれる場合は、そちらもきちんと専門の対策をしなくてはなりません。
芸術やスポーツ、各種活動が重視される場合もある
推薦入試では、スポーツや芸術、コンクールなどの活動、資格、英語力など、特定の分野が重視される場合もあります。
ある分野に何か強みがあれば、こうした枠を利用して推薦入試を検討してみると良いでしょう。
もちろん各学校で条件は大きく異なりますので、あらかじめ内容を細かく確認する必要があります。
試験日程
推薦入試は12月に行われる場合が多く、一般入試より1、2ヶ月早いことが特徴的です。
冒頭でお話ししたように、推薦入試は一般入試よりスケジュールが早いため、合格すれば早めに受験勉強生活を終えることができる点も大きな強みでしょう。
一方、当然ながら受験の手続きは早めに準備する必要があり、ここはしっかりスケジュール調整をしなくてはなりません。
一般入試と同じような感覚で考えていると、いざ直前になって焦ってしまいます。
特に推薦入試は推薦書の準備などが必要ですので、書類の提出日や入試日などの日程はしっかり確認し、余裕のあるスケジュールを組んでおきましょう。
推薦入試をする際の注意点
ここまでの話を大前提として、推薦入試をする際の注意点についてさらにお話ししていきます。
各学校ごとに入試形態はしっかり確認すること
繰り返しますが、推薦入試の内容は学校ごとに大きく異なります。
小学校による推薦と自己推薦の2つがあるだけでなく、試験内容は各学校で多岐に渡りますし、それぞれの学校に沿った対策が必要不可欠なのです。
また、各推薦書の準備など、一般入試と違って何かと手間もかかります。
さらにスポーツや芸術といった特定の分野が重視されるのであれば、学力試験や面接以外の対策も必要になるわけです。
このあたりの内容の確認が不十分だと、実際に入試をするにあたって焦ってしまいます。
せっかく推薦入試を利用するのであれば、各学校の入試形態はとにかく細かい部分まで確認し、焦らずスケジュールを進めていくことが大事です。
中学校によっては推薦入試を取りやめるor新たに導入するケースもある
これは中学入試に限った話ではありませんが、学校によっては推薦制度を取りやめたり、逆に新しく推薦入試を導入したりする場合もあります。
そのため、志望校の最新の動向は常にチェックするようにしてください。
推薦制度があると思っていたら廃止された、逆に推薦制度がないと思っていたらいつの間にか募集していた、など、直前になって知っても対応が難しくなります。
各学校のホームページなどで募集要項が掲載されていたら、その内容は最新のものなのか、必ずチェックしてください。
学校によっては、すでに終了した年度の募集要項などが記載されていることもあります。
学校の公式サイトといえど、募集要項の年度は必ず確認し、最新の情報で推薦入試の有無を確かめる必要があります。
難関校は推薦入試がない?
いわゆる難関校の場合は、やはり一般入試で学力勝負になるでしょう。
基本的に難関校は算数・国語・社会・理科の学力試験でとにかく勝負するというパターンであり、合格のためには小学校4年生あたりからコツコツと受験勉強を重ねていく形になります。
ただ、近年は教育の在り方も多様化しているほか、各ご家庭の教育に対する捉え方も様々です。
難関校や上位校でなくても、それぞれの中高一貫校が持つ魅力に注目し、受験を検討するご家庭も多いのです。
いわゆる中堅校への志望が増えている傾向も見られ、中学入試をめぐる考え方・捉え方はまさに多様化しているでしょう。
難関校・上位校でなくても「絶対にこの学校に行きたい」という強い希望があり、その学校が推薦入試を実施しているのであれば、推薦入試を検討するご家庭も多く見られます。
このように、中学受験は決して偏差値や難関校かどうかで判断するものではありません。
難関校・上位校を志望するならやはり学力勝負が基本となりますが、そうでなければ各学校の入試制度を幅広く確認し、推薦入試があればそちらも検討し、選択肢を広げておくことが大事です。
推薦入試を選択した場合、一般入試の対策は継続しておくべき?
冒頭で述べた通り、推薦入試は「絶対にこの学校に行きたい」と強く希望する場合に何かとメリットがあり、「合格した場合は必ず入学する」という誓約も基本となります。
ただ、そうは言っても第一志望校の推薦入試の対策だけをすれば良いのか?と迷ってしまうご家庭・お子さんは多いでしょう。
一つの学校に絞って推薦入試の対策をするか、それと並行して一般入試の対策もコツコツ進めていくか、そのあたりは各ご家庭で変わってくるかと思いますが、可能な限り一般入試の受験勉強も進めておくことが好ましいでしょう。
もし第一志望校の推薦入試で不合格だったとしても、その学校の一般入試を突破すれば合格はできるわけです。
そのため、一般入試の対策として算数・国語・社会・理科の勉強を進めておくことはメリットがあります。
また、一般入試であれば他の学校を併願校として受験することも多いでしょうし、当然ながら一般入試の対策は他の学校の対策にもなるわけです。
学力的な難易度に加え、第一志望校と似たような校風・教育方針であれば、併願校として受験するメリットは大きいでしょう。
繰り返しますが、このあたりは各ご家庭の判断になりますが、推薦入試に失敗してしまったときの対応策として一般入試の対策を進めておくことは何らおかしなことではありません。
その際に併願校の受験を計画しておくこともまた、一般入試の戦略としてはごく自然なことです。
もちろん推薦入試を第一に考える場合、一般入試向けの勉強で推薦入試の対策がおろそかにならないよう、バランスはきちんと考える必要はあります。
ただ、推薦入試一本に絞らなければならないとは言えないので、そのあたりは柔軟に捉えていただければと思います。
まとめ
今回は、中学受験における推薦入試の特色や内容などをお話ししていきました。
中学受験は何も一般入試だけではなく、推薦入試を導入している学校も見られます。
東京の中学校ではあまり馴染みがなくても、千葉県や関東圏の一部、関西圏などでは推薦入試を導入する学校も多く、選択肢の一つとして検討してみると良いでしょう。
一方、推薦入試は各学校で内容が様々であり、とにかく試験内容を細かい部分まで事前に確認しなくてはなりません。
小学校から推薦状・推薦書をもらう必要があるのか、それとも自分で自己推薦書を作成しなくてはならないのか、試験内容は2科目・4科目が中心なのか、それとも面接などもあるのか、など、各学校でその内容はあらかじめ正確に把握しておきましょう。
また、推薦入試は「絶対にこの学校に行きたい」と強く思う場合に特にメリットがありますが、志望校がそこまで定まっていない場合にはあまりオススメはできません。
その場合は一般入試も含め、いろいろな選択肢を検討してみると良いでしょう。
一方、「絶対にこの学校に行きたい」という思いがあれば、推薦入試を受けることでまた選択肢が広がりますので、ぜひ検討してみてください。
現在、教育の在り方は多岐に渡り、中学受験の入試形態も今後さらに多様化すると思われます。
その中の選択肢の一つとして推薦入試にも注目し、中学受験は一般入試だけではないという視点を持つことが大事です。