教育格差について知っておきたい実態と問題

教育格差の実態

教育格差とは

教育の場では、しばしば「教育格差」が問題となります。

よく言われる言葉ですが、教育格差とは実際にはどのような状態を示すのでしょうか。

教育格差とは、子どもが受けることができる教育に差が生じることをいいます。この格差の原因には様々なものがあります。

原因としては、例えば親の収入など、経済面での原因が挙げられます。

比較的裕福な家では、子どもの教育にお金をかけることができ、幼少の頃から学習塾へ通わせること、学費が高くレベルの高い私立の学校へ通わせるなど、充実した教育を受けさせる傾向があります。

親の収入に格差が生じてしまうと、レベルの高い教育を子供に受けさせたくても経済的に厳しい、といった問題が生じます。これは教育格差の原因の一つです。

また、収入面だけでなく、住む場所によっても教育格差が生じるおそれがあります。

例えば、塾や予備校など、学校以外でハイレベルな教育を子供に受けさせる場合、塾や予備校が多い都心の方が有利になります。

これは、都心と地方の間で教育格差が起きる原因になります。

教育格差の実態

家庭の収入面で教育格差が生じてしまうとすると、家庭の収入や貧困の問題について考える必要があります。

経済的に厳しい子どもは7人に1人の割合でいる

厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によると、2015年の「相対的貧困率」は15.6%、17歳以下を示す「子どもの貧困率」は13.9%となります。

「子どもの貧困率」の割合から、7人に1人の子供が経済面で厳しい状況にあることを示しています。

一方で、2015年の「子どもの貧困率」は12年ぶりの改善となっています。2003年から2006年で「子どもの貧困率」が増加し、それ以降は2012年まで増加傾向が続いていました。

2012年の「子どもの貧困率」は16.3%で、経済的に厳しい子供は6人に1人の割合でしたが、2015年は7人に1人の割合に変化しています。依然として貧困率は比較的高い水準といえますが、若干の改善が見られます。

これらの統計から教育格差を考えると、7人に1人の子どもが経済面で厳しい状況にあり、充実した教育を受けることができない可能性があります。

学習塾などの教育費用出費の有無が教育格差につながっている

学校以外で教育をさせるかどうかということも、教育格差に関係しています。

例えば、文部科学省の調査「平成26年度子供の学習費調査 調査結果の概要」によると、「学校外活動費」は、公立中学が学習費全体の約65.3%、私立中学が学習費全体の約65%になります。これは中学校の例ですが、小学校や高校でも、「学校外活動費」の割合は高い傾向があります。

この「学校外活動費」には学習塾費や家庭教師費などがあり、特に学習塾費の割合は、芸術文化活動などの割合より高くなっています。これは、学校外での費用として、学習塾などに多くの費用が使われていることを示しています。

このように、学校外での教育を受けさせる傾向が強く見られます。

そして、学校外での教育費に多くの出費ができる家庭とできない家庭で、教育環境に差が生じることになります。それが教育格差につながるおそれがあります。

教育格差の問題と対策

問題

教育格差が引き起こす問題は、子どもの将来に大きく関わってきます。

充実した教育、ハイレベルな教育を幼少の頃から受けている場合、小学校から中学校、高校の間で勉強を重ね、良い大学へ進学する可能性が高まります。

そして、良い大学から良い就職先へ進む可能性も強くなります。

そうなると、どのような教育を受けたかということが、将来的な進路に深く関係することになります。

教育格差の最大の問題は、子どもの育った環境によって将来に影響が出てしまうことです。

親の収入などの状況、生まれた場所の状況など、生まれ育った環境によって受ける教育に格差が生まれ、将来の進路が狭まってしまうことが、教育格差の問題です。

対策

教育格差の対策としてしばしば言われることが、「機会の平等」です。つまり、教育を受ける機会を平等にし、家庭内の経済面での差によって影響されてはならない、ということになります。

例えば、最近よく言われる対策として、「教育バウチャー」というものがあります。

これは、私立学校の学費などに使用できるクーポンを、子どもや保護者に配布するというもので、各家庭の学費の負担を減らすというものです。

また、私立学校へ進学するという選択肢を与えることで、広範囲で学校の選択ができることになります。

これによって学校間の競争を生み、教育全体の質を上げることが目的になります。

一方で、学校間の競争を生むことは、かえって学校の中で順位ができてしまい、余計に教育格差が広がるのではないかという批判もあります。日本では導入は見送られています。

一方、日本でも見られるバウチャー制度としては、「学校外教育バウチャー」が挙げられます。

これは、学校外の教育を受けることができない子どもに対し、塾などに利用可能なクーポンを提供するものです。

まとめ

教育格差の実態でご紹介したように、日本では学校外の教育費が高い傾向があります。

学校外で受ける教育の質や量によって、教育格差が生じるおそれがあります。

「学校外教育バウチャー」が普及すれば、経済面で厳しい状況の子どもでも、均等に教育を受けられることにつながります。

また、地域による教育格差もあります。これらは、インターネットを利用した教育格差の是正が考えられます。

インターネットにより、教育に関する充実した情報がもっと得られるようになれば、どの地域にいても教育に関する情報をつかむことができます。

インターネットの活用は、地域の格差を是正できる可能性が大きいといえます。