受験生に対して親ができるサポートはたくさんありますが、過度に干渉しすぎると子どもは抵抗感を抱きます。
親が良かれと思って行ったことも、子どもにとってプレッシャーになったり、かえって逆効果になる場合もあります。
中学受験・高校受験・大学受験のいずれも、お子さんの性格を踏まえ、距離感をつかみながらサポートをしなくてはなりません。
この記事では、塾講師の経験から、受験生がしてほしいと思っている親のサポートについてご紹介していきます。
目次
親は受験にどの程度関わるべき?
受験生に対して親はどの程度関与して良いのか、これは多くの親御さんが悩んでしまう点でしょう。
特に中学受験の場合、子どもはまだ小学生のため、どうしても親が関わる機会は多くなります。
高校受験や大学受験であれば子どもが自発的に行動することも多いですが、中学受験は受験スケジュールの調整や日々の体調管理など、親が積極的に関わることも多いでしょう。
また、高校受験や大学受験の場合でも、親が全く関わらないというわけにはいかず、メンタルケアも含めて親ができるサポートはいろいろあります。
一方で、親が過度に干渉したりすれば子どもは抵抗感を覚えてしまいます。
親にしてもらいたいサポートもあれば、逆に迷惑に感じてしまうサポートもあるわけです。
関わらないわけにはいきませんが、過剰に関わりすぎてもかえって逆効果で、このあたりは適度な距離感を保たなくてはなりません。
このように、受験におけるサポートや距離感は非常に難しい問題ですが、次からは、それぞれの受験に分けてご説明します。
中学受験・高校受験・大学受験全てに共通していること
まず、中学受験・高校受験・大学受験全てに共通するポイントから整理しておきます。
親が行うべきサポート
勉強しやすい環境を整える
塾の自習室などと比べると、家での勉強は集中しにくい場合があります。
しかし、受験勉強は家庭学習が必要不可欠であり、家であろうと集中して勉強できる環境を整えなくてはなりません。
こうした学習環境を構築するのは親の役目でもあります。
例えば、子どもが勉強しているときはなるべく静かにする、テレビの音を小さくするか消す、漫画やゲームが子どもの目に入らないようにするなど、より集中しやすい環境を整えましょう。
また、食事で勉強を中断する場合、子どもによっては「キリの良いところまで集中して進めたい」と考える場合もあるでしょう。
その際には食事の時間をずらすなど、子どもの集中を切らさないための調整も大切になります。
もちろん規則正しい生活は重要であり、あまりに夜遅い時間帯などで食事をするのは好ましくありませんが、生活リズムを崩さない範囲で食事の時間を勉強に合わせるなどの措置はあり得ます。
このような調整も親ができるサポートですので、臨機応変に対応していきましょう。
健康で規則正しい生活リズムを整える
上記で触れましたが、あくまで健康で規則正しい生活リズムを整えるのは大前提となります。
栄養のある食事をとる、朝はしっかり起きる、夜遅くに勉強をしすぎないなど、規則正しい生活のために心がけるべきポイントはたくさんあります。
親としても栄養バランスのある食事を用意することはもちろん、朝は早めに起こすなど、規則正しい生活になるようサポートしてあげましょう。
学習面だけでなくメンタル面のサポートも!
親ができるサポートというのは学習面だけではありません。
勉強に不安を感じる受験生は多く、そんなお子さんのメンタルをサポートしてあげるのも親として非常に重要なことです。
受験というと学習面ばかりに目が行きがちですが、勉強はメンタルも深く関係します。
特に大学受験の場合、親のサポートは学習面よりメンタル面のほうが圧倒的に多いでしょう。
高校生であれば勉強は基本的に一人で進めますし、進路も子どもが決める形になります。
ただ、子どもは時に勉強や将来に不安を抱くこともあるので、親は子どものメンタル状態を確認し、必要に応じて相談に乗ったりアドバイスしたりすることが大切です。
もちろん高校受験や中学受験でも子どものメンタルケアは重要ですので、成績が伸び悩んだとき、進路に不安があるときなど、悩みをしっかり聞いてあげてください。
特に高校受験の場合、中学生は思春期が本格化することもあり、学習面に加えてメンタルケアも本格的に考えなくてはなりません。
また、中学受験は小学生が行うため、一人で何かをすることに不安を感じる子どもも多いので、不安を払拭できるようなポジティブな声かけも大切になります。
このように、親が行うサポートは学習面だけではないことは常に意識しておきましょう。
サポートを行うときの注意点
適度な距離感と放置・放任は違う
過度に干渉しすぎると子どもは抵抗感を覚え、逆効果になるおそれもあります。
そのため、どんな場合でも適度な距離感は意識することが大切です。
ただし、この距離感は放置・放任とは異なります。
中学受験・高校受験・大学受験のいずれも、親が全く関わらないというわけにはいきません。
勉強は塾や学校に任せっきりで良いというものではなく、親が子どもの学習状況をよく知らないというのは好ましくありません。
特に中学受験では尚更、子どもの学習状況は親も細かく把握しておくべきです。
また、親がメンタルケアなどを行うケースも多く、これは塾や学校より親が率先してサポートすべきでしょう。
中学受験や高校受験はもちろん、大学受験においても、こうした親のサポートは重要になるわけです。
適度な距離感は大切ですが、関わらなくて良いという話ではなく、距離感と放置・放任は大きく異なるという点は認識しなくてはなりません。
「もっと勉強しなさい」という表現には注意すべき
子どもの成績が伸び悩んでいるとき、親として「もっと勉強しなさい」と言いたい場合もあるでしょう。
ただし、この言葉は受験生にとって逆効果になるおそれがあるので注意が必要です。
例えば一生懸命勉強をしても成績が上がらないときに、親から「もっと勉強しなさい」と言われたらお子さんはどう思うでしょうか?
成績をなんとかしなければならないのは子どもも重々承知のはずであり、そこで「もっと勉強しなさい」と言われたら子どもは嫌な気持ちになるでしょう。
明らかに子どもが怠けているときなど、親として勉強するように言うべき場合もありますが、成績が伸び悩んでいるからといって安易に「もっと勉強しなさい」とばかり言うのは避けるべきです。
特に一生懸命勉強したにもかかわらず成績が伸び悩む場合は、もう一度やり方や学習習慣から見直すことが大事で、親も適宜アドバイスする必要があるでしょう。
ただ単に「もっと勉強しなさい」と言えば良いわけではないので、ここは十分注意が必要です。
子どもの意思を軽視しないように
受験では、親子で一緒に学校の情報を調べ、志望校や併願校を決める機会もあるかと思います。
特に中学受験の場合、子ども一人で志望校や進路を全て決めるのは難しいため、親子で一緒に志望校・併願校を細かく決めていく形になるでしょう。
ただ、そこで子どもの意思を軽視するのは避けてください。
受験というのは、子どもが「この学校に行きたい」という思いが根底にあって成り立つものです。
子どもが志望しない学校を無理に志望校・併願校として勧めても、子どもの中で抵抗感は大きくなります。
もちろん、子どもが自分の学力レベルとあまりにかけ離れている学校を志望校にした場合は、親として現実的な話をして志望校を変更させることもあるでしょう。
しかし、こうしたケースでないなら、志望校はあくまで子どもの意思に基づいて決めるべきであり、その意思を軽視するのは好ましくありません。
親が子どものためを思って特定の学校を勧めても、それが子どものためになるとは限らないのです。
こうした点も、子どもへのサポートを考える際に注意する必要があります。
中学受験・高校受験・大学受験!受験別に意識しておきたいサポートのポイント
では、次に中学受験・高校受験・大学受験にそれぞれに分けてポイントをご説明します。
<中学受験>受験生をサポートするコツ
受験情報は細かく共有する
繰り返しますが、小学生のうちはあらゆる側面で親のサポートが必要になります。
特に入試日や受験科目などの受験情報は親子でしっかり共有しておいてください。
子ども一人だと日程や科目を勘違いしていたり、併願スケジュールがよくわかっていなかったりなど、受験情報の把握が甘いおそれもあります。
このあたりは親子できちんと情報共有を行い、志望校・併願校の日程はいつか、それぞれの受験科目は何か、細かく確認しましょう。
こうした受験情報を親が確認してあげると、小学生の子どもにとっても安心感が高まります。
日々の学習状況は細かく把握しておく
小学生の場合、日々の学習状況も親子できちんと共有しておくべきでしょう。
具体的にどの科目が苦手なのか、どの分野で成績が伸び悩んでいるのかなど、親のほうでも詳しく把握し、必要に応じてアドバイスをしたり塾に相談したりなど、適宜サポートを行いましょう。
もちろん、高校受験や大学受験でも親が子どもの学習状況を知ることは大切ですが、中学生や高校生はある程度自分で物事を判断しますし、親の関与を嫌がる場合もあるため、頻繁に親子で学習状況を共有するわけではありません。
一方で、小学生のうちは成績に関して親がサポートしてあげたほうが子どもも安心します。
このあたりの距離感は一般的に中学生や高校生と異なりますので、過干渉にならない程度に日頃から学習状況を確認し、必要なサポートをしてあげてください。
体調面の管理もしっかりしましょう!
小学生のうちは、一人で体調管理がうまくできない場合もあります。
小学生はまだ体も小さく、体力的に受験勉強が負担になってしまう子どももいます。
それでも無理して日々を過ごした結果、あるとき体調を崩してしまうことも少なくありません。
そうならないよう、お子さんの体調面の管理も親がしっかり行う必要があります。
栄養バランスのある食事を用意したり、家全体で規則正しい生活リズムを作ったりすることはもちろん、子どもが体力的に無理をしていないか確認し、必要に応じて休ませてあげることも大事です。
<高校受験>勉強の他にもサポートすべきポイント!
中学生は子どもによって対応が大きく変わることを理解しておこう
中学生は本格的な思春期を迎えることもあり、子どもへの対処が難しくなる時期と言えます。
子どもによって性格も大きく異なり、まだ小学生のような人懐っこさが残る子もいれば、急に大人びてしまう子もいます。
人懐っこい子どもであれば、親が勉強に関していろいろ関与してもあまり抵抗はないかもしれません。
一方で、急に大人びた対応をする子どもの場合、とにかく親の関与を嫌がる場合もあります。
子どもの性格によって対応が大きく変わる形になり、何かとデリケートで難しい時期になるでしょう。
まずはお子さんの性格を冷静に分析し、どの程度のサポート・関与が必要なのか見極めていくことが大事です。
高校受験のうちはまだ親が関与してサポートしていこう
大学受験の場合であれば、大学も進路も高校生の子どもが中心に決めることになるかと思います。
一方で、高校受験の場合はまだ親の関与も多く、志望校や進路などを親子で決めていく機会も多いでしょう。
子どもが親の関与を嫌がっているからといって、高校生並みの距離感で接して良いのかどうか、判断が難しくなることもあります。
ただ、志望校の情報や入試日などの受験情報の共有、学習状況の定期的な把握など、ある程度細かくサポートを行ったほうが良いでしょう。
小学生よりは自分で判断できる時期ですが、それでも高校生ほど一人で判断できるとは限りません。
いくら大人びた対応に見えても、中身は中学生ですし、まだ親ができるサポートも多いはずです。
この点もぜひ意識していただき、適度な距離感をつかみつつ接してあげてください。
不安定な時期だからこそメンタルケアをしっかりとしてあげよう
思春期で特に不安定な時期だからこそ、親としてメンタルケアもしっかり行うことが大事です。
勉強面でもメンタル面でもサポートが必要な子どももいれば、勉強面よりメンタル面のほうでケアが必要な子どももいます。
思春期が本格化すると、小学生より不安定な精神状態になりやすく、小学生とは違った意味で対応が難しい時期にさしかかります。
特に受験期であれば尚更、勉強や将来に対する不安も生まれやすいでしょう。
適度な距離感も意識しつつ、相談に乗る、そっと見守る、声かけをするなど、必要に応じた対応策を試行錯誤しなくてはなりません。
こうしたメンタルケアは、当然ながら塾や学校というより親御さんが行ってこそ意義があるサポートです。
<大学受験>親がサポートする場面と意識しておくべきポイント
子どもの選択を応援する立場としてサポート!
大学受験となると、高校生が自分の判断で進路を決め、自分の判断で志望校・併願校を決めていく形になります。
もちろん親が全く関与しないとは言えず、時としてアドバイスも必要になりますが、基本的には親は子どもの選択を応援する立場となるでしょう。
だからこそ、親の価値観の押し付けは特に避けなくてはなりません。
親が良かれと思って何か意見を言っても、それが子どもにプレッシャーを与えたり嫌な気持ちにさせたりすることもあります。
もちろん中学受験や高校受験でも親の価値観の押し付けは好ましくありませんが、子どもが一人で判断する機会が多い大学受験では特に、価値観の押し付けは避けるという点を意識する必要があります。
子どもの選択を応援することを基本とし、必要があればアドバイスを行うなど、より距離感を意識した対応が重要になるでしょう。
大人として接することも大事
高校生というのは、子どもなのか大人なのかわからない時期とも言えます。
いつまでも子ども扱いされたくないと強く感じる高校生もいる一方、まだ子ども扱いしてしまう親もいるでしょう。
このあたりの距離感は難しいですが、時には同じ大人として接することも大事です。
特に大学受験やその先の進路であれば、高校生も一人の大人として自分の道を決めていく段階と言えるでしょう。
同じ大人の選択として、その意思を尊重することも重要になるわけです。
その点、大学受験における高校生は小学生や中学生とは大きく異なり、親の関与やサポートも必然的に変わってくるはずです。
ただ、繰り返しますが、親が何も関与しないというわけにはいきませんし、特に子どものメンタルケアは親が率先して行うべきでしょう。
高校生であれば学習面は自分一人でできるとしても、メンタル面で親からサポートがあると心強いはずです。
もちろん過度に子ども扱いするのは避けるべきで、同じ大人として接したり相談に乗ったりすることも大事ですが、放置・放任とは違うという点は意識しておきましょう。
子どもの選択は尊重しながらも時には軌道修正や指摘も必要!
子どもの選択は尊重しつつも、時には軌道修正や指摘が必要になることもあります。
いくら高校生とはいえ、全ての子どもが常に最適な選択ができるわけではありません。
お子さんが決めた進路でも、親としてちょっとどうかと思う場合もあるでしょう。
そんなときは軌道修正や指摘をすることも重要であり、完全な放任というわけにはいきません。
また、お子さんが受験勉強に行き詰っているときも、勉強のやり方などを見て、親として指摘できるところは指摘してあげましょう。
当然ながら、勉強というのはただ進めれば良いわけではなく、成績が伸び悩む場合はやり方を見直すことも重要です。
ただ、勉強をしている本人が自分のやり方を客観視するのは難しく、一人だと状況の改善が進まない場合もあります。
そこで、親が客観的に子どものやり方を分析し、冷静な視点で問題点を指摘することも大切になるわけです。
もちろん、勉強のやり方に関しては塾などの専門機関のアドバイスも重要で、親のやり方や意見だけを押し付けるわけにはいきません。
ただ、親ならではの視点で子どもの問題点を把握し、客観的に指摘できる場面もあるはずで、そのようなサポートを望む子どもも多いのです。
こうした軌道修正や指摘も、親ができるサポートとして意識する必要があります。
まとめ
今回は、受験生がしてほしいと思っている親のサポートについてお話ししていきました。
受験における親子の距離感は非常に難しい話で、親が関わらないわけにはいかず、一方で過剰に関わりすぎても逆効果となり、適度な距離感をつかむ必要があります。
一方で、家で勉強しやすい環境を整える、規則正しい生活リズムを作る、学習面だけでなくメンタル面でのサポートも行うなど、親が受験生にしてあげられることはたくさんあるのです。
これらは過度な干渉ではなく、多くの受験生が親に望むサポートでもあります。
また、受験といっても中学受験・高校受験・大学受験で親の関与する内容は変わります。
特に中学受験は小学生が行うため、日々の体調管理、受験スケジュールの調整なども含め、親が関わる機会は多いでしょう。
一方で、高校受験の場合、中学生は思春期が本格化することもあって距離感をつかみにくいかもしれませんが、お子さんの性格を冷静に分析し、メンタルケアも含めて必要なサポートを試行錯誤する必要があります。
さらに、大学受験の場合でも親が全く関与しないというわけにはいかず、お子さんの選択を尊重しつつ、必要に応じた軌道修正や指摘、メンタルケアなど、親だからこそできるサポートは多いです。
これらの点も含め、親としてできるサポートを行い、受験生を支えていきましょう。