中学受験の勉強において、通塾をしている期間に一部の生徒がカンニングをしてしまうケースも残念ながら見られます。
特にテスト中のカンニングは完全な不正行為であり、毅然と注意しなくてはなりません。
一方で、そもそもカンニングに意味はないこと、カンニングをしても学力が伸びるわけではないことなど、理屈で理解させることも大切です。
また、なぜカンニング行為に走ってしまったのか、その背景を知ることも必要でしょう。
この記事では、塾講師の経験から中学受験の勉強における子どものカンニングについて、その対処法など、様々な観点からお話ししていきます。
目次
子どもがカンニングをしてしまうケースとは?
残念ながら、中学受験の勉強において、一部の受験生がついカンニングをしてしまうケースはあります。
カンニングといってもパターンは様々で、宿題の問題演習でつい解答を見て写してしまうなどの軽度なものから、テスト中にカンニングを行うなど、いろいろな例が見られます。
カンニングは基本的にテスト中の不正行為を指しますが、宿題の問題演習でチラッと解答を見て丸写ししてしまうような行為も、広い意味でカンニングに含まれると言えるでしょう。
いずれにせよ、こうした行為は受験勉強として不適切になります。
特にテスト中のカンニングは完全な不正行為ですので、倫理観的な意味でも毅然と注意しなくてはなりません。
また、問題演習で解答を丸写ししても学力はまず伸びませんし、勉強として正しい行為とも言えません。
自分のお子さんがカンニング行為をしたとき、親としてはショックを受けるかもしれませんが、叱るべきところは叱り、冷静に対応する必要があります。
我が子のカンニングが発覚するきっかけは?
塾から報告を受けた
塾で実際にカンニングしていたのを講師が発見した場合、塾から親のほうに報告が行くかと思います。
例えば、日々の小テストでテキストやメモを見ながら解答していた、明らかに他の生徒の解答をのぞき見していたなど、様々なケースが考えられます。
テスト中のカンニングは、試験監督が多くいる大規模なテストというより、日々のふとした小テストなどで発覚することが多いです。
小テストで監督の先生が一瞬いなくなったタイミングで、引き出しに入れたテキストを見ながら解答するなど、いろいろなケースが見られます。
いくら小テストとはいえ、監督の先生が全くいないわけではなく、やはりカンニングは発覚することが多いでしょう。
こうしたケースで塾からカンニングについて報告を受けた場合、親としてはショックも大きいかと思いますが、まずは冷静にお子さんと話し合い、不正行為に関してきちんと注意しなくてはなりません。
*注意の仕方のポイントについては後述します。
子どもが自らカンニングしてしまったと報告
子どもが自分からカンニングしてしまったと報告する場合もあります。
いくら子どもとはいえ、カンニングはダメだという自覚はどこかにあるはずですし、罪悪感から正直にカンニングを認め、謝ってくることもあります。
もちろん、このような場合でも、カンニングに関してはきちんと注意しなくてはなりません。
ただ、子どものほうから正直に謝ってきたことは、親のほうでもしっかり認めてあげることが大事でしょう。
解答を丸写ししているのを親や講師が見てしまった
先ほど述べたように、テスト中の不正行為とは異なりますが、自習や宿題の問題演習でつい解答を丸写ししてしまう行為も、広い意味でカンニングと言えます。
その場面を親や講師が見てしまった場合、やはり注意が必要になります。
テストの不正行為と異なるとはいえ、問題演習における解答の丸写しは勉強として正しい行為ではありませんし、それで実力が伸びるわけでもありません。
特に解答の丸写しは癖になってしまう子どもも多く、それで問題を解けた気になってしまうケースも見られます。
これでは一向に学力は伸びませんし、なるべく早い段階で意識を変えてもらう必要があります。
繰り返しますが、テスト中の不正行為とは異なりますが、広い意味でカンニングとも言える解答の丸写しをしないよう、しっかり注意が必要です。
我が子がカンニングしてた!その時に親はどう対処すればいい?
まずは冷静になってきちんと注意すること
お子さんがカンニングしてしまった時は、なぜカンニングをしてしまったのか、正直に話してもらいましょう。
そのうえで、カンニングはいけないことだという点をしっかり伝えなくてはなりません。
特にテスト中のカンニングは完全な不正行為であり、塾のテストだろうと学校の試験だろうと、決して許されるものではありません。
もちろん、入試本番でカンニングが発覚すればテスト結果は全て無効になります。
それまで積み重ねた受験勉強が全て無駄になり、カンニングの代償は非常に大きなものとなるのです。
このように、テスト中のカンニングは完全な不正行為であり、発覚すればそれまでの努力までもが無駄になってしまうことを教え、二度としてはいけないと伝えてあげてください。
また、テスト中の不正行為と異なりますが、問題演習における解答の丸写しに関してもきちんと注意しましょう。
先ほども述べた通り、解答の丸写しは勉強として正しいとは言えないこと、丸写しをしても結果に結びつかないことなどをしっかり教え、注意する必要があります。
カンニングをしたところで学力は上がらないことを教える
カンニングを注意する際には、そもそもカンニングには何も意味がないことも伝えてあげてください。
ただ不正行為だからダメだ、あるいは丸写しはいけない、と伝えるだけでなく、そもそもカンニングは何も生み出さないことを理屈で理解させることも大事です。
カンニングをしたところで学力が上がるわけがないですし、カンニングによって模試などで高得点を取ってもそれは自分の実力ではありません。
本当の実力が伸びなければ合格は難しく、受験勉強として考えてもカンニングに意味など何もないのです。
この点について以下、詳しくご説明します。
テスト中のカンニングの場合
まず、テスト中のカンニングを例に考えてみましょう。
繰り返しますが、カンニングによってテストの結果が良かったところで、当然ながらそれは自分の実力ではありません。
カンニングをして高得点をとっても、自分の力だけでどこまで点数が取れるのかは未知数です。
これでは自分の実力が客観的にわからなくなり、学力レベルに沿った対策もできなくなり、受験勉強どころではなくなります。
そもそも受験勉強というのは、自分の学習状況や学力レベルを正確に把握してこそ成り立つのです。
どこを補強すれば良いのか、どこを重点的に対策すれば良いのか、自分に足りないところは何かなど、客観的に正確に把握してこそ、「何を勉強すれば良いのか?」という勉強の方向性が決まるわけです。
そのためにも、しっかり自分の実力でテストや模試を受け、その結果を分析し、自分が対策すべきところを把握しなければなりません。
しかし、カンニングで高得点をとった場合、どこまでが自分の実力なのかがわからなくなります。
カンニングをしたテスト結果を分析したところで、自分の本当の実力の分析や把握にはなりません。
その結果、学力レベルに応じた対策ができず、受験勉強として成り立たなくなるというわけです。
こうした点をしっかり説明し、テスト中のカンニングは完全な不正行為であることに加え、そもそもカンニングをしたところで意味など何もないことを理解させる必要があります。
解答を丸写ししていた場合
繰り返しになりますが、自習の問題演習などで解答を丸写しする行為は、テスト中の不正とは異なります。
しかし、勉強として正しいとは言えないため、この点をきちんと伝えなくてはなりません。
そもそも問題演習というのは自力で解いてこそ意味があるのであり、間違えた問題はしっかり復習や解き直しを行い、それが実力のアップにつながるわけです。
しかしながら、解答の丸写しはこの過程を壊してしまうものであり、勉強として正しいことではないのです。
自習での問題演習はテスト・模試とは異なりますが、間違えた箇所を確認し、そこから対策につなげるという点は同じです。
だからこそ、丸写しなどせず自分の実力だけで問題演習を進め、しっかり答え合わせを行い、間違えた箇所を正確に把握して対策する必要があります。
このような点をしっかりと話して、解答の丸写しは問題演習として効果的でないことを伝えましょう。
受験生がカンニングをしてしまう原因と理解しておくべき背景
お子さんのカンニングが発覚した場合、きちんと注意することはもちろん重要ですが、同時になぜカンニングをしてしまったのか、その背景も理解しておくことが大事です。
テストで高得点を取らなくてはならないというプレッシャーからカンニングをしてしまうケースもあるため、この場合はプレッシャーを軽減させるなどの対処法も必要でしょう。
以下、カンニングをしてしまう原因についてもお話ししていきます。
高得点を取らなくてはならないというプレッシャーが原因の場合
受験勉強をしていれば、テスト・小テストや模試なども増えます。
そこで高得点を取りたいと思うのは当然と言えば当然ですが、子どもによっては大きなプレッシャーを感じる場合もあります。
極端に高得点を取らなくてはいけないと思いすぎると、気持ちも不安定になり、ついついカンニングをしてしまったなどのケースもあります。
また、高得点を取って親から褒められたい、高得点を取って親を満足させてあげたい、低い点数で親から叱られたくない、低い点数で親を悲しませたくない、などの思いが強い子どももいます。
特に高得点で親を満足させたい、低い点数で親を悲しませたくない、と考える子どもは、その考え自体は純粋に親を思う気持ちであり、決して悪いことではありません。
また、高得点を取って親から褒められたい、低い点数で親から叱られたくない、という気持ちも、子どもの考えとしては何ら不思議ではないでしょう。
ただし、こうした思いが強すぎるあまり、何かのきっかけでカンニングに走ってしまうようなことは避けなくてはならないのです。
このようなケースは親としても非常に悩みどころになるかと思いますが、変にプレッシャーを感じる必要はないことを伝えてあげてください。
子どもが高得点を取るのは親としても嬉しいことですが、だからといってカンニングで高得点を取る必要はないこと、それはいけないことだという点、そもそもカンニングは勉強的にも意味がないことなど、しっかり教えてあげましょう。
また、親が何度も「高得点を取りなさい」と言い続けていたような場合、子どもにとってもプレッシャーが大きくなります。
そのようなプレッシャーがお子さんのカンニングの原因になってしまった可能性もあるため、高得点を取ることばかり強調していなかったかどうか、日頃の親子のコミュニケーションについても見直してみると良いでしょう。
本来、中学受験勉強はテストや模試で高得点を取るのが目的ではない!
そもそも受験というのは、入試本番で結果を出せれば良いのです。
普段のテストや模試はあくまで受験勉強の一環であり、そこで高得点を取ることが受験勉強の目的ではありません。
確かに高得点を取れば子どもも親も嬉しくなると思いますが、テストや模試の目的はあくまで自分の実力を正確に把握することなのです。
緊張感のある空間で問題を解き、その結果から自分の現時点での実力を知り、どこを対策すれば良いか、勉強の方向性を考えるためのものです。
何も高得点を取ることがテスト・模試の目的ではないですし、ましてやカンニングをしてまで高得点を取る必要などありません。
お子さんが高得点にこだわりすぎてカンニングをしてしまった場合、こうした話も親から伝え、テストや模試の本来の目的を知ってもらいましょう。
楽をして高得点を取りたいと思っていた場合
受験勉強が面倒になり、楽をして高得点を取りたいと思ってしまう子どももいます。
成績が上がらずモチベーションが下がってしまい、楽をして高得点を取りたいと考えるあまり、ついついカンニングしてしまうようなケースです。
この場合は、とにかくカンニングはいけないということ、テスト中のカンニングは完全な不正行為であることを中心にしっかり注意してあげてください。
さらに、カンニングは勉強として何も意味を為さないこと、楽をして高得点を取るという考えは捨てる必要があること、そもそもテスト・模試で高得点を取るのが目的ではないことなど、同時にしっかり理解させる必要があります。
そのうえで、成績が上がらないことの悩みや、モチベーションが下がってしまった理由など、お子さんの話もしっかり聞いてあげましょう。
ただ叱るだけでなく、なぜ楽をして高得点を取りたいと思ってしまったのか、その背景を知ることも大事です。
不安を紛らわすために解答を丸写ししてしまった場合
不安を紛らわすために、自習や宿題の問題演習でつい解答を丸写ししてしまうケースもあります。
問題を間違えることを過度に恐れ、間違えたくないあまり、最初から答えを見てしまうようなケースです。
また、解答を丸写しして自分で丸付けをすることで、一瞬でも正解できたような感覚を味わう場合もあるようです。
自分の力で解答したわけではありませんが、少しでも正答できたような感覚を味わいたい、そんな思いもあるのでしょう。
こうした解答の丸写しは癖になってしまうこともあり、これでは問題演習の意義が薄れ、学力が伸び悩む要因にもなります。
この場合、いくら不安でも問題演習で解答を丸写しすることに意味はないこと、自力で解いて間違えた問題を復習してこそ意味があることなど、まずはしっかり伝えてあげてください。
また、不安を軽減したいのなら、少し気分転換の時間を増やす、親子で一度話し合って問題点を洗い出すなど、他の方法を試す必要があります。
また、お子さんが問題を間違えることを過度に恐れている場合、あまりに高い正答率にこだわりすぎている場合など、別に間違えることは何も悪くないと教えてあげてください。
むしろ勉強というのは、「問題を間違えたあと、どう対処するか?」のほうが重要なのです。
間違えた箇所を把握し、どこの知識が足りなかったのか、どこを間違えて覚えていたのかなど、しっかり確認して復習することで、学力は少しずつ伸びていきます。
問題を間違えること自体が悪いわけではなく、間違えた箇所をしっかり復習することは、むしろ実力アップにつながるチャンスでもあるのです。
このような点もお子さんに伝え、自力で解いてこそ問題演習の意味があることを強調してください。
子どもが塾でカンニングをしている子を見た!といったらどうフォローする?
最後に、塾でカンニングしている子をお子さんが見てしまった場合についても触れておきます。
他の生徒がカンニングしている場面を見てしまった場合、お子さんとしては非常に複雑な気持ちになるかと思いますが、親としてもうまくフォローすることが大事です。
子どもから他の生徒のカンニングについて知らされた場合
お子さんから他の生徒のカンニングについて知らされた場合、まずはその話をしっかり聞いてあげてください。
その際には、お子さんの話に不自然な点がないかどうかも確認しておきましょう。
嫌な話ですが、子どもが嘘をついている可能性もないわけではありません。
子どもが他の生徒を貶めるために嘘をつくというケースも残念ながら考えられます。
こうした例は少ないとは思いますが、親としてはあくまで冷静に話を聞いてあげることが大事です。
そのうえで、そのカンニングがテスト中の不正行為だった場合、一度塾に報告し、相談してみると良いでしょう。
一方、他の生徒が自習の問題演習で解答を丸写ししていたのを見たなどのケースであれば、わざわざ塾に報告する必要はないでしょう。
しかしテスト中の不正行為はやはり問題ですので、一度塾側に伝えたほうが良いかと思います。
その際は、カンニングを発見したのが自分の子どもだという点を他言しないよう、頼んでおきましょう。
もちろん、塾側がカンニングの発見者を他の生徒や親に言うことは通常ないと思いますが、念のため、他言しないよう伝えておいてください。
やはりトラブルは避けたほうが良いですし、わざわざ自分から目立って報告する必要もありません。
塾に報告するにせよ、なるべくトラブルは避けるという方向で考えるようにしましょう。
カンニングはいけないという点を改めて伝える
他人のカンニングを目撃してしまうと、お子さんとしても非常に複雑な気持ちになるかと思います。
嫌な話ですが、お子さんが「自分もカンニングしてもいいのかな?」などと考えてしまう可能性もあるのです。
そのため、カンニングはいけないという点を改めて伝えておきましょう。
先ほど触れたように、テスト中のカンニングは完全な不正行為である点、カンニングをしても勉強として意味がないことなど、きちんと話をしてあげてください。
もちろん、疑うような言い方は絶対に避けましょう。
このケースは実際にお子さんがカンニングをしたわけではないので、一般論としてカンニングはダメだという点を伝えるだけにとどめ、きつい言い方にならないよう注意が必要です。
まとめ
今回は、中学受験勉強とカンニングについてお話ししていきました。
残念ながら、一部の受験生がカンニング行為をしてしまうケースは見られます。
問題演習における解答の丸写しといった軽度のものもありますが、テスト中のカンニングという完全な不正行為も見られ、親や講師としては毅然と注意しなくてはなりません。
また、お子さんがカンニングをしてしまったとき、ただ注意するだけでなく、そもそもカンニングに意味はないという点を理解させることも重要です。
カンニングによってテストや模試で高得点を取ったところで、それは本当の実力ではなく、その試験結果を分析しても自分の学力を正確に把握することはできません。
どこが苦手なのか、何を対策すれば良いのかがわからなくなり、受験勉強として意味がなくなってしまうのです。
また、問題演習における解答の丸写しはテスト中の不正行為とは異なりますが、勉強として正しいとは言えないでしょう。
やはり自分の実力で問題演習を進め、間違えた箇所を正確に把握し、次につなげるという過程が重要になります。
一方で、なぜカンニングをしてしまったのか、その背景を考えることも必要です。
過度に高得点にこだわりすぎている場合、良い点を取らなければいけないというプレッシャーがある場合、不安を紛らわすために解答の丸写しが癖になっている場合など、いろいろな背景があるかと思いますので、お子さんとしっかり話し合い、対処法を考えていきましょう。
こうした点にも注意しつつ、不正をすることなく正攻法の勉強で受験を乗り切るよう、お子さんに働きかけてみてください。