日本の英語教育は、今、大きな転換期にあり、子ども達には、「4技能」全てを重視した高度な運用力が求められるようになります。
2020年度からは、小学校での英語必修化(3年生)・教科化(5年生)も決定しており、以前にもまして、多くの親御さんが英語の早期教育に関心を持ち始めています。
英語の早期教育の是非は、よく取りざたされていますが、言語学習においては、3歳ごろがひとつの区切りになると言えます。
この時期までに、本当に有効な部分と、後に勉強して伸ばしていくことが可能な部分についてしっかりと見極めながら、それぞれのご家庭でお子さんが楽しく効果的に英語習得を続けていける環境を作る工夫をご紹介します。
目次
なぜ英語学習で早期教育は必要なのか?
言語学習には、4技能〔=リーディング/ライティング/リスニング/スピーキング〕という言葉もある通り、様々な側面がありますね。
ここでは、まず、それぞれの面で、学習に適切な時期が異なる、ということを認識しておくことが必要です。
英語の早期教育が推奨される理由
言語習得など、ある事柄に対して、一定の年齢を過ぎると、対象の習得がきわめて困難・不可能になってしまうという仮説があり、このリミットの年齢を「臨界期」としています。
バイリンガルであることをどのレベルで定義するのかにもよりますが、早期教育に非常に大きなメリットがある分野、「音声に関わる部分」について、今回みていきましょう。
現在でも、3歳までに特別な英語教育を受けていなくても、バイリンガルの人は大勢いますが、どんなに流暢な人であっても、「音声」についての影響は避けられるものではありません。
これは、発音だけでなく、リスニングの能力にも関わってきます。
赤ちゃんのうちからの英語教育が推奨されている、もっとも大きな根拠となっているのも、ここの部分です。
3歳を過ぎると英語の習得が困難になる
3歳を過ぎても、この頃に習得できたはずの結果に近づけていくことは可能ですが、非常に多くの努力を要しますし、まったく同等の結果を得ることはできません。
よって、音声面に限って言えば、3歳ごろまでの《臨界期》は「ある」といえるのです。
幼い頃には、誰もが言われた言葉を、何の苦もなく、そっくりそのまま繰り返すことができる音の聞き取りに大変優れた素質をもっていて、よく「耳の黄金期」などと呼ばれています。
この能力は、1歳ごろには急速に失われていき、日常の環境で聞く機会のない音・母語の音にない音は、必要ないものとして、聞き取れなくなってしまいます。
日本語より英語の音素が多い!日本語と英語の違いも習得の難しさの要因に
特に、日本語と英語は、周波数も全くかぶる事なく、母語である日本語は、非常に少ない音素から成り立っていますが、英語の音素は非常に多いという特徴があります。
このため、日本人が英語を学ぼうとすると、英語の音に慣れることから大変になってしまうのです。
また、3歳~10歳頃までは、(よほど本人に強い興味関心がある場合は別として、)「英語=学習するものだ」という心理的壁を作ってしまう上に、集中力も思考力もまだあまり発達していないため、実は、あまり言語学習を新たに始めるのに適切な時期だとは言えないようです。
具体的な英語環境の作り方
日本では、EFL環境〔=英語を公用の一つや、第二言語という位置づけではなく、外国語として学習するものだと位置づけられている環境〕ということもあり、日常生活の中で、英語を頻繁にきいたり、話したりする環境とは言いがたいものがあります。
そこで、この母語と外国語という意識が生まれる時期までに、家庭の中でひとつの言葉として自然に触れる環境を用意し、子どもの日常の中に英語に親しむ時間を習慣化してしまうのが望ましいといえます。
英語に触れる時間をたくさん作る
子どもの母語での言語発達は、ご存知の通り、最初に「聞く」ことから始まって、ある程度音声を聞き貯めたころにやっと「話し」始めます。
子どもが小さければ小さい程、耳の能力は残っており、音に対する順応性が高いので、たっぷり聞く時間をつくるようにしましょう。
もちろん、よく言われるように、週に一度の英語教室やサークルでは、何も身に付きません。
言語学習は、インプットする量が不足すれば、時間とお金だけ費やす事になってしまいますので、この時期はぜひ、”日常”を一つのキーワードとして捉えてください。
できるだけ自然な言語発達にそって学ぶという意味では、自発的な発語は強制せずに以下のような取り組みをお勧めします。
細切れ時間に、歌や絵本を、CDを使って音声と視覚の両方で楽しむ
ぜひ意味や内容も、言葉と一致させながら進めていきましょう。
歌やお話などの聞き流しは1歳までで、その後は内容を理解も合わせてガイドしていくことが望ましいです。
絵最初に与える絵本は、グレイデッドリーダーズを中心にして、同程度の絵から内容が分かるようなものを選んでいくと効果的です。
グレイデッドリーダーズには、知的好奇心にあわせて、お話だけでなく理科や社会などに関連して色々な種類のものがあります。
フォニックスで、音と文字に対する意識を培う
ゲーム感覚で遊ぶようにすると、2歳くらいから楽しめます。
podcast等で短いお話を沢山聞く
体操・料理番組・アクティビティ系の番組をYouTubeなどで楽しんでも良いと思います。
聞かせることがポイントです。
DVDを使うときには、英語字幕で見てみる
ある程度、理解できるようになってからDVDは取り入れるほうがよいでしょう。
日常の中で子どもと一緒に英語を楽しむ
私たちは、それぞれ音声優位・視覚優位・動作優位のどれかが強い傾向があり、場合によっては、これらを組み合わせて、いろいろなことを理解していると言われています。
お子さんがどの感覚優位か観察しながら、上手に活用して、日常の中で一緒に楽しむ時間を作りましょう。
その後の英語学習への影響
文法面や単語の暗記などについては、目的にあった学習法でしっかり学んでいけば母語が完成し、論理的な思考能力がついた後の年齢で開始しても飛躍的に延びる可能性が高い分野です。
子どもの日常会話には、複雑な文体はあまり必要ではありません。
大人になって「教養ある、年齢相応の言語」として英語を捉えるならば、これらももちろん不可欠な分野なので、(学習に適した「敏感期」が、10歳~と異なるだけなのです。)決して、コミュニケーションに必要ないから学習の比重をへらしていい、という意味ではありません。
まだ母語・外国語の区別がない時期に、英語の音声に慣れ親しみ始めていれば、その後、絵本などで徐々に単語などを増やしつつ、それぞれの子の適正や得意な事、興味のある事に英語を取り入れるようにしていく際にも、子どもが壁を感じることはあまりないと思います。
5年生以降で、学習要素が入ってきても、国語の単語暗記や漢字学習、文法や文章の構造を学ぶと同じような感覚で、結局は”言葉だ”と捉える事ができるのは、その後の伸びに大きく影響するとても大切な事です。
まとめ
言語学習の心理的な成功要因は、”楽しいこと”・”習慣として継続できること”、につきます。
音声からの自然な言語発達を促す素地を、ぜひ幼いうちに作ってあげたいですね。