子供の成長や教育に関するキーワードに「9歳の壁」という言葉があります。
小学校3年生〜4年生の子供たちが直面する、さまざまな困難を表す言葉なのですが、小学校3年生や4年生といえば、中学受験の本格的な準備をはじめる子供たちが増える時期でもあります。
またこの時期は、目で見て単純に理解できる今までの学習から抽象的な学習(算数でいえば分数やXなどの文字を使った学習)への変化にうまく対応できず、頑張りたいという気持ち自体が萎んでしまう子供たちが増える時期でもあります。
「9歳の壁」という大きなハードルを越えていける気持ちの強い子に育てるためには、この時期の子供とどう向き合うべきなのか、正しく理解しておきましょう。
目次
9歳の壁とは
子供たちが9歳前後に直面する大転換期
9歳前後、子供たちは大きな転換期を迎えます。
自分中心の主観的な世界から飛び出し、自分とは違う他者の存在を意識できるようになり、客観的、さらには抽象的な思考を身につけていきます。
はじめて自分と他者の違いを認識するようになるこの時期は、感情と認識の折り合いがうまくうけられないことも多く、子供たちは大きな不安とストレスにさらされることになります。
誰もが成長の段階で必ず直面する、この時期のさまざまな問題のことを「9歳の壁」と呼びます。
もともと「9歳の壁」は学習上の困難さを表すために使った言葉
もともと「9歳の壁」は、東京教育大学付属聾学校長の萩原先生が、聾学校の子供たちの学習上の困難さを表すために使った言葉で「小学校低学年(9歳頃)までは健聴児と同じように発達するが、高学年になってくると学習が具体的なものから抽象的な内容になるため、学習面や言語面の発達において乗り越えられない壁につきあたることが多い」という内容でした。
しかし現在は、聴力に障がいのある子供たちに限らず、9歳前後のすべての子供たちが直面する、成長過程においる困難を指す言葉として使われるようになっています。
9歳の壁はすべての子供が必ず直面する困難。ただし時期にはかなりのばらつきがある
9歳の壁を乗り越え抽象世界への飛躍を達成する時期には、大きな個人差があります。
4月生まれで壁を越えるのも早い子と、3月生まれで壁を越えるのが遅い子では、達成する時期が2年以上開くこともありえます。
しかし、9歳の壁はすべての子供が直面し、そしてかならず乗り越えていく困難です。
親が急かしても、早く越えられるというものではないので、焦らず見守ってあげましょう。
「子供が9歳の壁を越えていない」と感じた時に取り組むべき学習
低学年の具体的で目で見て理解することができた学習から、3年生ころからは徐々に抽象的な思考や論理的な思考を必要とする学習へと移行していきます。
この時期、なかなか9歳の壁を越えられない子供たちは成績を急に落としてしまうことがあります。
そんな壁を越える前の子供たちにはどんな学習が適してりのでしょうか。そして、壁を越える助けになるような学習はないのでしょうか。
壁を越える前の子供たちに適した学習
抽象的な思考を身につける前の子供たちは、写真記憶(映像記憶)としてものを覚えていくとわれています。
論理的な理屈とわざわざ結びつけたりしなくとも、どんどん記憶できる時期ということは、漢字、理科や社会の暗記学習にむいているということになります。
のちのちどうせ必要になるそれらの暗記を、この時期に進めてしまうのがおすすめです。
壁を越える前の先取り学習は危険
9歳の壁を越える前の子供たちに先取り学習をさせるのは危険です。
理解が不十分なまま(学習に穴がある状態で)知識を積み上げてもいずれどこかで崩れてしまいます。
算数の先取りや、論理的な思考が必要になる小論文などの学習は、焦らずお子さんの様子を見ながら徐々に進めましょう。
子供たちが壁を越える手助けになる学習
9歳前後は漢字の学習がある程度進んで、読める本の種類がぐっと広がってくる時期でもあります。
子供たちには読書をとおして、自分の周りの狭い世界とは全く異なった世界を味わい、楽しむ経験をたくさんしてほしいなと思います。
そのような経験を積み重ねることで、子供たちは客観的な視点を少しずつ獲得していきます。
9歳の壁を越えるために、親が子供にしてあげられること
子供の成長を焦らず見守ることのほかにも、親が子供にしてあげられることはたくさんあります。
子供の努力している姿勢を評価する
たとえ思うように学習の結果がでなくても、子供がきちんと学習を続けているならその努力こそを評価しましょう。
この時期、結果が得られた時しか褒めてもらえないと子供が思い込んでしまうと、失敗を必要以上に恐れるようになってしまいます。
結果だけでなく、そこまでの過程も同じぐらい大切だということを、お子さんにはぜひ伝えてあげてほしいと思います。
親離れを促す
客観的な視点や抽象的な思考力を手に入れるためには、子供たち自身が親がかりでない、自分だけの価値観や世界観を手に入れることが必要になります。
子供の自立の兆しを感じたら、多少危なっかしくとも子供の問題にあれこれ関わらず、見守りましょう。
小学校の低学年のうちなら、お友達とのトラブルも、大人が介入して解決するのもよくあることだと思います。
しかし、3年生になったら、大きなトラブルになってしまう前にと先回りして、親が問題の芽を摘んでしまうことは避けるようにしましょう。
自分で問題を解決させる
「努力の評価」にももつながりますが、子供に問題が生じたときは、親が先回りしてあれこれ解決方法を教えてしまうのではなく、子供自身にどうするべきかを考えさせましょう。
「あなたから先に謝ってしまいなさい」「そんなことじゃうまくいかないわよ」などの助言はぐっと我慢して、「あなたはどうしたいの?」「どうするべきだと思うの?」と、自分自身で問題を解決するよう促しましょう。
もう子供扱いはしない、あくまで子供の判断を尊重する姿勢をみせていきましょう。
手は出さない。でも、いつも見守っているということを伝える
自分だけの世界観を獲得しようとしている子供は、親との距離を急にとるようになったりしますが、だからこそ、これまで以上に親の愛情と理解を求めています。
「いつも気にかけているよ」という姿勢をみせて、子供が安心して外の世界に目を向けられるよう背中を押してあげましょう。
失敗も大切な経験
この時期、失敗や挫折を経験せずに過ごしてしまうと、何かに躓いた時、問題ときちんと向き合わないまま逃げ出してしまったり、失敗からなかなか立ち直れなくなってしまうことがあります。
失敗も大切な経験です。
失敗したことは責めず、その失敗を乗り越えていける強さを身につけられるよう、子供の一番の味方として応援していきましょう。
9歳の壁にむけて
いかがだったでしょうか。
お母さんにはぜひ、9歳の壁をお子さんが成長するためのチャンスとして前向きにとらえていただきたいなと思います。
[…] 出典:チャイビ […]