塾で指導していた時の経験から言えば、いわゆる偏差値の高いクラスの生徒であるほど、授業の際の忘れ物の数は目立って少なくなります。
もちろん、親御さんの方で忘れ物がないかどうかの確認をしっかりとして下さっている部分もあるのでしょうが、それだけではないでしょう。
一般的な言い方をすれば、勉強を頑張っている子ほど偏差値は高いでしょうし、したがって、勉強を頑張れる子どもたちは、基本的には忘れ物をしない傾向にあることを導くことができます。
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忘れ物をしない子どもの成績がいい理由
忘れ物をしないという事象から何を見出すのかということこそ重要なわけですが、いくつか挙げられるポイントのうち、特に重要なものは「自分に対する管理意識」というものです。
管理意識の高さが示すこと
どの学年の勉強に関しても言えることですが、一般的に精神年齢が高いほど勉強に対する素質があるということが言われます。
そして、精神年齢の高さを図るための一つの基準が、自分に対するスケジューリング、自分に対する管理意識の高さという点でしょう。
ただ、小学生段階のお子さんに対して、独力で自分の勉強カリキュラムをしっかりと計画しきることや、生活リズムを完全に整えることなどまでを求めるのは非常に酷なことでしょう。
生育段階を考えたときに、小学生段階でしっかりと管理意識があるかどうかを図るためのポイントは、「忘れ物をしないかどうか」という点に据えるのが良い塩梅ではないかと思うわけです。
明日塾がある。塾の授業で必要なものは〇〇である。それをカバンの中にしっかりと入れておく。
これだけの作業ではありますが、子どもにとってはこれが非常に難しい。
非常に難しいことですが、これができるということは「明日の塾において自分が置かれる状況」をしっかりと把握できているということです。
忘れ物をしない子どもは先々のイメージができている
明日の塾に必要なモノを用意することができるようになれば、「明日の塾までに必要な知識」も用意することができるようになります。
明日の塾で小テストがあるのならば、その小テストをクリアするために必要な知識を備える必要があると、独力で考え至るようになるでしょう。
明日のことがイメージできれば、ゆくゆくは明後日のことがイメージできるようになります。
明後日のことがイメージできる子は、来週のことを想像することができます。
そして、想像できる自分の未来をより明確なものとして自分の中に捉えることができるほど、その未来をできるだけポジティブなものにしようとすることができるようになります。
中学受験と勉強しない子供達でも説明しているように未来をイメージする力はとても大切なことです。
「忘れ物をしないこと」は単なるしつけではない
「忘れ物をしないこと」を、単純に躾のレベルだけで判断してはいけません。
忘れ物をさせてしまう親について、躾が行き届いていないというニュアンスだけで語られるかもしれませんが、現に忘れ物をしないお子さんが獲得している肯定的な未来と比較したときに、どれだけの規模のものを損失してしまっているかを想像して下さい。
とはいえ、全てのお子さんについて、初めから自分一人で忘れ物をしない状態を作り出すことができるわけがありません。
学校の先生なり、親御さんであるなり、どこかのタイミングで確実に持ち物を用意することについてしっかりと指導が入っているはずです。
それを体現できているかどうか、という点で差異があるわけです。
忘れ物をしない子の家庭環境に共通していること
さて、あくまで塾講師としての意見ですが、お子さんが忘れ物をする傾向にあるかどうかという点はご家庭での勉強に対する取り組み姿勢を図る要素の一つとして捉えています。
冒頭で述べた通り、偏差値の高いクラスのお子さんほど忘れ物をすることは少ないのですが、それはつまり、ご家庭にとっての塾に対する意識が大きいということを意味するのではないでしょうか。
お子さんが塾に行く直前に、しっかりとカバンの中身を確認してやる。親御さんの仕事の関係で直前の確認ができないのであれば、前日の段階で指導してやる。「親だって忙しいから」というような言い訳はできないはずです。
というより、偏差値の高いクラスのご家庭は、このような手間を、そもそも手間であるとは考えてはいないはずです。
塾では定期的に面談があるはずです。
その際に、お子さんの忘れ物について指摘をされた場合には、お子さんを通して、ご家庭の勉強に対する向き合う姿勢について疑問が提示されているのだという受け取り方をしていただいて結構です。
参考リンク:中学受験で難関校を目指す家庭に必要な8つの覚悟
最後に
ただ、もちろん、忘れ物をしないために親が完全に持ち物を用意するのでは意味がありません。
あくまでもお子さんが主体的に、あるいは独力で忘れ物をしない状況を作り出さなければ意味がありません。
忘れ物をしないことが終局的な目的なのではなく、忘れ物をしないお子さんを創りあげることによって、未来をイメージする力を確立することこそ本来的な目的だからです。