中学受験を経て入学したのち、成績が低迷し、成績下位の層からなかなか抜け出せない「深海魚」状態になってしまうことがあります。
当然ながら、中学校に入学後も勉強習慣は継続する必要があるのですが、残念ながら何らかの要因でモチベーションが下がり、勉強に身が入らず成績が伸び悩むケースも少なくありません。
特に私立の中高一貫校は勉強内容も難しいものが多く、「深海魚」状態を避けるためにはどうすべきか、疑問に思う親御さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、塾講師の経験から、私立中学校に入学後、「深海魚」状態になってしまう子どもの特徴や対処法についてお話ししていきます。
目次
私立中学校は入学後も勉強が大変?
中学受験というのは、受験をして合格すればそれで全てOKというわけではありません。
実際に中学校に入学した後、勉強や部活などを含め、どのように過ごすか?を考えることが大事です。
特に中学受験をさせる私立中高一貫校はカリキュラムもハイレベルな場合が多く、入学してからもしっかり勉強する習慣を続ける必要があります。
受験に合格すれば勉強しなくて良い、あとはのんびり6年間過ごせば良い、というものではないのです。
もちろん、受験が終わって休み期間に入り、しっかり休養することは大切ですが、中学入学後もきちんと勉強を継続する必要があることは意識しなくてはなりません。
「深海魚」と呼ばれるのはどういう状態?
中学受験を経て入学後、成績が伸び悩み、成績下位の層からなかなか抜け出せない状態を「深海魚」と呼ぶことがあります。
主にインターネット上の表現のため、一般的に使用されるわけではありませんが、成績が長らく低迷してしまう状態を指して使うことが多いです。
さて、この「深海魚」状態になってしまう原因は様々ですが、中学受験が終わって何らかの原因でモチベーションが下がると、中学入学後に勉強に身が入らず、成績が伸び悩む場合があります。
例えば、
- 受験が終わって緊張感が抜けすぎて一気にモチベーションが下がってしまう
- 「受験が終わったらもう勉強しなくていいんだ」という思いが強すぎる
- 過度に怠け癖がついてしまう
- 受験が終わってもなかなか疲労が抜けずに意欲がなくなってしまう
ことなどがあり、モチベーション低下の要因は様々でしょう。
こうした状態が続き、中学校入学後に日々勉強をするという習慣が薄れてしまうと、気がついたら成績下位の状態から抜け出せなくなる、といったケースが多いです。
そのほか、入学前まではある程度高いモチベーション・やる気があっても、入学前の理想と実際の学校生活のギャップなど、入学後に何らかの要因で意欲が起こらなくなり、気がついたら成績が伸び悩んでいたなどのケースもあります。
いずれにせよ、こうした「深海魚」状態を避けるためには、中学校に入ってからもしっかり勉強を続ける意欲・モチベーションを維持させなくてはなりません。
そのためにどうすべきか、親としてできることは何かを考え、入学後の生活に意識を向けることが重要になります。
私立の中高一貫校に入学させたから親も子も安心できるというわけではありませんので、この点はしっかり注意が必要です。
受験終了後はしっかり休ませることはもちろん大切です
冒頭で触れましたが、受験が終わった直後はしっかり休ませることも必要です。
入学後に「深海魚」状態にならないよう、勉強習慣の大切さを教えたりモチベーションを維持させたりすることは確かに大事ですが、だからといって受験が終わっていきなり中学校の予習などをすれば良いというものではありません。
そもそも、受験が終わってすぐ中学校の予習などを進めても、お子さんが集中して勉強できるとは限りません。
確かに春休み中は中学校に向けて予習を進めるチャンスですが、その前にまずしっかり休ませる必要があるのです。
受験勉強からいきなり中学校の予習に入ると、勉強に次ぐ勉強という状態になり、お子さんにとっても抵抗感は大きくなります。
あまりに負担が大きくなればお子さんの勉強嫌いを引き起こすおそれもあり、せっかく志望校に合格したにもかかわらずモチベーションが下がってしまう原因にもなりえます。
もちろん再三述べているように、受験して合格すればそれで全てOKというわけではありません。
入学後に「深海魚」状態にならないためにも、「受験が終わったらもう勉強しなくていいんだ」という考えは避けるべきですが、受験終了後にしっかり休ませることはまた別問題の話として、きちんと休養させることが大事です。
入学後に「深海魚」状態になりやすい子どもの特徴と対処法
ここまでの話を大前提として、「深海魚」状態になりやすい子どもの特徴や、その対処法についてお話ししていきます。
入学後に「深海魚」状態になるのは、受験が終わって入学するまでの過ごし方や精神状態に原因がある場合のほか、入学後の学校生活などが原因になることもあります。
以下、それぞれ整理していきましょう。
緊張が解けたことで一気にモチベーションが下がってしまうタイプ
受験が終わり、疲労や緊張感が抜けたとき、一気にモチベーションが下がってしまうことがあります。
合格とともに疲労や緊張がなくなるのは良いことではありますが、そこで勢い余ってやる気・モチベーションが一気に下がってしまうようなケースです。
これは、受験勉強期の疲労・緊張感が強すぎた反動とも言えます。
あまりに多くの疲労・緊張感が続き、それが合格とともになくなったとき、その反動で無気力になってしまうような状態は割と多いのです。
お子さんの中で「もう勉強しなくていいんだ」という気持ちが強くなり、勉強そのものに対するモチベーションが薄れるのも、ある意味受験勉強の反動とも言えるでしょう。
もちろん、緊張感が抜けたことで、それまで保っていたモチベーションが一時的に下がることはごく自然なことで、それ自体が悪いこととは言えません。
ただ、一気にモチベーションが下がった状態が長続きすると、当然ながら中学校に対する意欲も下がり、その状態が入学後も続けば「深海魚」状態になってしまうおそれがあるのです。
受験して合格したら終わりではない
こうしたケースでは、受験後しっかり休ませることを大前提としつつ、適度な緊張感を維持することが重要になります。
もちろん受験が終わってまで受験期並みの緊張感を持たせる必要はないですし、それだとかえってモチベーション低下を招くおそれがありますが、適度な緊張感を持たせることは大事です。
冒頭で述べた通り、中学受験というのは受験して合格を勝ち取ってそれで終わりではありません。
お子さんがしっかり休養できたら、「中学校に入っても勉強はとても大切なことだ」「受験して合格して終わりではない」という点をしっかり伝えてあげてください。
無理のない範囲で中学校の予習を少しずつ進めたり、入学後に入る部活を一緒に考えてみたりなど、中学校に対するお子さんの興味関心を高め、適度に緊張感を維持することが大切です。
一時的にモチベーションが下がってしまったお子さんの中にも、「この学校に行きたい」「この学校でこういう勉強をしてみたい」という気持ちはあるはずです。
そうした思いを自然な形でもう一度引き出せるよう、親子でいろいろな話をしてみてください。
対処法:過度に怠け癖がつかないようにする
春休み中に中学校の予習を進めることは、緊張感を維持するうえでも効果的です。
厳しい受験勉強が終わると、確かに「もう勉強はしたくない」という気持ちも芽生えるかと思いますが、そこで過度に怠け癖がついてしまうのは好ましくありません。
しっかり休ませることは大前提としても、「受験が終わったらもう勉強しなくていいんだ」という思いを子どもに持たせてはいけないのです。
そこで、春休み中に中学校の予習を少しずつ取り入れ、「中学校でも勉強は必要なんだ」という点を実感させることが大事になります。
実際に中学校で習う内容を見せることで、お子さんの中でも中学校入学後の勉強は現実味を帯びてきますし、「また勉強してみよう」という意欲も生まれやすくなります。
受験の疲労がなかなか消えないタイプ
上記のように受験が終わって疲労や緊張感が一気になくなるケースもありますが、逆に疲労がなかなか抜けず、悪い意味で緊張状態が続いてしまうこともあります。
こうしたケースでは、受験が終わって合格してもお子さんはなかなかリラックスできず、中学校に対する興味や意欲が薄れてしまう場合もあります。
合格しても完全に疲労が消えるとは限らない
そもそも受験勉強というのは、小学生のお子さんにとって大きな負担になります。
小学校4年生あたりから受験勉強をスタートし、6年生ではハードスケジュールになり、特にラストスパートの時期は緊張感のある日々が続きます。
そのような日々を経て志望校に合格したとしても、お子さんの中で疲労が完全に消えるとは限りません。
それまでの疲労が飛ぶくらい合格を喜ぶ子どももいますが、いざ合格してもリラックスした気持ちにならず、知らず知らずのうちに疲れを溜め込んでいる場合もあります。
疲労や緊張感の原因となっているものが解決したとしても、すぐ気持ちが回復できるとは限らないのです。
そして、このような疲労や緊張感が続き、合格してもなんとなく気持ちが追いつけない場合、中学校に向けたモチベーションが下がってしまう場合があります。
例えば、春休みに中学校の予習をしても集中できなかったり、これから来る中学校での新生活に興味が持てなかったりなど、意欲がどうしても湧かないような状態になってしまうのです。
そうなると、いざ中学校に入学してもなかなか意欲が起こらず、勉強に対するモチベーションが回復しないと「深海魚」状態になってしまうおそれもあります。
対処法:まずはゆっくり休ませてあげましょう
先ほども少し触れましたが、受験勉強が終わったときはまず休ませることが大事です。
確かに勉強習慣の大切さを教えることは必要ですし、休みが長すぎて怠けてしまうような状態も好ましくありませんが、負担や疲労が強すぎてなかなか消えないような場合はとにかく休ませるべきです。
疲労が抜けない状態は大人でも経験する場合がありますし、子どもであれば尚更、一人で状況をコントロールすることは困難でしょう。
親御さんのほうでもまずしっかり休ませることを意識し、褒めるところはしっかり褒めて、まずはゆっくりさせてあげてください。
そこでお子さんの精神状態も落ち着き、リラックスした日々が続けば、中学校に対するモチベーションも自ずと回復してくるでしょう。
親としたら中学校へ入るまでの準備を進めたいという気持ちもあるかもしれませんが、疲労や緊張感が続く状態が悪化すれば元も子もありません。
お子さんのやる気・モチベーションを戻すためにも、親のほうでも焦らず冷静に、ゆっくり休ませることを意識してみてください。
入学後に何らかの要因でモチベーションが下がってしまうタイプ
中学校入学後、何らかの要因でモチベーションが下がり、「深海魚」状態になってしまうこともあります。
上記でお話ししたケースは、いずれも受験が終わった直後の精神状態や過ごし方などに原因がありますが、受験終了時は問題なく過ごしていても、中学校に入学したのち、何らかの原因でモチベーションが下がってしまうこともあります。
以下、こうしたケースについても整理していきます。
入学前に抱いていた理想と違っていることも
お子さんが入学前に抱いていた理想と、入学後の学校生活があまりにかけ離れていると、お子さんの中で学校生活に対する意欲は下がりやすくなります。
そうなると勉強に対するモチベーションも低下し、気がついたら成績が低迷していたというケースも少なくありません。
これは非常に難しい問題ですが、学校というものは入学前の理想と入学後の現実が違っていたということは残念ながら起こり得ます。
特に私立の中高一貫校は独自の教育方針や校風に強みがありますが、学校の独自色が強いゆえに子どもと学校のやり方が合わなくなったというケースも一部見られます。
ただ、そこでどう折り合いをつけていくかが重要であり、うまく気持ちの整理ができればモチベーションも自ずと回復してくることが多いです。
このあたりは親子でしっかり話し合い、お子さんが学校のどのような点に不満を抱いているか、一度聞いてあげてください。
なぜ勉強に対する意欲が起こらないのか、学校生活のどこが不満なのか、親子で問題点を洗い出し、一度状況を整理することが大事です。
対処法:親子のコミュニケーションはどんな時も大切にしてください
お子さんとしても誰かに話すと気持ちが楽になるでしょうし、受験を共に乗り切った親であれば尚更、そのあたりの悩みは打ち明けやすいはずです。
また、自分で悩みを言語化することで、漠然としていた問題点を整理できたり、理想と現実が違っていたことをある程度受け止められるきっかけにもなるでしょう。
そして、問題点を洗い出すことで、学校に対する不満点だけでなく、良い点を再発見することもできます。
多少嫌なことがあっても楽しいことが多ければだいたいの子どもは学校生活を続けようと考えるはずです。
入学前の理想と違っていてもそこで何か頑張ろうと思うものがあれば、学校生活そのものへの意欲も自ずと戻ってくるでしょう。
その際に勉強に対するモチベーションも回復すれば、成績が改善するきっかけにもなりえます。
そのためにも、一度親子で話し合って問題点を整理していくことは非常に重要なのです。
入学後に怠け癖がついてしまうタイプ
先ほどお話ししたように、受験勉強が終わった反動で過度な怠け癖がついてしまうこともありますが、中学校入学後に何らかの原因で怠け癖が生まれてしまう場合もあります。
受験勉強が終わった直後や入学前はある程度やる気・モチベーションがあっても、入学後に意欲が薄れてしまうケースも残念ながら見られます。
その原因が、上記で触れたような理想と現実のギャップであることも多いですが、お子さんがどこかで怠けてしまうのは他にもいろいろな要因があり、これは非常にデリケートで難しい問題でもあります。
思春期を迎え、イライラしやすくなったり無気力になったりすることもあり、そこから勉強に対する興味・関心や意欲が失われることもあるため、親としても非常に悩みどころになるかと思います。
このような場合、親子で頻繁にコミュニケーションをとることは難しいかと思いますが、決してお子さんも悪気があるわけではありません。
また、親として子どもの怠け癖を注意することも大切ですが、ただ「勉強して」とだけ言っても効果があるとは限りません。
このような場合、将来的な大学受験や進路の話など、何か具体的な目標も踏まえて話したほうが効果的と言えます。
対処法:そもそも勉強は目的意識があってすべきもの!勉強の目的意識を持たせてあげましょう
そもそも勉強というのは、何か目的意識があったほうがモチベーションは維持されます。
中学受験の勉強であれば、「この中学校に行きたい」という思いが強ければ強いほどモチベーションは維持されるでしょう。
同じように、中高一貫校でも、「あの大学を受験したいから今勉強を頑張る」「推薦であの大学に行きたいから日頃の成績を上げておく」など、何か目的があったほうが勉強の意欲は高まるはずです。
怠け癖がついてしまい、現状ではどうしてもやる気が起こらないときでも、目的意識さえ持たせれば勉強への意欲が復活し、「深海魚」状態を脱することだって可能なのです。
入学したら安心ではありません!子どもの精神状態を適宜確認ましょう
ここまでお話ししたように、子どもの精神状態というのは非常にデリケートな問題です。
受験勉強生活が終わった直後であれば、緊張感が抜けすぎてモチベーションが下がるのも良くありませんが、疲労が抜けずにリラックスできない状態が続くのも好ましくありません。
また、中学校入学後であれば、何らかの原因で学校と合わなくなったり、モチベーション低下や怠け癖が発生してしまうこともあります。
いずれの場合も中学校に対する意欲やモチベーションに悪影響を及ぼし、それが「深海魚」状態の要因にもなりえます。
成績低迷を避けるためにも、子どもの精神状態は親のほうでも適宜確認し、必要なサポートをしてあげなくてはなりません。
疲労が溜まっていれば休ませる、過度な怠け癖がついていれば適宜モチベーションを維持させる、何か悩み事があればしっかり聞いてあげるなど、その都度サポートをしてあげましょう。
繰り返しますが、私立の中高一貫校に入学させたから親も安心、というわけにはいきません。
決して学校に任せっきりにするのではなく、親としてできること・注意すべきことはしっかり意識しておくことが大事です。
有意義な6年間になるよう受験後も適度な緊張感を保つことが大切
今回は、中学受験を経て私立中学校に入学後、「深海魚」状態になってしまうケースについてお話ししていきました。
中学受験というと受験勉強ばかりに意識が向きがちですが、実際に合格して入学した後、しっかり勉強のモチベーションを維持させることも非常に重要なのです。
そこで勉強に対する意欲が薄れると、成績が長らく低迷してしまう「深海魚」状態の要因になりえます。
この「深海魚」状態を避けるためにも、子どもが「受験が終わったらもう勉強しなくていいんだ」という気持ちにならないよう、受験後も適度な緊張感を保つことが大事です。
一方で、受験の疲労がなかなか消えず、悪い意味で緊張状態が続き、それがモチベーション低下を引き起こすこともあるので、受験が終わったときはまずしっかり休ませることは大前提となります。
また、中学校に入学後、何らかの原因で意欲が薄れ、勉強に対するモチベーションが下がってしまうケースも見られます。
この場合は状況に応じて親子でコミュニケーションをとり、問題点を洗い出す、入学前の理想と入学後の現実のギャップにうまく折り合いをつける、大学受験なども踏まえて勉強に目的意識を持たせるなど、お子さんの意欲を引き出して維持するにはどうするかを考えていくことが重要です。
このように、受験が終わってからも親子でいろいろな課題に直面するかもしれませんが、一つひとつ乗り越え、有意義な6年間を過ごしてみてください。