中学受験を考えている家庭で懸念されることと言えば、お子さんが3年前後の長い期間に渡って受験勉強を続けられるのか?途中で嫌気がさして、辞める、辞めないで大騒動になりやしないか?といった、勉強のモチベーションに関わる問題が多いのではないでしょうか。
お子さんが受験を終えるまで、いつもポジティブに勉強に向かってくれれば、親としても本当に楽なのですが、なかなかそうもいかないのが現実です。
では、うまくやっている子供は何をモチベーションにしているのでしょうか。
目次
通塾している子供たちのモチベーション
まず「中受生活=塾生活」という視点で考えてみます。
首都圏の中学受験の大手塾と言うと「サピックス」、「四谷大塚」、「日能研」、「早稲田アカデミー」の4つを指します。
もちろん関西には「浜学園」「希学園」など、また各地方にも大手が存在しますが、ここでは首都圏を例に見てみます。
大手塾と言っても、各塾とも1都3県で50程度の校舎を持つため(一番多い早稲田アカデミーは100を超える)、各校の規模は意外にこじんまりしています。
都心にはいわゆる「大規模校」というのがあるのですが、少し郊外に出ると、驚くほど慎ましやかな校舎が多いのです。
そうした小規模校舎の実態を少し覗いてみることにしましょう。
塾の授業が面白い=勉強にやる気が出る
例えばW塾のA校舎。都心から電車で30分ほどの郊外にあります。駅前の商業用6階建ビルの2フロアを借りて営業しています。教室には長机が10個ほどで、定員は20人といったところでしょうか。
公立の小学校の教室の半分くらいの大きさです。この教室に定員の半分の約10人の子供が授業を受けていました。窓を開けてもおそらく隣のビルの壁しか見えないような、密閉された空間です。
親の世代、いや、祖父母世代であれば「不健康だ!」「これではまるで監獄だ」「子供たちがかわいそうだ」などと非難を浴びせたくなるシチュエーションかもしれません。
しかしよく見ていると、子供たちは本当に楽しそうに授業を受けています。
先生が「○○(生徒の名前です)が出来る問題だったら全員出来るよな?」とか「これ出来ないと、来年△△中学の受験会場には立入禁止になりま~す」とか、面白おかしく、時には毒舌も混ぜて、授業をテンポよく進めていくのです。
まるで実演販売でも見ているように、子供たちの間からは笑いが起こり、そうかと思えば、もう次の瞬間には全員がもの凄い集中力で問題を解き始めています。
ここには「もうひとつの学校」があります。
小学校とはまた異質の空間、友達、先生と接し、小学校では学べないことをたくさん吸収していくのです。彼らにとって勉強は最大で最高の興味。
野球少年が野球をするように、彼らは勉強をするのです。食事も忘れてゲームばかりする子供と違うのは、興味の対象がゲームか勉強かの違いだけなのかもしれません。
一度親御さんも塾の授業をご覧になるとよいかもしれません。
講師もレベルが様々ですが、上手な講師の授業は本当に面白いです。惹き込まれます。
上手な講師は塾内でも上位クラスの授業を受け持つことが多いので、できれば成績優秀なクラスの授業を見ることをお勧めします。
勉強する環境がモチベーションを上昇させる
長々と語ってしまいましたが、要するに、こうした雰囲気の中で塾の授業を受けられるのであれば、子供のモチベーションが下がるなんてことは、ほぼ考えられないと言うことです。
だから簡単に言ってしまえば、お子さんのモチベーションを維持または上昇させる一番の手段は「上位クラスに居続け、良い先生、良い仲間と授業を受け続けること」です。
良い授業を受けモチベーションが上がれば、おのずと成績も上がります。
そうすればさらに上位のクラスに上がれます。
そこでもっと良い先生の授業を受けて、さらに成績が上がる…。こうした好循環に入れれば、もう親として何もやることはなくなります。
クラス分けテストで失敗した時は短期間勝負!塾と協力をしてモチベーション維持をする
しかしそこは子供ですから、こうした好循環の中に居ても、クラス分けテストで大失敗をすることも時にはあることです。
ここが一番のポイントになります。クラス落ちしてモチベーションを下げてしまうと、今度は逆に負のスパイラルに嵌まってしまうことがあります。
これを数回繰り返すと「もう受験辞める!」というところまで行ってしまうかもしれません。
こういう時こそが親御さんの腕の見せ所です。
短期間でまた好循環に戻れるように、上位クラスで教わった先生に協力を仰ぐなど、手を貸してあげることが大切になります。
まだ小学生ですから情緒不安定になることもあるでしょうが、勉強することに面白さを見出すことができれば小さな心配事は自然と解消されるはずです。
ある女の子の中学受験体験談
10年ほど前に出版された「もう塾なんか行かない!」という中学受験体験本があります。
この本の主人公の女の子はちょっと変わっていて、通っていた大手塾(日能研)を突然辞めると宣言。
理由は電車で塾に通うのが大変で嫌になったというような類でした。しかし、お父様の進言で、この女の子は塾を完全には辞めませんでした。
模試や週次テストだけは受け続けたのです。
日能研はこれらのテストの結果で毎週教室の席順を決めるのですが、その結果をお父様が塾に出向いて、実際に座ることはない席次を確認するという形で変則的な塾生活を続けたそうです。
とても優秀なお子さんで、女子最高峰と言われる桜蔭中学も楽勝というレベルでしたが、彼女の第一志望は桜蔭ではなく、敢えて豊島岡。
もちろん豊島岡も桜蔭に負けず劣らずのハイレベル校ですが、その志望理由がふるっていて、豊島岡を見学に行ったときに見た講堂につづく壮麗な通称「シンデレラ階段」がたいへん気に入ったというものでした。女の子ならではのセンスです。
さて、私たちはこの本から、主人公の2つのモチベーションを読み取ることが出来ます。
ゲームをしているような感覚で受験する事を楽しむ
まずひとつは彼女がテスト(受験)をゲーム感覚で楽しめるタイプだったということです。
世の中には自分のテスト結果を早く知りたいという子と、なるべく知りたくないという子が居ますが、前者であれば受験を楽しめるタイプと言えそうです。
こういう感覚は強力なモチベーションとなります。たとえテストのデキが良くなくても、自分の偏差値、順位を知りたくて仕方ないという子はいます。
自分で順位の折れ線グラフを作って管理しているなんて子もいます。もう、これはゲーム感覚です。
志望校への憧れをモチベーションにする
ふたつ目は女の子にありがちですが、志望校に対する憧れや好イメージをモチベーションにする例です。
この本の女の子は学校の施設が気に入ったようですが、よくあるのは制服ですね。
それから部活動状況や食堂のメニューすらモチベーションになり得ます。「そんなことで志望校を選ぶなんて」と頭ごなしに否定せず、その気持ちを上手く利用してあげたいものです。
家庭で実践してみよう!やる気とモチベーションを保つ3つの方法
子供たち自身が実践しているモチベーション維持方法に触れてまいりましたが、最後は親御さんがすぐにでも実践できるものをいくつか挙げておきます。
日常のテレビ番組を変えてみよう
よく「親の勉強する姿、難しそうな本を読んでいる姿を子供に見せよ」と言いますが、テレビもそれに倣ってみると効果があります。受験期だけでもドラマなど控えてみてはいかがでしょうか。
逆に、やや難しいクイズ番組などで親御さんが解答するところなど見せるのもよいものです。
受験に関連する会話をしよう
親御さんが受験に関心があることを示すことも必要です。
特に「母親が過干渉気味で、父親が無関心」という状況なら、「父親も心配している」ということを、さりげなくアピールできると効果があります。
母親目線でも子供目線でも出て来ないような、社会人経験を活かし、物事を色々な角度から見ながら情報を教えてあげるのがよいでしょう。
6年後を見据えて大学見学へ行こう
志望する中学を実際に見に行くのもよいのですが、あまりに現実的過ぎて、モチベーションにならないこともあります。
厳しい受験勉強と志望校が頭の中でシンクロしてしまい、逆効果になることもあるそうです。それならば思い切って、遠い未来(といっても6年後ですが)の目標になる大学を見学に行くのもよいでしょう。
東大などは休日になると一般の方、観光客もたくさん見学(散歩)をしています。
もちろんまだ志望大学など決めてないでしょうから、どこの大学でも構いません。
敢えて少し視線を遠くに向けてあげ、さらに6年後への意欲を喚起することができればとても意味があることに繋がります。
まとめ
子供たちは自分の受験生活をうまく回していくことによってモチベーションを維持しています。受験生活とは、多くの場合は「塾」とイコールとなるでしょう。
つまり充実した塾生活が送れていれば、最低限のモチベーションは維持できていると考えてよさそうです。
あとは親御さんが少しばかり手助けをしてあげること。但し、過剰な干渉は逆にモチベーションを下げることになりますのでご注意ください。