中学受験では様々な学校を受験するかと思いますが、残念ながら全落ちしてしまうケースもあります。
全落ちしないためには安全校・滑り止め校をどのように決めるべきか、偏差値はどのように判断すれば良いのか、スケジュール調整で注意すべき点はどこかなど、疑問点も多いのではないでしょうか。
この記事では、塾講師の経験から中学受験で全落ちにならないために考えておくべきことや注意点についてお伝えしていきます。
最適な受験校と受験スケジュールを決め、全落ちのリスクを減らすため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
受験校全て落ちてしまわぬように必ず考えておくべきこと
中学受験では、残念ながら受験校全てに落ちてしまうケースも見られます。
その要因は様々で、受験校の偏差値が高すぎた、併願校が少なかった、受験日程に無理があった、などが挙げられます。
全落ちしないためには、無理のないレベルでの志望校・併願校設定、無理のない受験日程の調整が必要不可欠となり、ここは親御さんとしても特に意識していただきたいところです。
以下、それぞれのポイントを踏まえてご説明していきます。
受験校を選ぶ上で注意したいこと
中学受験で難関校を目指す子どもはたくさんいます。
一方、自分の学力偏差値とあまりに離れた難関校ばかり受験すれば、やはり全落ちのリスクは高まります。
もちろん最終的にはお子さんの希望に沿って受験することになるかと思いますが、その際には滑り止め校を併願校として出願したりなど、なるべく全落ちのリスクを回避することが大事です。
第一志望校のレベルが高すぎる
お子さんの第一志望校が、お子さんの学力偏差値とかなり離れて高い場合、親としてはどう対応すべきか悩みどころになります。
学力的に難しくてもチャレンジさせるか、それとも一度話し合って第一志望校を変えてもらうか、そのあたりは各ご家庭でも変わってくるでしょう。
ただ、第一志望校を変える場合もそうでない場合も、なるべく滑り止めで併願校を複数受験するようにしてください。
受験する学校が少ないのは高リスク
第一志望校しか受験しない場合や、第一志望校と併願校の2校のみ受験する場合など、やはり全落ちのリスクは高まります。
これは、偏差値的に安全圏の学校のみを受験する場合も含みます。
たとえ合格圏内の学校だとしても、本番では何が起こるかわかりません。
いきなり体調不良になったり、過度に緊張してしまったりなどの状況になれば、合格圏内とはいえ実力を出し切ることは難しいでしょう。
もしそれで不合格になり、第一志望校以外に受験しないのであれば、当然そこで全落ちとなってしまうのです。
また、第一志望校と併願校の2校のみ受験する場合も、全落ちのリスクは高くなります。
なるべく併願校は2,3校以上用意し、第一志望校と合計で複数校受験できるようにしておくことが好ましいです。
安全校・滑り止め校の偏差値帯
受験校は現時点での偏差値を基準とし、「偏差値プラスマイナス10」で決めていくと良いでしょう。
偏差値プラス10の学校はチャレンジ校、偏差値マイナス10の学校は安全校・滑り止め校となります。
場合によっては「偏差値プラスマイナス5」で決めることもあるでしょう。
ただ、チャレンジ校は受験しないケースも多いですが、安全校・滑り止め校はきちんと受験することが大事です。
模試などで自分の学力偏差値をきちんと確認し、偏差値マイナス5~10あたりで安全校・滑り止め校を絞っていきましょう。
併願校であっても校風や教育方針などは確認しておくこと
併願校も学力偏差値を基準に決めていきますが、第一志望校同様、校風や教育方針なども必ず確認してください。
決して偏差値だけで決めないよう、注意が必要です。
そもそも併願校を安全校・滑り止め校とする場合、第一志望校に合格できなければその学校に進学する可能性が高いわけです。
であれば、「入学してみたら自分の性格と合わなかった」などの事態は避けなくてはなりません。
子どもが「この学校に行きたい」と思えるような安全校・滑り止め校かどうか、学校の雰囲気や教育方針が子どもに合っているかなど、あらかじめきちんと確認しておきましょう。
安全校・滑り止め校へのモチベーションが持てているか
そもそも中学受験は、「この学校に行きたい」というモチベーションがあってこそ成り立つものです。
これは第一志望校に限らず、安全校・滑り止め校も同様になります。
例えば第一志望校に落ちてしまい、その後に他の安全校・滑り止め校を受験するとしましょう。
ここでその安全校・滑り止め校に対するモチベーションが高ければ、「第一志望校は落ちてしまったけどまた頑張ろう」「あの学校にも行きたいから頑張ろう」と思えるわけです。
しかし安全校・滑り止め校へのモチベーションが低ければ、第一志望校に不合格だった時点で受験に対するモチベーションも下がってしまうでしょう。
であれば、それだけ全落ちのリスクも高まるわけです。
このように、「この学校に行きたい」というモチベーションは中学受験の基本でもあり、これは併願校、安全校・滑り止め校も例外ではありません。
第一志望校を決めるときと同様、校風や教育方針、雰囲気などの現場の情報もしっかり入手し、子どもが「この学校に行きたい」と思えるような学校を選びましょう。
合格校を掴むための受験日程スケジュール
中学受験は、受験日程・スケジュールの調整が非常に大きな意味を持ちます。
複数校を受験する場合、途中で子どもが息切れしないよう、無理のないスケジュールで受験を乗り切らなければなりません。
あまりにハードスケジュールで受験日程を組み、子どもの集中力やモチベーションが下がってしまえば、それだけ全落ちの可能性も高まるのです。
そうならないよう、入念に計画を立てて受験期間に臨みましょう。
初日はなるべく安全校・滑り止め校を受験する
受験日程の初日は、できれば安全校・滑り止め校にしておくと良いでしょう。
いきなり初日から第一志望校や難しい学校を受験すると、そこでうまくいかなければ、モチベーションが一気に下がるおそれがあります。
それより、合格可能性が高い学校をまず受けておき、そこで合格を勝ち取り、残りの受験日程に臨むと良いでしょう。
もちろん合格したからといって油断してはいけませんが、良い意味での安心感は精神の安定を産み、落ち着いて残りの受験日程を乗り切ることにつながります。
1月に受験できる学校を選択しておく
中学受験というと2月1日以降のイメージも強いですが、1月に受験できる学校もあります。
第一志望校のトレーニングも兼ねて、1月に安全校・滑り止め校を受験する選択肢はあるのです。
特に2月1日に第一志望校の受験日程がある場合であれば尚更、1月に1度受験を経験してみても良いでしょう。
ここで合格を得ておけば、良い意味での安心感も生まれるかと思います。
もちろん初日に第一志望校を受験するケースはある
もちろん、受験日程の初日に第一志望校を受験するというケースもあります。
例えば1月に入試のある学校が第一志望校であれば、安全校・滑り止め校の受験なしにいきなり第一志望校を受けるケースも多いでしょう。
この場合は仕方ないので、模試や過去問演習でシミュレーションを重ね、焦らず受験初日を乗り切る必要があります。
ただ、この場合でも、他の日程で安全校・滑り止め校を受験することはしっかり検討しておいてください。
入試後半は倍率が高くなることを考慮しておく
入試後半の日程になると、一般的に倍率は高くなります。
例えば、ある学校で2月1日に第1回、2月2日に第2回、2月5日に第3回の受験日程があるとしたら、第3回の倍率は第1回・2回よりも高くなることが一般的です。
この学校を第一志望校にする場合、できれば第1回や2回あたりで受験できると良いでしょう。
安全校・滑り止め校であれば入試後半の日程で受験することもあるかと思いますが、第一志望校はできるだけ前半のほうで受けておくことが好ましいです。
最初の入試で失敗しても諦めない
もちろん、初日の入試で不合格になってもそこで諦める必要はありません。
先ほども述べたように、受験というのは何が起こるかわかりません。
いくら初日に安全校・滑り止め校を受験したからといって、絶対に合格できるとは限らないのです。
また、初日にいきなり第一志望校を受験せざるを得ない場合も、残念ながら不合格になってしまうことはもちろんあります。
ただ、初日で失敗しても、そこで諦めてはいけません。
まだ他の学校が残っていることを意識し、反省点はしっかり反省し、モチベーションを維持することが重要です。
ここで先ほど述べたような、「併願校に対するモチベーション」も重要になるわけです。
第一志望校以外の学校に対するモチベーションがしっかりあるかどうか、これは全落ちになるかならないかの重要なポイントと言えるでしょう。
中学受験で全落ちしてしまう家庭に起こりがちな3つのこと
ここまで、中学受験で全落ちしないために考えておきたいことについてご紹介しました。
この点も踏まえつつ、中学受験に全落ちしてしまうご家庭にありがちなことについてもお話ししていきます。
1.偏差値にこだわりすぎている
あまりに偏差値にこだわりすぎると、安全校・滑り止め校を受験しないという方針になりがちです。
併願校も含め、受験校すべてのレベルがあまりに高すぎると、どうしても全落ちのリスクは高まります。
もちろん偏差値をどの程度重視するかは各ご家庭の教育方針によりますし、一概に論じることは難しいでしょう。
ただ、そもそも偏差値だけにこだわりすぎるのは好ましいとは言えません。
確かに偏差値上位の難関校は大学への合格・進学実績などが優れていますが、そもそも大学進学だけが人生の全てではないのです。
昨今、多様な生き方・働き方があるのと同様、教育の在り方・捉え方も多様化しています。
お子さんの性格に合う学校は、偏差値上位の難関校とは限りません。
ぜひこうした視点も踏まえ、偏差値にこだわりすぎず、安全校・滑り止め校を決めてみても良いのではないでしょうか。
2.過度にお子さんの勉強に干渉しすぎていた
小学生のうちは、自分一人で全ての勉強を効率的に進めるのは難しいでしょう。
だからこそ親のほうも適宜サポートを行い、お子さんの勉強を支えていくことが大事になります。
ただし、過度に干渉したり、ただやみくもに家庭学習時間を増やしたり、ただ「勉強して」とだけ言い続けても、お子さんはかえって集中できません。
むしろ勉強嫌いになったり、「この学校に行きたい」というモチベーションそのものが下がってしまうこともあり、そうなると受験勉強に集中することは難しくなります。
このような場合、受験勉強として無理が出てしまい、本番でうまく実力を発揮できず全落ちしてしまうことになりかねません。
確かに、子どもの成績が思うように伸びないときなど、親として不安を感じることも多いでしょう。
ただ、そこは長い目で考えていただき、過度に干渉しすぎることのないよう、注意が必要です。
3.逆にお子さんの勉強にあまり関わっていなかった
逆に、お子さんの勉強にあまり関わらないのも好ましくありません。
過度に干渉しすぎず、無理はさせず、その一方で適宜サポートは行う、というバランス感覚が大切です。
このあたりは非常にバランスが難しいのですが、親があまりにも子どもの勉強に無関心だと、子どもが一人で勉強を進めることは困難でしょう。
気がついたら怠けてしまった、集中力が低下していたなど、様々な弊害が生まれます。
そうなると受験勉強のクオリティが下がってしまい、実力が伸びず、全落ちしてしまうこともあるのです。
子どもの成績が上がったとき、逆に伸び悩んでいるとき、親としてしっかりアプローチを行い、関心を示すことが大事です。
褒めるときはしっかり褒め、注意すべきところはしっかり注意し、親子の二人三脚で受験を乗り切るようにしましょう。
たとえ全落ちしたとしても中学受験の経験は大きな意味がある
ここまでお話ししたように、全落ちしないためには受験校の偏差値や受験日程などに注意する必要があります。
一方、受験は何が起こるかわからず、最大限注意したつもりでも残念ながら全落ちしてしまったというケースはあります。
ただ、その場合に考えていただきたいのは、たとえ全落ちしても中学受験の経験は大きな意味があったということです。
そもそも受験勉強というのは、目標を設定し、日々のスケジュールを立て、各科目のバランスを意識し、コツコツと勉強のトレーニングを積んでいくものです。
何かの目標に向かって自分で考え、バランスを意識し、日々努力するというのは、実社会に出ても非常に重要なスキルです。
これを小学生のうちから経験できるというだけで、中学受験の勉強は大きな意義があります。
確かに中学受験は志望校の合格を目的に行うものですが、その目的が達成できなかったからといって過程全てが無駄になることはあり得ません。
もちろん全落ちはなるべく避けるべきですし、そのための注意点・ポイントを意識することは大事ですが、全落ちしたときにあまりに悲観的になるのも好ましくありません。
中学受験の勉強そのものに、子どもが大きく成長できるきっかけがあるのです。
この点も特に意識していただければと思います。
最後に
今回は、中学受験で全落ちにならないために考えておくべきことについてお伝えしていきました。
全落ちしてしまう主な理由としては、受験校の偏差値が高すぎた、併願校が少なかった、受験日程に無理があったなどの要因があります。
中学受験において偏差値上位の難関校を目指すケースは多いですが、あまりに難関校ばかり受験するのはリスクが高まります。
安全校・滑り止め校もしっかり併願し、なるべくリスクを減らしておきましょう。
もちろん安全校・滑り止め校も偏差値だけで判断せず、教育方針や校風なども確認し、お子さんの性格に合った学校かどうかきちんと分析する必要があります。
第一志望校のみならず、安全校・滑り止め校へのモチベーションを維持することも、全落ちを防ぐために重要なことだからです。
また、入試日程は子どもにとって無理のないスケジュールで決める必要があります。
できれば受験日程の初日を安全校・滑り止め校にし、合格を得ておくなど、子どもにとって安心感の生まれるスケジュールにしてみてください。
もちろん初日に第一志望校を受験する場合もあるかと思いますので、その場合は模試や過去問などを通じてしっかりシミュレーションして準備しましょう。
また、入試後半の日程は一般的に倍率が上がりますので、この点もスケジュール調整の際に注意が必要です。
こうした点を意識し、最適な受験日程を計画していきましょう。