アクティブラーニングで教育はどう変わる?教育世代が知っておくべきこれからの変化

アクティブラーニングをする子供

アクティブラーニングという言葉を聞いたことはありますか?

例えばお子さんが受験生であったり、進学塾に通われていたりする保護者の方なら、何度か耳にされている可能性は高いと思います。

折しも、政府より打ち出された所謂「人づくり革命」は政権の目玉政策として注目を集め、教育費補助への公費投入案も既に具体的に動き出しています。

これに対する世論も様々で、世代によって賛否が大きく分かれている状況です。

今まさに、すべての世代が、将来の日本のために、教育に対して理解を深めていくべき時なのです。

これからの日本の教育事情はどう変わろうとしているのか、そして変わるべき最前の教育現場では何が起こるのか?

そんな中、今もっとも注目されているキーワードがアクティブラーニングです。

アクティブラーニングとは?

それでは、そのアクティブラーニングがいかなるものかを紹介します。

<定義>「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」

  1. 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
  2. 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
  3. どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)

文科省:新しい学習指導要領等が目指す姿より

まず「定義」が決められ、その下の(1)~(3)は、「育成すべき資質・能力」とは、どのようなものなのかを示しています。

アクティブラーニングとは何かと問われたら、要はこれだけで説明終了でも良いのです。

またアクティブラーニング対する見解や評価も、研究者や現場の教員等で様々違いがありますので、それらを比較するのも有意義だと思います。

ただここではシンプルに上記の文言を読んでいただくだけで良いと思います。

なぜなら、これに基づく学習指導要領もこれからさらに練られていくと思いますが、結局のところまだ具体的にどういう教育が行なわれるのかは固まっていない段階だからです。

アクティブラーニングで行われる教育

このように、まだなかなかイメージをつかめないアクティブラーニングですが、そんな中でも色々な著書やネット記事で多く紹介されているのが、「新たな英語教育」と「学び合い」の2つです。

英語については、今の学校の授業ではビジネス英会話はもちろん、簡単な日常会話ですら出来るようにならないという指摘が以前からあります。

特にスピーキングとリスニングに弱いのが日本の英語教育です。

そのため学校の授業や入試の際の選考基準にも、民間の英語資格を積極的に取り入れる方向にシフトしていきそうです。TOEFLやTOEICなどがよく知られていますね。

次に「学び合い」ですが、これはアクティブラーニングというものをもっとも端的に体現している学習法ではないでしょうか。

「学び合い」はこれまでのスタイル(教員が板書し、それを生徒がノートに写し、ときどき生徒に質問をして、最後に教員がまとめて終わるという授業)と根本的に違うものです。

以下は「学び合い」授業の流れです。

1.教師が課題を与える

  • 「全員が課題を達成するのが目的」と伝える
  • 「わからないから教えて」と自分から動くことを奨励

2.「さあ、どうぞ」と促し、子どもが動く

  • 子どもは最初はまず自分が課題を解くために動かない
  • 徐々に他の子に教える子ども、教わるために動く子どもが出て、動き始め、グループが生まれていく。
  • やがてグループ同士の交流が始まり、多くの子どもが課題を達成する。まだ出来ない子をサポートするメンバーがどんどん増える。

3.成果を振り返る

  • 「全員達成」ができたかどうかを振り返る。学習内容のまとめはしない。あくまでも、「全員が課題を達成する」という目標に対してどうだったかを振り返らせる。

(西川純著:「すぐわかる! できる! アクティブ・ラーニング」より抜粋)

これは公立小中学校でよく見られる「落ちこぼれ」と「ふきこぼれ(授業が簡単過ぎてやる気が出ない子ども)」の問題を同時に解決する優れたやり方だと思います。

学校の授業は、どうしても成績中位から下位の生徒に理解をさせることが目標になってしまいますので、成績優秀な子どもにとっては退屈でしかないのです。

しかし、このやり方なら「落ちこぼれ」にも「ふきこぼれ」にも双方メリットがあります。

「落ちこぼれ」はもちろんですが、「ふきこぼれ」も他者に教えることで自分の理解の度合いが増すのです。

「理解した」と思っていたことでも、他者に教えるとなると案外あやふやだったりすることが間々あります。

こうした発見ができるだけでも、漫然と教師の話を聞いているより余程意味があるのではないでしょうか。

よく「他人に教えて初めて理解できたと思え」なんて教わりませんでしたか?

日本のスティーブ・ジョブズを生み出すために

公立小中学校での学び合いは、ある程度の効果が見込めると思いますが、では学力が同レベルの子が集う高校や、受験して入学した私立中高一貫校などで、実際これを実践できるでしょうか。

この方式だとレベルの底上げにはなると思いますが、日本のS・ジョブズやザッカーバーグを生み出すために役立つとはあまり思えません。

昭和の日本の教育制度が優れていたのは、ほぼすべての子どもが一定の学力を得ることができるというシステムを作り上げた点です。

学力の底上げに成功したことが、高度経済成長期に必要な社会(つまり少数の突出した能力を求めるよりも、多くの平均値の人材を求める社会)にマッチしたのではないでしょうか。

しかし今、産業界から求められているのは「小数の突出した能力」です。

アクティブラーニングとは能動的に学ぶこと

最近、「授業をしない塾」というのが話題になっています。

「授業をしない」武田塾はこれをキャッチフレーズに大きく業績を伸ばしています。

東進衛星予備校はこれまでの予備校の常識を覆し、遠隔地に居ながらにして安価に、有名講師の授業を聴講することができるシステムを開発し躍進しました。

こうした塾が合格実績を上げているということは、つまるところ、最後は「自分でやる力」がすべてだということを物語っているのではないでしょうか。

誰かに手取り足取り教えてもらって学力が伸びることも勿論大いにあるでしょうが、将来日本の経済を背負って立つ様な秀才・天才はもはやそのレベルではないと思います。

アクティブラーニングとはあくまで能動的に学ぶことですので、その「やり方」については問わないというのが正解のような気がします。

やり方を用意されて「さあ、アクティブラーニングをやりなさい」というレベルを産業界は求めているとは思えません。

とはいえ、「学び合い」は非常に優れた学習方式だと思います。

これを足がかりに色々な発展型が開発されてくれば、日本の教育が本当に大きく変わるかもしれません。

2020年に国立大学の入試が変わる

2020年に国公立大学の入試からセンター試験がなくなります。

センター試験は、広範な知識を問うテストという性格があるため難問・奇問は少なく、一次試験として私大でも採用するところが多いわけですが、これをキッパリやめてしまおうというのです。

そして代わりに「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」(ともに仮称)がスタートします。

前者は高校1~2年の間に複数回受験できるので、これまでのように受験日一発勝負のプレッシャーからは解放されます。

これはおそらく、これまでのペーパーテストのように、知識を問う性質のものであろうと考えます。

しかし、ここでより一層注目すべきは後者です。こちらの考査は自由記述型になると言われています。

つまり正解のない課題に対して自分なりに論理立てて、オリジナルな回答を導き出すことが求められるのです。

要するに知識の多寡を問うペーパーテストでの選抜方式は、その比重を大幅に縮小し、代わりに面接やディベート、論文などを取り入れた多様な入試スタイルに変えていこうということです。

産業界はグローバルな人材を求めている!

実はこうした急変の背景には、大学の先にある経済産業界からの要請があったのです。

バブル崩壊後高度成長が終焉を迎えて、さらに少子高齢化が進む中で、日本がグローバルなマーケットで生き残りをかけるには、人材で勝負するしかなくなったのです。

ユニークなアイデアの創造をもって世界のマーケットに打って出ること以外に、かつて「先進国」と言われた国々が成長する術はもはやないのです。

ここにいち早く対応したのがアメリカであり、ハーバード、スタンフォード、MITといった名門大学で学んだ若者から多くのアイデアが生まれ、今のアメリカの好況を基礎となったわけです。

そして、こうしたアイデアを生む人材は、今の知識詰め込みが評価されるような選抜方式を採用する大学からでは発掘ができないという結論に至り、抜本的な入試改革が急務となったのです。

これまでも日本では「教育改革」の名の下に小規模な変革はありましたが、今回はこうした財界からの後押しもあり、文科省も相当な意欲と決意をもって当たっていると思われます。

これから受験を控えるお子さんをお持ちの保護者の皆様も、この政府や財界の「本気度」を感じていただきたいと思います。