小学校に上がると、子どもが学校ではどのように過ごしているのかが非常に見えづらくなります。
学校での様子は三者面談や家庭訪問で担任の先生と話したり、友だちの親から聞いたりすることもあるかもしれません。
しかし、年齢が上がれば上がるほど、子どもたち同士で遊びに行くので、親同士で会う機会が減り、お話しする機会も減ります。
さらに高校生になれば親同士が関わることはほとんどなくなります。
そんな時、学校から「お子さんが級友に意地悪をしている…」と連絡がきたら、なんという第一声が出てきますか?
子どもから聞く話とはなんだか違うなと違和感を覚えたことはありませんか?
ここでは教諭経験から、保護者と友だちの前では態度が変わる子の特徴から、お子さんが「いい子症候群」になってしまっていないか、親の方が我が子を「いい子症候群」にさせてしまっていないか、みていきましょう。
目次
お子さんはあてはまりますか?「いい子」と言われるタイプの特徴
まず、お子さんの特徴として以下のようなものがあてはまるでしょうか?
- 言われたことはきちんとできる
- 学校や習い事でよく褒められる
- 聞き分けがよく、素直である
- 自分から意見を言うタイプではない
- 周りに合わせることができる
上記5つの特徴をあげましたが、このような子は家でも学校でも「いい子」と言われるタイプの子です。
一見、育てやすそうではありますが、「いい子」でいることでストレスやプレッシャーを感じており、必ずではないですが、大人の見ていないところで友だちに意地悪などをしてしまう可能性があります。
「いい子症候群」と呼ばれる子どもとは?
学校生活を描いたテレビドラマや漫画などで「いい子だと思っていたら、黒幕だった」というパターンはよく見られます。
このように大人の前では「いい子」なのに友だちの前では「悪い顔」になる、いわゆる「二面性を持った子」は環境に問題があるのではないか、と考えられています。
まず、「いい子」であることは決して悪いことではありません。
子どもは生きていくために大人、特に親に世話をしてもらわないと生きていけないため、少なからず「いい子」でいなければいけない、「いい子」になって褒められたいという気持ちを持っています。
「褒められたい」から大人、親の期待に応えようと子どもは頑張るのです。
その頑張りは子どもの「成長」にも繋がります。
褒めてもらえない、認めてもらえない状況が続いてしまうことが原因の一つ
しかし、「褒められたい」と願っていてもそれを認めてもらえない状況が続くと、自己肯定感が低くなってしまいます。
さらに自分に自信がない子になってしまう可能性や、他人に対して自分の感情が上手く伝えられず、押さえ続けていた感情が爆発してしまい暴力的なことや非行につながってしまうこともあるのです。
「いい子症候群」の子は大人になり、社会に出て親の監視下から外れたとき、生きづらさを強く実感します。
自分の意見が言えなかったり、嫌と断れなかったり、本当の自分が出せず苦労しやすくなります。
そうならないために、大人は子どもに対して以下のようなことをしていないか振り返って考えてみる必要があります。
「自慢の子」ではなく「いい子症候群」にしてしまう親の特徴
厳しいルールを課している
子どもの頃からきちんとルールを守らせることは、社会で生きていくためにも必要です。
しかし、あまり細かく、多くのことを守らせようとするのは注意すべきです。
ルールがないと不安になり行動できなくなったり、ルールを守らなければいけないというプレッシャーから動けなくなってしまったりすることがあるからです。
大人の理想を押し付ける
子どもには幸せになって欲しいと願う気持ちから、子どもに大人の期待や理想を押し付けてしまっていませんか。
子どもの考えを否定ばかりしていると、子どもも「いい子でないと認めてもらえない」と考えるようになってしまい、それが心のバランスを崩してしまう原因になりかねません。
大人の前で頑張る分、友だちの前では強くなってしまうのです。
親自身が誰に対しても公平に対応することができていない
よく「子は親の鏡」といいます。子どもは大人の行動をよくみています。
大人が人によって態度を変えれば、子どもたちは「人によって態度は変えていいもの」と学んでしまいます。
特に子どもも1人の人間として対等に扱うことができているでしょうか。
例えば「そんなこともできないの、バカね。」と言われた子どもは、「子どもにはバカと言っていい」、「子どもは見下していい存在」ということを学び、それを当たり前のように友だちに使う危険性があります。
「いい子」に育つことは親にとっては育てやすく、学校でも大きな問題を起こすことがなく親にとっては「自慢の子」であるかもしれません。
しかし、子ども自身は「いい子」でいることに苦しんでいる可能性もあるのです。
意地悪なことをする子は叱られた経験がない!?
前述のように「いい子」の心のバランスの乱れだけでなく、他にも意地悪なことをしてしまう子の特徴としては「叱られたことがない」という場合も考えられます。
子どもは小さなときは自分の欲求が最優先になります。
叩く、蹴るなど上手く言葉にできずにしてしまうこともあります。
しかし、2、3歳ごろになれば叱られたことを理解し始めるのにもかかわらず、叱っても分からないからと何も言葉がけをしないと、子どもも相手の気持ちなどを学ぶ機会がなく、ある程度の年齢になっても意地悪なことを無意識にやってしまうことがあるのです。
しかし、このような場合は集団生活や周囲の大人の適切な言葉がけがあれば、成長と共に落ち着いていく場合が多いかと思います。
外ではいい子、家ではわがままな子
子どもも外に出れば、人間関係や勉強のこと、たくさんのストレスを抱えて生活しています。
子どももそのようなたくさんの経験をして大人になっていきます。
そんな時、ホッと安心できる「家」の存在があることが大切です。
教諭をしていると、三者面談等で「学校ではとてもよく頑張っていますよ。」とお話する機会が多々あります。
すると「家ではダラダラしてて、何もしないんですよ。」とお子さんを苦笑いしながら見つめお話しくださる親御さんがよくいらっしゃいます。
そんな時の子どもの顔は「言わないでよ!」と複雑な顔をしつつも、それがまた親子関係が円滑に見え安心できます。
逆に「家でもよく手伝いをして、勉強も自主的にやっていますよ。」と親御さんがおっしゃった子の顔をみると、無に近く、「この子はどこで安らぐことができているのだろうか。」と心配になることもあります。
子を褒めることが悪いことなのではなく、きちんと親子でコミュニケーションがとれているのか、と心配です。
家で多少わがままでも、お子さんは外でしっかりと頑張っていますよ。安心できる「家」で心のバランスをとっているのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
お子さんを「いい子症候群」にしないためにも、子は親の所有物ではありませんので、子どもの意見をよく聞き、時には親としてどっしりと構えて、子どもの意見を待つくらいの心構えが必要なのかもしれません。