「中学受験は親の受験」などと言われますが、実際には親はどの程度までかかわりあうのがよいのか?
またその際の父親と母親では役割をどのように分担すべきなのか?と悩み出す家庭も多いのではないでしょうか。
中学受験に挑戦することを決めた家庭であっても、当初からこういった部分にまで考えを巡らせることは難しいかもしれません。
しかし、しっかりとスタート時に、ご両親の役割分担を決めておくことが、のちのちストレスを軽減させ、スムーズな中学受験生活への備えとなります。
見切り発車する前に、しっかりと旦那さん(奥さん)と話し合いをし、意志の疎通を図っておきましょう。
目次
変わりつつある、中学受験の父親と母親の役割
中学受験のサポート役は主として母親が担うケースが多いように感じますが、働く女性の数も年々増加し、就業形態そのものが多様化している状況です。
両親ともフルタイムで仕事をして、家事は交替で行う家庭も少なくありませんし、まだレアケースかもしれませんが、旦那さんが主夫として家事に専従し、奥さんが外で働くパターンもあります。
またICTの進歩によってテレワークが普及し、在宅勤務を含む、場所と時間にとらわれない働き方も広がりを見せていますので、旧来の「母親=専業主婦」という考え方は通用しなくなりつつあります。
そのような中で「父親」とか「母親」とか、どちらかを断定して役割を論ずること自体がもはや時代遅れなのかもしれません。
「中学受験に父親はのめり込み過ぎるな!」は本当か?
メディアでは「父親がのめり込むと良い結果が出ない」といった著述が多く見られます。
手始めにこれらを検証してみていきましょう。
父親がのめり込み過ぎるなと言われる理由
殆どが「父親は普段、子供の傍に居ない時間の方が多いのに、受験のことだけあれやこれやと口を挟んでくるのはよろしくない」というのが主意のようです。
ただ、子供との距離が基準なのであれば「父親」と限定する必要はないような気がしますが…。
普段外に出て働いていて、子供と過ごす時間が少ない親は、父親だろうと母親だろうと、子供の受験に口出しをすべきではないというのが正しい解釈です。
信頼関係があれば父親もどんどん参加すべき
長い時間、子供と過ごしていれば良いというわけでもないでしょう。
重要なのは親子で信頼関係が築けていることです。
この要件さえ満たしていれば、父親もどんどん入り込んで行って問題なさそうです。
結局のところこの「父親のめり込み不可」論は「普段関わらないくせに、都合のよいときだけ口を挟んでほしくない」、「『いいとこ取り』はやめなさい」ということを主張しているに過ぎず、「父親」というワードを見出しに使って衆目を集めているだけのステレオタイプの評論です。
お父様方は過敏になる必要はないでしょう。
中学受験に無関心もNG
仕事の忙しさにかまけて、子供の受験にまったく興味を示さなかった父親が、忘れたころになって「何の相談もなく中学受験して志望校も勝手に決めた」などと言い出すこともあるそうです。
「もともと中学受験に反対だった」とか、「こんな学校に高いカネを払うなんて無駄だ」など、あとから「蒸し返し反論」をする親もいます。
せっかく入学した中学にお子さんが楽しく通えるように、まったくの無関心はスタート時に排除しておくべきです。
僅かでも自分の意見が反映されていれば、「蒸し返し」をある程度抑えることができます。
たとえ面倒でも無関心な父親にも意見を求めておくのも対策のひとつです。
中学受験塾との付き合い方
塾の営業戦略は、やはり感情に訴えかけるところが大きいようです。
「私たちにお任せください!」とか「このままだと志望校は厳しいかと…」など、親の勘所を押さえて上手く衝いてきます。
もちろんウソを言っているわけではないので問題はないのですが、こうした商売手法を使うためなのか、案外塾側は父親を敬遠します。
中学受験塾は父親を敬遠したい?
塾側としては、日々会社で営業したり、されたりしている当事者である父親には営業トークがやりづらい面もあるのかもしれません。
それ以外にも、例えば講師と面談をする際などは、意外に父親の方が喋りまくる傾向があり、双方向のコミュニケーションが取れなくなってしまうことがあります。
塾とのコミュニケーションは母親に
ところが相手が母親の場合は、ワーキングマザーであっても、塾側はよいコミュニケーションが取れているケースが多いようです。
これは母親だからこそ、女性だからこその特性があるのだと考えます。やはり塾のスタッフとのやり取りは母親が担当した方が上手く行くような気がします。
父親は、母親に比べて自説を曲げない人も多いそうで、塾側からしたら、正直扱いがしづらいのです。
思い当たるふしのある親御さんはご注意ください。
中学受験における父親の活躍場とは?
それでは中学受験において父親はどこで活躍できるでしょうか?もっとも効果を発揮するのは志望校選びです。
中学受験をするということは少なからず、思考はその先の大学および就職先まで及んでいるはずです。
中学受験の志望校選びは逆算で考える
中学受験をするという事は、終局的には子供が将来どんな職を得て、生業としていくのかは最重要なポイントです。
「どの学校に入学するか」も、目標とする職業に就くために有利かどうかという基準で選ばれるべきなのかもしれません。
いわば逆算で考えるということです。
この逆算思考は実際に社会に出て最前線で仕事をしていないと磨きがかからないものです。
ところが子供は殆どが順算思考で志望校を選びます。母親も子供と同じく順算思考に陥りやすいです。
もちろん順算で志望校を選ぶことがダメなわけではありませんが、備えあれば憂いなし。
先の先まで想定して志望校を選ぶに越したことはないでしょう。
父は国語、母は算数を教えたほうがいい?
それでは次に実際に子供に受験対策用の勉強を教えることの是非を考えてみます。
最初に「算数は父親が教えるべき」という説がありますが、果たして本当でしょうか。
確かに父親が算数を母親が国語を教えるパターンは何例か聞いたことがありました。
ただ、これは単に父親が理系で母親が文系という夫婦が多かっただけで、一概に父親が算数を教える能力が、母親が国語を教える能力がそれぞれ高いということではないようです。
ですから、「教える」役割は父母で分けて考える必要はないと思います。
中学受験における独学について
次に、いわゆる「親塾」、いわゆる独学について考えてみます。
塾なしで親が何から何まで教え込む(プロデュースと言った方が正しいかもしれません)という、ドラマ「下剋上受験」タイプは殆ど聞いたことがありませんが、塾でついて行けない科目などを親がフォローするという例は多いようです。
こうしたいわゆる「親塾」にも賛否両論あります。個人的にはこの「親塾」はあまりお勧めしません。
塾と親でダブルスタンダードになる危険性があるからです。
しかしインテリで教えるのに自信がある親御さんは、得てして状況を配慮することなく「教え魔」に変身してしまいがちです。
もし父親がそういうタイプであったら、母親は冷静にそれを諌めてあげるべきです。もちろん頭ごなしに全否定することはありません。塾と相談してみてください。
親塾をすべきタイミング
ただ例外として、6年生になると模試の連続で、塾側も添削や直しを見てあげられなくなってきます。
そうなると間違った箇所がそのまま放置される事態となり、模試を受けたメリットが十分に享受できなくなってしまうのです。
こんなときはちゃんと親がフォローしてあげるべきです。
中学受験にのめり込んでいたある父親の話
熱が入り過ぎると当然冷静な判断が出来なくなります。以前聞いた話を紹介します。
父親が塾と並行して勉強を見てあげていた家庭です。
第一志望の不合格をキッカケに、冷静だった父親が豹変してヒートアップ。
とても届かないようなチャレンジ校を受けると言い出したり、練習のつもりで受けた学校(もちろん合格していたが、学費が高額なこともあり、当初から行くつもりは皆無)に突然入学すると言い出したり、行動・言動がめちゃくちゃになったそうです。
おそらく第一志望の不合格が悔しくてならなかったのでしょう。ここでは母親が冷静に対応し止めたそうです。
結局お子さんは公立中学に進み、中学受験で不合格だった学校よりもツーランクほど上の高校に進学しました。
その父親も「なんであの時、あんなことを言い出したのか、自分でも理解できない。止めてくれて助かった」と述懐したと言います。
このように父親、母親は常にどちらかが冷静に状況を俯瞰して、補完できる関係を保つことが重要になります。
中学受験に正解はない!家庭によって事情は千差万別
親子の理想的な距離感というのも、正しいサポートの仕方というのも、必ずしも「これ」といった正解はありません。
たとえ、サポートの仕方が間違っていたとしても、結果として「合格」を勝ち取ってしまえば、結果オーライ。
すべてを覆い隠してしまい、振り返って反省することもないのかもしれません。
ただ合格の喜びもひと段落した頃、旦那さん(奥さん)のとった行動や態度を思い出し、改めて不満や怒りがこみ上げてくると、ケンカになったり、中学入学後の主導権争いを夫婦で展開したり、お互いの信頼が瓦解してしまう可能性もあります。
「父親」「母親」としての役割分担ではなく、片方が熱くなり過ぎと感じたときにもう片方が冷静に諌められる関係性を維持していくことが大切ではないでしょうか?