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中学受験において過去問演習は必須ですが、過去問はただ解いて終わりというものではありません。
出題傾向などを細かく分析し、具体的にどう対策していくか、その方向性を決める必要があります。
過去問分析は受験勉強に欠かせないもので、ここはぜひ受験生として注意していただきたいところです。
ここでは、塾講師の経験から、中学受験における過去問分析のやり方・ポイントについてご紹介していきます。
目次
受験勉強において過去問の分析は必要不可欠!
受験勉強において過去問演習は非常に重要な意味を持ちます。
志望校・併願校の入試傾向を知り、実際に問題を解いて本番のシミュレーションを行うために、過去問演習の徹底は必要不可欠です。
特に第一志望校であれば最低5年分、各年度の過去問を2回以上は演習しておくと良いでしょう。
一方、過去問演習というと、何年分行うべきか?何度解くべきか?といった点に意識が向きがちですが、出題傾向や合格ラインなどの分析も欠かせません。
過去問はただ解けば良いというものではなく、
・志望校・併願校でどのような傾向があるのか
・合格ラインを踏まえてどの程度得点すべきか
・配点比率を踏まえるとどの科目を優先的に勉強すべきなのか
など、分析によって勉強の戦略を立てることも大事なのです。
本番で焦らないためにも過去問分析は必須
過去問分析は、本番での焦りや緊張を減らす意味でも重要です。
例えば、ある学校の試験は全体的に時間的な余裕がなく、難問もある程度含まれるため、過去問演習であまり得点できなかったとします。
一方、その学校の合格ラインを見ると、多くの受験生がつまずきやすいのか、かなり低めの合格最低点だったとしましょう。
この傾向を知っておけば、本番で時間に余裕がなかったり、難問を目の前にしたとしても、そこまで焦ることはないはずです。
「もともとそういう傾向なのだから、できる問題を確実に得点して合格ラインを超えれば良い」という気持ちで臨めば、それだけ本番での焦りは減るでしょう。
もちろんそれで気を抜いていいことにはなりませんが、目の前の問題や残り時間に不必要に焦らず、冷静に解き進めるためにも、過去問分析で傾向を事前に把握しておくことは大きな効果があります。
このように、本番で焦らず集中するためにも、事前に過去問分析で念入りに戦略を練っておくことが大切になるのです。
過去問は主に「声の教育社」と「東京学参」の二つ
中学受験における過去問は主に「声の教育社」と「東京学参」の2種類があります。
どちらが良いかを一概に決めるのは難しいですが、解説や入試データの細かさでいえば「声の教育社」、掲載年数の多さなどは「東京学参」のほうにメリットがあると言えます。
どちらの赤本を使うかは各ご家庭のニーズや塾によっても変わりますが、赤本をチェックして傾向と対策を細かく分析することが重要なのは同じです。
最近ではインターネット上でも過去問が掲載されている場合もありますが、やはり情報量が充実している赤本をしっかり購入して対策をしたほうが良いでしょう。
各問題の解説があるはもちろん、各科目の傾向や具体的な対策ポイントまで充実して書かれているので、効率的に過去問演習と分析をするうえで赤本は必須です。
過去問分析で意識したいコツとポイント!
ここまでの話を大前提として、過去問分析のコツやポイントについて整理していきます。
試験科目と配点は細かくチェック!
当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、試験科目と配点は真っ先に確認してください。
科目と配点比率を知ることは、どの科目から優先的に対策するか?という戦略を立てるうえで非常に重要なことです。
この確認が甘く、直前期になって焦る受験生は意外に多いので注意しましょう。
まず、
・算数・国語・社会・理科の4科目入試なのか
・算数・国語の2科目入試なのか
・4科・2科で選択可能なのか
など、日程ごとの試験科目をきちんと把握しましょう。
その次は試験科目ごとの配点です。
配点比率は学校によって様々で、算数・国語で各100点満点、社会・理科で各50点満点といったパターンから、4科目全て各100点満点となる場合もあります。
また、社会・理科で各75点満点、あるいは社会・理科で同じ試験にしてまとめて100点満点や150点満点といったケースもあります。
こうした試験科目と配点は学校によって大きく異なるので、志望校・併願校の過去問分析では必ず科目と配点比率を確認し、具体的な戦略を立てていきましょう。
どの科目から優先して対策するべき?
どんな試験科目・配点のパターンでも、やはり算数・国語の対策からしっかり進めるに越したことはありません。
例えば算数・国語で各100点満点、社会・理科で各50点満点の場合であれば、配点比率が低い社会・理科より、まず各100点満点の算数・国語から優先的に対策することが合理的でしょう。
また、算数・国語の2科目入試で受験する日があれば尚更、算数・国語の対策は急務となります。
一方で、算数・国語・社会・理科の4科目で各100点満点といったケースのように、全科目で配点比率が同じ場合は社会と理科の重要性も上がります。
もちろんどんな配点比率であれ、4科目入試なら社会・理科の対策は必須ですが、4科目で配点比率が同じ試験であれば尚更、社会・理科をおろそかにすることはできません。
このように、各科目の優先度やバランスを考えるうえで、科目と配点比率は正確にチェックしなければならないのです。
決して甘く見ず、細かく正確に把握しておきましょう。
出題傾向の分析をチェック!
中学受験といっても、その出題傾向は入試問題ごとに大きく異なります。
例えば設問形式を見ると、記述問題が多かったり、選択肢問題が中心であったりなど、試験ごとに特徴は様々です。
また、基本レベルの問題が中心に出題される場合もあれば、応用的な内容が多い場合もあります。
こうした傾向は志望校・併願校によって変わりますが、過去問分析では出題傾向の分析を徹底しなくてはなりません。
もちろん各科目の基本を正確におさえて実力を鍛えることが大前提ですが、それに加えて傾向に沿った対策も徹底する必要があります。
例えば記述問題が多く出題される場合、いくら選択肢問題だけ得意でも対処は難しいでしょう。
また、基本レベルの問題が多いために高得点勝負になるようであれば、基本のケアレスミスをとにかく減らす方向で対策する必要があり、難問・奇問ばかりトレーニングしても効果的とは言えません。
受験勉強は傾向に沿った対策が必要不可欠であり、過去問分析ではこうした出題傾向を細かく把握することが大事です。
設問形式の特徴を細かくチェックすべし!
例えば国語、社会や理科の場合、記号の選択肢問題が多い学校もあれば記述式の問題が多い学校もあります。
また、算数の場合でも、解答だけを記入させる学校もあれば、途中式や考え方も記述させる学校もあるのです。
さらに、記述問題の中でも、文字数が長い論述的な問題もあれば、文字数指定が比較的短い問題もあります。
このように、志望校・併願校ごとにどのような出題傾向が見られるのか、特徴をきちんと把握し、苦手な形式の設問は早めに対策しなくてはなりません。
特に記述問題が多い場合、どうしても対策に手間がかかりやすいです。
もともと記述式の問題が苦手な場合はもちろん、記述が得意な場合も油断してはいけません。
過去問で傾向を分析したら、似た傾向の問題を多く解き、徹底して記述に慣れを作る必要があります。
こうした勉強の方向性を決め、傾向に沿った実力を磨いていきましょう。
特徴的な出題傾向を確認すべし!
例えば国語の読解問題の場合、説明文・論説文や小説文・物語文は頻繁に出題されますが、詩を出題する学校は比較的少ないです。
もし志望校・併願校で詩が毎年出題されているのであれば、もちろん詩の対策も進めなくてはなりません。
説明文などと比べると詩の読解問題はマイナーで、対策が難しい部分もありますが、受験校の問題に詩が出題されるなら当然対策は必要になります。
こうした特徴的な出題傾向もしっかり分析しなくてはなりません。
例えば同じ国語であれば、知識問題で漢字の読み書き以外に文法などが出題される学校もあります。
また、先ほど述べたような算数の記述式の問題も特徴的な出題傾向と言えます。
さらに、社会や理科では複数の分野が混ざって出題される総合問題形式の大問もあり、こちらも特徴的な出題のため十分注意しなくてはなりません。
過去問分析では、こうしたケースも含めて問題構成や出題傾向の特徴をしっかり把握することが大切です。
試験時間と時間的な余裕をしっかり確認させましょう
試験科目や配点比率、傾向に加え、実際にどのくらいの時間的な余裕があるのかも確認しましょう。
これは、科目ごとの試験時間はもちろん、その問題の難易度や問題数によっても変わります。
例えば、算数と国語が各50分、社会と理科が各30分といったように、試験時間だけで言えば社会と理科のほうが短いケースも多いです。
ただ、試験時間が短いから時間的余裕がない、長いから時間に余裕があるとは断言できません。
たとえ試験時間が短くても、問題数がそこまで多くなかったり基本レベルの問題が中心であったりすれば、時間的な余裕は多くなるでしょう。
一方で、試験時間が多めに設定されていても、問題数が多かったり難問や手間のかかる問題が多く含まれていれば、それだけ時間の余裕は少なくなります。
実際に過去問を解いたら、こうした試験時間と時間的な余裕についても分析しましょう。
ただ試験時間や問題数だけで判断するのではなく、実際に問いて時間配分の感覚をつかんでおくことが大事です。
あまりに時間的な余裕がなければ数問捨てる覚悟で臨むなど、事前に分析とシミュレーションを重ねておきましょう。
過去の合格ラインをチェック
過去問分析では、過去の合格ライン(合格最低点)も確認してください。
例えば基本レベルの問題が中心に出題される場合、高得点勝負になる可能性があり、その場合は合格ラインも高くなります。
一方で、難易度の高い問題が多い場合は平均点や合格最低点も低くなる可能性があります。
もちろん例外はあり、難問が多くても合格ラインが高い場合や、基本問題が中心でも合格ラインがそこまで高くないケースもあるでしょう。
このように、合格ラインは学校ごとに大きく異なるので、自分が受験する志望校・併願校の合格ラインを確認し、実際にどの程度得点すれば良いか、分析することが必要です。
また、ある科目が苦手で、その科目も含めて合格ラインが高い場合、とにかく他の科目で高得点を取ってカバーしなくてはならないでしょう。
もちろん苦手科目を少しでも得意にする練習は必要ですが、現実的な話として、受験直前期だとそこまで実力が上がらない可能性もあります。
この場合、とにかく他の科目で高得点を確保し、高めの合格ラインでも対応できるよう対策しなくてはなりません。
このように、お子さんの得意分野・苦手分野によっても目標点は変わってきますので、事前に細かく分析する必要があります。
まとめ
今回は、中学受験における過去問分析のやり方・ポイントについてご紹介していきました。
過去問というと、何年分を何周解くべきかといった点に注目されがちですが、過去問分析を通じて出題傾向などを把握し、勉強の方向性を決めていくことも非常に大切です。
試験科目や配点比率、設問形式や特徴的な出題傾向などを知り、どの科目から優先的に対策するか、出題傾向を踏まえてやるべき対策・そこまでやらなくていい対策は何か、など、具体的な方向性を決めていく必要があります。
また、実際に過去問を解いて時間的な余裕がどれほどあるか、時間配分のシミュレーションや分析をすることも大事です。
さらに、合格ラインも細かく確認すると具体的な目標点を決めやすくなるでしょう。
このように、過去問はただ解いて終わりというものではなく、分析を通じて具体的な対策を決めていかなくてはなりません。
傾向に沿った実力を磨くためにも、細かい部分まで念入りに分析を進めていきましょう。