生後6ヶ月頃から離乳食が始まると共に、乳歯が生え始めます。
口の中は生まれてすぐは、無菌状態です。
そして、母親から授乳や、触れ合いを通じて菌を伝播してもらいます。虫歯の原因菌も例外ではなく伝播されます。
しかし、口の中に歯がないため、虫歯菌は定着していませんでした。ところが、歯が生えると虫歯菌も定着し始めます。そのため、歯磨きをしなければなりません。
歯科衛生士である筆者が、子供の年齢別、歯磨き時の注意点をご紹介していきます。
目次
虫歯になる3つの原因
虫歯を予防するには、まずは、原因を知っておく必要があります。
虫歯になるのは、この3つの条件が重なった時に、虫歯となります。
- 菌(ミュータンス菌、ラクトバチラス菌)
- 砂糖(食事の回数、食事の内容)
- 宿主(唾液の量や質、歯質の酸への抵抗力)
歯に付着した歯垢(細菌の塊)が、食事によって摂取した糖質をエネルギー源として、代謝し、酸を産生します。
その酸によって、歯質に含まれるカルシウムイオンやリン酸イオンが溶かし出されます。
この現象を脱灰と言います。
しかし、唾液の緩衝能という口の中を中性に保つ働きによって、溶け出したカルシウムイオンやリン酸イオンは再び歯質に吸収され元に戻ります。
この現象を再石灰化と言います。この脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、脱灰の時間が長くなった時、虫歯になります。
歯の表面に付着した菌
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は歯の表面に付着しやすく、ラクトバチラス菌はミュータンス菌によって溶かされ凹凸の出来た歯面に付着し、虫歯を進行させます。
砂糖が含まれている食品の摂取
虫歯菌は、糖質を代謝し、酸を産生するため、食事の回数が多いと酸を産生する機会が多くなります。
そして、砂糖が多く含まれている食べ物や、口の中に残りやすい食べ物を摂ると、いつまでも口の中が酸性になった状態となります。
唾液の分泌量
唾液の緩衝能の強さや、唾液の分泌量は人によって異なります。
緩衝能が強いほど、早く中性に戻り再石灰化が始まりますし、分泌量が多い方が唾液の抗菌作用や再石灰化作用が高まり脱灰時間が短くなります。
そして、歯質は酸への抵抗力が強い方が穴があきにくく、もちろん良いです。歯質は酸への抵抗力をフッ素を活用することにより、強化出来ます。
歯垢を丁寧に除去しよう
虫歯の原因のところで、ご説明した様に、虫歯は細菌が歯に付着することによって進行します。
つまり、細菌の塊である歯垢を、歯ブラシやデンタルフロスを使用して、丁寧に除去する事が重要です。
年齢別、子供の歯磨きの注意点
では、次に年齢別に歯を磨く時の注意点をご紹介します。お子さんの年齢に合わせた磨き方を試してみてください。
0〜3歳(乳歯が生え始めから揃うまで)
生え始めの時(0〜1歳頃)は、ブラシを当てないといけないほど歯垢は着きません。
ガーゼや綿棒で歯の表面を拭く程度で構いません。また、この時期は唾液量が多いので、簡単に虫歯にはなりません。
歯磨きよりもジュースに気をつけよう
しかし、哺乳瓶等で頻繁にジュースを与えている場合は虫歯に要注意です。
そもそも乳歯はエナメル質と呼ばれる表面の硬い組織が薄く、生えたての歯は、未熟で酸に弱いです。
ジュースに含まれる砂糖によって口の中の細菌が活動し、口の中を酸性にします。頻繁に酸性状態になるとエナメル質が溶け虫歯となります。
歯磨きよりも、ジュースに気をつけましょう。
歯磨きに興味を持たせる事が大切な時期
2〜3歳で全ての乳歯が生え揃います。
2歳頃なると自分で歯ブラシを持ちたくなる子もいれば、イヤイヤ期で歯磨きを嫌がる子もいます。
まずは、歯磨きに興味を持たせる事が大切です。
親が歯磨きしている姿を見せ、子供自身に歯ブラシを口に入れさせてみましょう。
仕上げ磨きは、子どもの機嫌のいい時で構いません。しかし、3日ほど仕上げ磨きが出来ていない時は、虫歯のリスクが上がるので、子どもが嫌がっていたとしても、子どもを仰向けに寝かせて、頭を親の足で固定し手早く磨きましょう。
この時、虫歯になりやすい上前歯唇側と、上下奥歯の噛み合わせの面の2カ所を、主に磨いて下さい。
4〜6歳
顎の成長と共に、乳歯列に隙間が出来てきます。子どもだけでは磨きにくいため、必ず仕上げ磨きをして下さい。
特に、上下奥歯の噛み合わせの面に注意して下さい。
また、ブクブクうがいが3〜4歳から出来るようになってきますので、フッ素洗口液を使えるようになります。フッ素ジェルか、洗口液か、就寝前に使いましょう。
この時期に大きな虫歯が出来ないよう気をつけて
乳歯の下の歯茎には、永久歯の卵があり、徐々に成長しています。
この時期に神経まで達する大きな虫歯が出来ると、永久歯の歯質の低下にも繋がります。
そして、虫歯があると、口の中全体に虫歯菌が多くなるため6歳頃から生えてくる永久歯にも感染してしまい虫歯になりやすい環境を作ってしまう恐れがあります。
6〜12歳(乳歯と永久歯の交換期)
一番奥に6歳臼歯が生え始める時は、乳歯との交換ではないので、生え始めた事に気がつきにくく、手前の乳臼歯との高低差があるので、歯ブラシを当てるのが難しいです。
そのため、歯垢が溜まりやすく、虫歯になりやすいです。
小学生であっても仕上げ磨きは必要
また、この時期は、乳歯が抜け、永久歯が生えている途中の歯が沢山あるので、歯列が凸凹しています。
そして、子供本人もまだまだ不器用であり、手を細かく動かすのは難しいです。
小学生であっても、仕上げ磨きは当分の間は必要となります。
歯垢がどうしても溜まりやすい時期となりますので、細菌の酸産生抑制と再石灰化と歯質の強化のためのフッ素を必ず活用しましょう。
13歳以降
一番奥の第七臼歯が生え始め、全ての永久歯が生え揃います。
第六臼歯の時と同様に、手前の歯との高低差により歯垢が溜まりやすく虫歯になりやすいです。
磨く時は、口を半開きにして、頬粘膜にゆとりを持たせ、歯ブラシを外に開きながら磨いてみて下さい。
第七臼歯まで歯ブラシが届きやすくなると思います。
永久歯は一生もの。抵抗力のある歯にしよう
歯は生えて3年未満は未熟ですので、歯質の強化のためにフッ素を積極的に活用しましょう。
永久歯は、今後一生使う歯です。そのためにも、今のうちからエナメル質を成熟させ、酸に抵抗力のある歯を作りましょう。
フッ素には虫歯を予防する3つの働きがある
フッ素とは聞き慣れた単語ではありますが、実際フッ素にはどのような働きが期待できるのかご存知でしょうか。フッ素には次の3つの働きがありますので、みていきましょう。
- 歯質を強化(ハイドロキシアパタイト結晶を酸に強いフルオロアパタイト結晶に変える)
- 細菌の酸産生を抑制(フッ素が歯垢に浸透し、酸産生を抑制させる)
- 再石灰化の促進(カルシウムイオンやリン酸イオンを素速く再吸収させる)
歯は、生えて3年未満は酸に弱い未熟な歯質(ハイドロキシアパタイト結晶)をしています。
しかし食品に含まれるフッ素に触れることによって酸に抵抗力のある歯質(フルオロアパタイト結晶)に成熟していきます。
そして、歯垢に含まれる虫歯の原因菌の働きを弱めるので、酸の産生を抑制し脱灰を阻止します。
また、再石灰化を促し、脱灰によって溶け出したカルシウムイオンやリン酸イオンを再吸収させます。
虫歯を予防する上で、フッ素の活用は欠かせません。フッ素配合の歯磨剤、ジェル、フォーム、洗口液と様々な活用方法があります。
歯磨きをして子供の口の健康を守っていきましょう
いかがでしたか?
口の中は成長しているので、年代によって、注意点が異なります。重要な事は、小学生であっても、仕上げ磨きは必要であり、どの年代であっても、フッ素は活用していきましょう。
子供の頃に虫歯にならなかった人は、大人になってからも虫歯になりにくい傾向があります。子供のお口の健康を、皆んなで守っていきましょう!