教育大国フィンランドの勉強方法 〜 チェーン学習ってなに?

フィンランドの教育英語では塾を、cram school「つめこみ教育をするための学校」といいますが、じつは塾が存在するのは中国とその周辺国に限られることをご存知でしょうか?

その昔、中国の官吏登用制度としておこなわれていた科挙(国家公務員の採用試験)が、競争率3000倍のじつに熾烈なものであったために、科挙に挑戦する人たちが高名な学者にそれぞれ師事したことが私塾のはじまりといわれています。

その後中国の周辺国、ベトナムや韓国、日本などでも科挙の制度が採用され、私塾の文化も根づいていきました。

現在PISA(OECD 15歳の生徒の学習到達度調査)において常に上位を占めるのは、香港、シンガポール、台湾、韓国、日本、のような私塾の文化を持っている国々です。

その中でも、学校の授業時間はOECDに加盟している国の中で最短(約190日間)、日本より40日も短く受験競争も塾も存在しない北欧の小さいな国フィンランドが、これらの国に交じって上位ランクインを果たしています。

今回は受験戦争も塾もないフィンランドの家庭学習の学習方法、チェーン学習についてご紹介していきます。

フィンランドで行われるチェーン学習とは?

小中学生の帰宅時間が午後4時を過ぎることはまずないというフィンランド。

家庭学習に取り入れられているチェーン学習とはどんなものなのでしょうか。

チェーン学習とは?復習:予習=8:2の重ね学習

チェーン学習のチェーンとは、その名のとおり自転車やオートバイのチェーンのことです。

自転車やオートバイにチェーンが使われているのは、あえて重なる部分をつくることで1枚の金属ベルトを使用する場合より2倍以上の強度と耐久性が得られるからです。

チェーン学習も、あえてのりしろを重ねることで学習の効果を高めようという学習方法です。

復習と予習の割合は苦手科目であれば8:2、得意科目であれば、子どもの様子を見ながら予習の比重を増やしていきます。

チェーン学習の取り組み方!算数の学習方法

チェーン学習チェーン学習は算数(数学)や国語、英語のような知識の積み重ねが必要な学習に優れています。

ここでは、算数を例にチェーン学習の進め方をみていきます。

1.その日学校で解いた問題をもう一度解いてみる。

その日学校で解いた問題をもう一度解いてみます。

お子さんが反復を嫌がるような時は、数字を少し変えただけでよいので類題を用意して行います。

間違ったときは、どこで間違ってしまったのか確認しながらその問題をもう一度解きます。

文章問題など自分で式を作るのが難しい場合、はじめのうちは式をまる暗記してしまってかまいません。

2.算数が得意な子どもには、理解を深めるための難問を1問用意する。

授業の復習が数分で終わってしまうようなお子さんには、学校では扱わない少し難しめの問題を1問用意します。

ただし難関校の過去問のような、極端に難易度の高い問題は必要ありません。

あくまで教科書より少しだけ難しい、理解をさらに深めるのに役立つような問題を選びます。

3.予習はあくまでつぎの授業を理解するための準備の範囲で。

予習はまず、教科書を音読することからはじめます。

正しく読める、意味のわからないことばがないかを確認したら、例題を1題、解説をまねて解いてみます。

「本当に理解できてる?」「それじゃ、自分で一問解いてみよう」などと理解度を試す必要はありません。

あくまで、今度の授業を受けるための準備の範囲での予習にとどめます。

チェーン学習の取り組み方!国語の学習方法

1.まずは教科書の音読

まずは教科書を音読します。

読めない、間違った読み方をしている漢字がないこと、スラスラ読めていることを確認します。

2.「なぜかな?」「どうしてかな?」の問いかけで、子どもの考える力を伸ばします。

その日の授業内容を書き取ったノートを参考に「どうして主人公は急に泣き出したのかな?」「息がつまるってどういう意味?」「病院に入院して点滴を打たれるって書ける?」など、読解や語彙などまんべんなく問題を出します。

解答はたとえ拙くても、途中で訂正せず最後まで聞きます。

解答が間違っている場合も子どもの答えを全否定するのではなく「お母さんはこう思うな」「恐い先生が近くにいると息が詰まる、みたいな使い方をするんだよ」と正しい解答を促すヒントを与えます。

失敗を恐れずまずは自分の考えをはっきり示す、そんな姿勢を身につけさせましょう。

口頭でのやりとりに問題がないようなら、記述式の出題に切り替えてもかまいません。

3.国語力の基本はやっぱり読書です。

予習は、教科書の音読と、教科書に出てくる新しいことばの確認程度にとどめます。

もしお子さんが国語の学習に意欲を示しているようなら、ぜひいろんなジャンルの読書に親子で挑戦してみてください。

歴史書や伝記、夏目漱石や宮澤賢治、科学雑誌やスポーツの解説書など、いろんなジャンルの本について親子で感想を話し合ってみるのもいいですね。

フィンランドは図書館制度が充実していて、国民1人あたり年間で21冊の本が貸し出されています。

家庭での読書時間の長さも、フィンランドの高い学力水準を支えているといわれています。

家庭でチェーン学習をうまく続けるために!おぼえておきたい5つのこと

1.学習の終わりを明確に示す

課題を決めてそれが終わったら終了という形にするか、それとも時間を決めて、30分勉強したら終了という形にするかはお子さんが目標を具体的に示した方がやる気になるタイプか、リミットを設定した方が頑張れるタイプかで判断します。

ただしどちらの場合も、小学生なら学習時間が学年+30分以内におさまるようにしましょう。

量的な無理は家庭学習の継続を難しくしてしまいます。お子さんが「もう少しやりたいな」と思うぐらいの量が理想です。

2.今どんな学習をするべきなのか、何が理解できているべきなのか常に意識しよう

今の学年でどこまで学習するべきなのかを常に意識します。

得意科目だからといってむやみに先取り学習を進めても、本質を理解していない学習はいずれ壁に突き当たってしまいます。

せっかく自信をもっている科目を嫌いになってしまっては本も子もありません。

先取りはあくまで授業をより深く理解するためにおこなうものです。

3.日々の進捗にはあまりこだわらない

チェーン学習に慣れるまでは、毎日亀の歩みのようにしか教科書やテキストが進まないかもしれません。

しかし、チェーン学習は毎日継続することで大きな効果を生む学習方法です。

1日ごとの進みぐあいにあまりこだわらず、挫折しないことを目標に続けてみてください。

4.子どもにあまり教えすぎない

子どもに教えすぎないようにしましょう。

手取り足取りすべてをかみ砕いて教えていくと、子どもが受け身の学習態度を身につけてしまいます。

教えてしまえば早いですが、わからないことばがあったら自分で辞書を引く、計算が間違っていたらどこでまちがえたのかを自分で探す、または授業のノートを見直すことでこそ、子どもたちの学ぶ力は鍛えられます。

適度なアドバイスを与えたら、あとはお子さんが自分の力で解決するのを待ちましょう。

5.子どもがいま学校でどんな学習をしているのか把握する

フィンランドの親たちは、子どもの学習内容に常に興味を持っていて、いま学校でどんな学習をしているかをチェックしています。

そのため、もし子どもが「世界で3番目に大きい地上の生き物はなんだ?」と訊いてきたら、「ああ、理科の授業で生き物調べをしているから、生き物についてもいろいろ興味を持つようになったんだな」と理解して対応できます。

「なぞなぞなら、あとにして」と答えるかわりに「1位はゾウだよね。でも3位はわからないな。サイ?キリン?カバ?」と親も興味を示せば、お子さんの学習意欲をさらに高めることができますね。

家庭学習をサポートする親

フィンランドの勉強方法のまとめ

いかがだったでしょうか。

日本の小学生の通塾率は全国平均で47.3%、中学生の通塾率になると61.1%にのぼります。

保護者も子どもたちも多くの方が「受験勉強は塾でおこなうもの」と考えていることが窺えます。

しかし、学習の基本は自学自習。

子どもたちには、大人になっても学び続けるためのスキルを、まず身につけてほしいなと思います。

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