今や、知育教材をはじめさまざまな分野で「幼児教育」「早期教育」が謳われています。
もちろん、幼児に視覚的・感覚的な理解を促すよう、DVD・ゲーム・ごっこ遊び…とそれぞれのぶんやでさまざまな工夫が凝らされていることが多いのですが…。
筆者は、学童保育での勤務経験があり、年長児(卒園前後)~小学生の保育をしていました。
そこでの習慣だったのですが、ある方法を取り入れていることで、子どもたちがどんどん算数を身近に捉え自分のものとしている光景を見てきました!
それは…「おやつの買い物」です!
座学やロールプレイングとは少し異なる視点の教育法として、参考にしてみてください。
目次
小学1年生の算数力をつけるために!おやつを買おう!
元勤務先の学童では、月に1~2度、子どもたちが100円玉を握りしめスーパーまでおやつを選びに行く「100円おやつ」というイベントがありました。
高学年ともなれば、計算をしながらおやつを買うことは容易なのですが、これが小さな子どもたちにはなかなか難しいのです。
まだ「1+1」すら未習の段階の場合もありますし、2年生でも10の位の計算は苦手な子が多いです。
100円をオーバーしてしまうともちろん買えませんし、「30円のおやつ1つだけ」でももちろん良いのですが、子供の心理は「100円めいっぱいおやつを買いたい」ものです。
子供は足し算・引き算の概念を超えて発想する!
おやつを買いたい子ども達は一生懸命に計算します。
「うまい棒は10円。うまい棒は10本買えると言われた(時々高学年や先生に教えてもらいます)。このチョコは30円…うまい棒3本分。だから、あとはうまい棒7本分…70円!?」
もはや、加減だけでなく考えようによってはまだ到底習っていない掛け算・割り算の考え方まで駆使して、的確な考え方をしています。
子どもならではの発想です。
もちろん、「100円渡して丸投げ」ではありません。
時間まで考えても上手くいかない場合にはサポートはしますが、学童ではほとんどの子どもが、3回目くらいの100円おやつでは「買い物感覚」を身につけているのです。
なぜ2ケタの計算が可能?1ケタ加法も不得意なはずなのに…
しかし、100円おやつを何度経験しても、子どもは宿題にはつまずきます。
「たろうさんは30えん、はなこさんは70えんもっています。合わせていくらでしょう?」…「さっき(スーパーで)できてたでしょう」と言いたくなります(笑)。
しかし、教科書学習と実践は、同じ2ケタの計算、100円という答えでも、子どもにとって全く別物なのです。
「勉強が面白くない」という高学年~高校生くらいの子どもたちの悩みのワーストの常連であるこの悩みは、実は子どもたちにとって「身近でないから」「何の役に立つのかわからないから」ではないでしょうか?
もっといえば、「学ぶことで自分に(受験以外の)メリットが無いから」と自分との縁遠さから来るもののようです。
宿題の算数は出来ずにおやつの算数はできる理由
小学校低学年ではまだそこまでの深みにははまっていない場合が多いですが、子どもにとって「たろうさんとはなこさんがいくら持っているか」は自分には関係のない話で難しく関心も薄いのですが、「私の100円でどれだけのおやつが買えるか」はその子にとってその時一番の関心事なのです!
よって、「得意か不得意か」ではなく、「なんとかしたいか、どうでもいいか」という疑問に置き換えると「最高潮になんとかしたい課題」なのです。
よって、あの手この手で考えるのですね。
「100円」なのがまた良い
低学年でもこの方法が可能であるなら、「じゃあ“500円買ってもいいよ”というともっと算数が身近になるかな?」と思いませんか?
子どもの力が500円のご褒美数回で跳躍的に伸びるのであれば、価値あるワンコインですね。
しかし、答えはNOだと思います。
500円ともなると、「なんとか計算してみよう」という意欲も薄れますし、どうにか計算をしていたところで、先にカゴの中がゴチャついたり選択したものの単価を忘れてしまったりという、子どもにとって「500円分も買える」という喜びよりも「わけがわからなくなった」という戸惑いが勝ってしまいます。
たくさん買えるのは嬉しいですが、金額を大きくすると「おもちゃ付きの(単価の高い)お菓子を1つ買ってもらって、それでいいや」となってしまうかもしれません。
かといって、50円だといくつか組み合わせる楽しみに欠けますし、80円などは小銭も金額も中途半端で逆に計算がしづらくなります。
子どもにとって「たくさん買える」「チャレンジすれば理解できる」「キリが良い(ので計算がわかりやすい)」というメリットが3拍子揃った金額が、“100円”であると考えます。
算数の勉強に100円おやつを利用するにあたって
この“100円おやつ”は、家庭でも取り入れられますし、実際行うと子どもも喜んで買い物についてきてくれることでしょう。(おやつのコーナーでの滞在時間は長くなりますが。)
しかし、ご家庭で行う際には、いくつか注意点もあります。
普段のお買い物の延長として「100円くらいおやつ買ってもいいよ」と気楽にざっくりお楽しみを与える場面と、「100円おやつ(実践的学習)」は分けて考えた方が良いかもしれません。
また、学童など集団生活の場ではなく“家庭で行うが故に起こり得るデメリット(学習の壁となる特徴)”も含め、以下の点には気をつけてみてくださいね。
注意点
- 税抜表示の店、32円等端数設定が多いお店は、ややこしいのではじめはできるだけ避ける。(駄菓子屋さんがあれば良いかもしれません。また、学年が上がったり慣れてきたら税計算や暗算能力を上げるためにもこのようなお店の方が良い場合も出てきます。)
- スマホや電卓を与えない(電卓の使い方を学ばせる目的でないならば。)
- 考え方を教えたりどうしても難しい場合には助言はOKだが、基本的には親が口を出さない。(おすすめのサポートは指を貸してあげる方法です!)
- 子ども用のカゴなどを持たせ、他の買い物と分けて集中して考えられる環境を与える(未精算のお店の物なので勝手に私物の袋に入れたり床に並べてはいけません。)
- 100円を握らせて自分で支払いをさせる。足りなくても小銭を手わたさず、一品やめるなどの工夫を考えさせる。しかし、レジが混雑している際など状況に応じて店員さんや他のお客さんの迷惑にならないよう配慮することは必要。
- お店でのマナー(これまでのように親について回っただけでなく、自分で並んで支払いまで行うすべての過程で)の再確認
- 「1円足りないと買えない」というお金の仕組みや大切さについて知る
これらの機会も、子どもの社会性や金銭感覚を養う大切な要素となりますので、大切に見守ってみてあげてくださいね。
また、練習として自宅でストックしてあるお菓子に適度(できれば実売価格に近い)な値札をつけ、買い物の練習をさせるのも効果的です。
この学童では、新1年生に対しては、必ず一度はこの方法で練習をおこなってから、お店に行っていました。
できた経験を褒め、算数につなげられるようサポートを
先述のように、子どもは「自分のお菓子を選ぶ」からこそ楽しさがあり、自然と算術を考え使っていきます。
まずは(たとえサポートが9割を占めたとしても)自分で考えて100円分の買い物ができたことを大いに褒めてあげましょう!
そして、少し難しいですが、これは算数につながっていること、「算数をもっとがんばるとお買い物ももっと楽しくなること」を伝えてあげてください。
この際、
- お得に買える
- 時間短縮で買え早くおやつを食べられる
- お買い物を任せられる
- もっと高いおもちゃにも応用できるようになる
など、モチベーションアップにつながる声かけをしてあげてくださいね。
低学年なりに「算数は楽しい」「算数をがんばると良いことがある」という漠然とでも良いのでポジティブな思いをもてると、それがさまざまなシーンで生きていくことに自ら気づくでしょう。
日常のあらゆるシーンに算数は隠れているのです。
- お花が3つ咲いている。昨日は1つだったから…今日は(3-1で)2つも増えたね!
- 私の家族は3人。足はみんな2本あるから…全部で(2+2+2、2×3で)6本!
このような感じです。
もちろん、これらを導入に使うのも良いのですが、ひとたび勉強に苦手意識が湧くと親が恣意的に「遊んでいたのに勉強の話をしているな…」と感づいてしまうことも多いのが、幼児期よりも厄介な場面かもしれません。
そこで、「おやつ」という子どもにとって最高のご褒美で、獲得するためには計算が不可避な方法を選んでみるわけですね。
算数への苦手意識を無くしておくと可能性もぐんと伸びる!
筆者は複数の学童保育での勤務経験と職員のコミュニティ(他の施設との情報共有)があるのですが、実は“100円おやつ”は筆者の周りの学童ではほとんどの箇所で取り入れられているお楽しみ兼学習でした。
学校でもそうですが、学童保育など集団生活の場では、必ずしも職員がその場で子ども全員をまんべんなくサポートできる状況ばかりではありません。
そういった環境だからこそ、子どもたちはすぐに職員に答えを求めるのではなく、自分で良い方法を考えてみたり、自然と子ども同士の助け合いが見られる場面もあります。
これはご家庭だときょうだい間やお友だち間で応用できるでしょう。
100円おやつ一つでも、さまざまな可能性が広がっていくシーンを感じることができます。
また、算数への苦手意識を自然と払拭しておくことは、必ずこの先の学習・受験・社会生活に吉と出ます。
一つの案ですが、無理の無い範囲でご家庭でも取り入れてみてくださいね。