算数の計算を正確に行うには、丁寧な途中式が非常に重要です。
一方、途中式を書いてくれない、または書いても雑にまとめてしまう子どもも少なくありません。
書くのが面倒という理由のほか、自分なら暗算できると過信しているケースもあり、親としてどう説得すれば良いのか、悩んでしまうこともあるかと思います。
この記事では、塾講師の経験から途中式を書かない子どもへの声かけ・アプローチ方法についてお話ししていきます。
お子さんの計算力アップのためにも、ぜひ参考にしてみてください。
目次
途中式を丁寧に書くのは算数の基本!
計算ミスを減らすためには、途中式を丁寧に書く習慣が非常に大切です。
途中式というのは、解答に至るまでの途中過程を意味します。
どのような計算手順で自分が解答を導き出したのか、それが途中式で示されるわけです。
ここを雑に書いてしまうと、当然計算ミスは増えます。
途中式が汚く、自分の計算手順や解法が途中でわからなくなれば、正答に辿り着くのは困難でしょう。
また、途中式を書かず全て頭の中で計算しようとしても、計算の精度は下がります。
複雑な計算であれば尚更、全て暗算しようとしても正答は難しいでしょう。
頭が混乱し、かえって計算時間が増えることにもなりかねません。
さらに、途中式が雑だと数字の転記ミスなども増えます。
「0」と「6」を間違えたり、「7」を「1」と誤解したりなど、ケアレスミスの原因になってしまいます。
このように、途中式を丁寧に書くか書かないかで計算の精度は大きく変わります。
途中式を丁寧に書く習慣がなければ致命的に計算ミスが増えるので、なるべく早い段階から途中式の重要性を理解させることが大事です。
簡単な計算でも途中式は必ず丁寧に書く習慣をつけておきましょう
簡単な計算でも、途中式はなるべく丁寧に書く習慣が大事です。
それこそ九九のように暗算だけですぐ答えが出せる問題は別ですが、一定の計算処理が必要な問題は、たとえ簡単な問題でも途中式は丁寧に書きましょう。
とにかく丁寧な式は算数の基本でもあり、ミスを減らすためにも非常に重要なことです。
子どもが途中式を丁寧に書かない理由
途中式を書かない、または書いても雑にまとめてしまう子どもは多いです。
理由としては、
- 書くのがめんどくさい
- 暗算できるという過信がある
- 早く解くことを意識してついつい式を書かなくなる
などが挙げられるでしょう。
特にめんどくさがって式を書かない子どもは多く、どう対処すれば良いのか、親としても悩みどころになるかと思います。
ただ「式を書いて」とだけ言っても子どもは納得してくれないでしょうし、親として声かけを工夫しなければならないでしょう。
以下、途中式を丁寧に書かない子どもへのアプローチ方法について、状況別に分けてご説明していきます。
めんどくさがって式を書かない場合の対処法
なぜ式を書く必要があるのか?を教える
子どもが途中式を書くのを面倒に思っている場合、そもそも途中式の重要性を理解していない可能性があります。
子どもの中で「なぜ面倒な式を書かなければならないのか?」という思いが強ければ、ただ「式をちゃんと書いて」と言っても効果は薄いでしょう。
この場合、途中式は計算手順を示すものであり、ここが雑だとミスが増えるという点をしっかり教えてあげる必要があります。
途中式の過程を見せる
教科書の計算例や問題集の解答などでは、それぞれの問題で途中式が丁寧に記載されています。
こうした途中式を子どもに見せてあげてください。
一つひとつの計算に意味があること、一連の計算手順によって解答が導き出されることを、実際の計算例・解答例から示す必要があります。
途中式の重要性がわかっていない子どもは、こうした計算例・解答例を見ていなかったり、流し読みしている可能性が高いです。
そのため、親のほうからも途中式の重要性を強調し、実際に計算例・解答例を見せ、途中式のイメージを子どもに植え付けることが大事です。
途中式を書いたほうが最終的に楽ということを教える
確かに途中式は面倒かもしれませんが、途中式を丁寧に書いて正確な計算をしたほうが、結局は楽なのです。
途中式を書かなかったり雑に書いたりすると、それまでの自分の計算手順がわからなくなります。
この場合、一度計算でつまずくと軌道修正は非常に困難です。
いままでどうやって計算していたのか、どこで計算を間違えたのかがわからなくなり、結局最初から計算をやり直すことになります。
特に全て頭の中で計算しようとすると、一度頭が混乱すればそこで計算がストップしてしまいます。
これではタイムロスになり、結局やり直しになって時間がかかる結果になるのです。
そのくらいなら最初から途中式を書いて計算したほうが速かった、という話にもなるでしょう。
このように、たとえ面倒でも途中式は丁寧に書いて計算を進めたほうが、最終的には楽です。
この点もしっかり教えてあげましょう。
途中式の重要性を理解しつつも面倒に思ってしまう子
途中式の大切さを理解していながら、やはり書くのは面倒だと思ってしまう子どももいます。
この場合は途中式の重要性を教えるより、「途中式を書いたほうが最終的に楽」という話をしてあげたほうが良いでしょう。
「急がば回れ」という言葉にもあるように、素早く正確な計算をしたいなら途中式は丁寧に書くことです。
先ほど述べた通り、途中式を書かなかったり雑に書いたりして途中でつまずいたら、それこそ計算のやり直しに時間がかかってしまいます。
最終的に時間をかけないためには、丁寧にやるべきところは丁寧に進めるべきです。
また、丁寧に書く習慣を繰り返すと、「素早く丁寧に書く」というスキルも身に付きます。
これは計算において非常に重要であり、そこに到達するためにも、丁寧に書く練習をコツコツ積み重ねる必要があります。
このような話も含め、丁寧な途中式の意義を教えてあげましょう。
暗算できるという過信がある場合の対処法
自信と過信は異なる
途中式の大切さを理解しつつも、暗算できるという過信がある場合もあります。
ある程度の途中式を書きつつ、「この計算のここだけは暗算できる」と過信し、ミスをしてしまうようなケースです。
こうした子どもに途中式を書かない理由を聞くと、だいたいは「あのくらいなら暗算できると思ったから」と答えるでしょう。
しかし、自信と過信は異なり、自分の計算力を過信していると成績が下がるおそれもあります。
難しそうな計算を無理に暗算するのではなく、自分の実力を過信することなく、書くべき途中式はしっかり書かなくてはなりません。
この点は親御さんからもしっかり伝えてあげてください。
最低限書くべき途中式はどこか?を教える
もちろん途中式が必要な計算でも、一部で暗算が可能な場合はありますし、当然ながら九九などは暗算で行われるでしょう。
しかし、明らかに途中式を書いたほうが良い計算に対し、「このくらいなら自分は暗算できる」と過信してしまうと、それだけミスは増えてしまうのです。
このような子どもには、最低限書くべき途中式はどこか?を教えてあげる必要があります。
例えば問題集の解答を見て、途中式が書かれている場合はそれを示し、「ここは省略せずきちんと書いたほうが良い」と伝えましょう。
お子さんの途中式のどこが足りないのか、計算例・解答例と照らし合わせてチェックしてみると効果的です。
褒めるべき点は褒めてあげましょう
暗算できると過信している子どもは、決して計算そのものができないわけではありません。
一定の計算力はあり、テストなどで一定の結果を残している場合も多いです。
だからこそ、ある程度計算ができることを褒めつつ、ミスを減らすために途中式の重要性を再確認させなくてはなりません。
ある程度の計算力があるからこそ、過信によって計算ミスが増え、それで成績が下がるのは非常にもったいないです。
お子さんのやり方を頭ごなしに否定するのではなく、一定の計算ができることはきちんと褒め、そのうえで書くべき途中式は書くように伝えてあげてください。
早く解くことを意識してついつい式を書かなくなる場合の対処法
これは特に中学受験生にありがちなケースです。
中学受験の入試問題は時間との勝負であり、試験時間・時間配分は常に意識する必要があります。
しかし、いくら早く解けるといっても、正確さが伴っていなければ意味がありません。
厳しい話ですが、スピードと正確さはやはり両立しなければならないのです。
以下、このようなケースについてもポイントを整理しておきます。
スピードと正確さの両立を意識させる
繰り返しますが、あらゆる入試問題はスピードと正確さの両立がカギです。
算数であれば、素早く計算処理をしつつ、その計算は正確でなければなりません。
スピードばかり意識すると、どうしても途中式はおろそかになり、計算ミスが増える要因にもなります。
お子さんが途中式を書かない理由として、「書いているヒマがないと思った」「素早く解くことが大事だと思った」などと答えたら、とにかくスピードと正確さの両立を意識させてあげてください。
素早く解こうという意識はとても大切ですので、その点は褒めつつ、書くべき途中式は書いた方が良いということを教えてあげましょう。
「急がば回れ」という点も意識させる
先ほども述べましたが、計算においては「急がば回れ」という視点も大切です。
スピードを意識するあまり、途中式をおろそかにしたり暗算を多用したりすると、結局はミスが増えてしまいます。
また、途中で自分の計算がおかしいと気づいても、途中式がまとまっていなければどこを改善していいかがわかりません。
初めから計算をやり直すようなことになれば、かえって時間もかかるのです。
このように、焦って計算を急ぐのは何かとデメリットが増えます。
「急がば回れ」という視点も踏まえ、まずは丁寧に途中式を書く練習から初めてみましょう。
そのトレーニングを繰り返すことで、スピードもおのずと身についていきます。
途中式を書く時間がもったいないと考えてしまう子どももいる
子どもによっては、「途中式を書く時間がもったいない」と考えている場合もあります。
時間がなくてやむを得ず途中式を書かなかったケースとは少し異なり、「途中式を書くのは時間の無駄」と考えているようなケースです。
この場合は、途中式の重要性を再度子どもに意識させなくてはなりません。
スピードと正確さの両立を意識させるのはもちろんですが、途中式の重要性そのものに対する理解が薄れている可能性があるので、改めて途中式がなぜ大切なのか教えてあげましょう。
たとえ現時点でお子さんの成績がそこまで下がっていなくても、途中式を甘く見ていると高確率で計算ミスは増えていきます。
なるべく早い段階で「途中式を書くのは時間の無駄」という発想から抜け出し、書くべき途中式はしっかり書いて計算トレーニングを行うことが大事です。
改めて計算手順を確認していく
途中式の重要性を再認識してもらうためにも、教科書・問題集にある計算例・解答例を見せ、一つひとつの計算手順を一緒に確認していきましょう。
そのうえで、「これを全て暗算するのは困難」「これを全て頭の中で計算処理するのは困難」という意識を持ってもらう必要があります。
暗算できると過信しているケースとも似ていますが、最低限書くべき途中式はどこか?を再度認識してもらうことが重要です。
お子さんの考え方を否定はせず、褒めるべき点は褒める
「途中式を書く時間がもったいない」と考えている子どもも、決して計算力が低いわけではありません。
また、勉強に対する意識が低いわけでもありません。
子どもなりに効率良く解くことを考えていたり、素早く解くことを意識した結果、「途中式を書く時間がもったいない」という発想に至ったと考えられます。
そのため、子どもの考え方を頭ごなしに否定するのではなく、子どもなりに勉強について考えていることはきちんと褒めてあげてください。
そのうえで、やはり途中式は重要であるという点を意識してもらうことが大事です。
勉強に対する意識がきちんとあるなら尚更、途中式を甘く見て計算ミスが増えるのはもったいないです。
お子さんの成績アップのためにも、親子でしっかりコミュニケーションをとり、途中式の重要なポイントを共有しておきましょう。
まとめ
今回は、算数で途中式を書かない子どもへの対処法・アプローチ方法についてお話ししていきました。
途中式を書かない理由としては、
- 書くのがめんどくさい
- 暗算できるという過信がある
- 早く解くことを意識してついつい式を書かなくなる
などがあります。
まず、途中式を面倒に感じてしまう子どもに対しては、そもそもなぜ途中式が重要なのか?をしっかり説明しなくてはなりません。
途中式を丁寧に書かないとそれだけ計算ミスは増えること、全て頭の中で計算しようとするとかえって時間がかかることなどを伝え、丁寧な途中式がいかに重要かを理解してもらう必要があります。
また、自分なら暗算できると過信しているケースでは、ある程度の計算ができることは褒めつつ、自信と過信は違うという点を伝えてあげましょう。
最低限書いたほうが良い途中式はどこか?を教え、ミスを減らして計算力をさらに高めていくことが大事です。
さらに、時間を意識するあまり途中式を書かなかったり雑に書いたりする場合は、スピードと正確さの両立が重要であることを再認識してもらう必要があります。
スピーディーに解く意識があることは褒めつつ、やはり正確さも重要であるという点はきちんと教えてあげましょう。
こうした点も踏まえ、親のほうでもアプローチを工夫し、丁寧な途中式を書く習慣を親子で作っていきましょう。