子どもを大切に育てるという意識が以前より高くなっていることから、「仲良し親子」が日本では増えているといいます。
決して「仲良し親子」は悪いことではありません。
しかし、自立する時期にきちんとした自立が行われないと、後に苦労してしまうのは子どもたちです。
ここでは、教諭経験のある筆者と、子どもが自立するために家庭で気を付けるべきことは何か、考えいき、お子さんの健やかな成長を見守っていきましょう。
子どもの自立の時期
「将来子どもには自立した子になって欲しい」という気持ちを持っていると、幼い頃から甘えを許してはいけない、と考えている方もいるかもしれませんが、実は甘えることは自立への大切なステップになります。
人間は「身体的早産」の状態で生まれてきます。
身体的早産とは、自立した生活ができない状態で生まれてくることをいいます。
生まれてすぐに一定の自立した生活を送ることができる能力を備えるためには、胎内で約21か月過ごす必要があると言われていますが、人間は約10か月という短い期間で生まれてしまいます。
つまり、1歳ぐらいになるまでは本来胎内で過ごすべきところ、人間の構造上な問題により早く生まれてしまうのです。
人間は生まれてからは授乳や排泄処理など必要なお世話をしてもらい、親や養育者の手を借りながら成長していきます。
親や養育者に100%依存していたところから、少しずつ成長していくのです。
自分で立ち、歩き、食事をし、トイレに行けるようになっていきます。
このような生活習慣、行動の自立は、自立していく様子が目に見えるのでわかりやすいですが、一方で分かりにくいのが「精神的自立」の部分です。
子どもの心は複雑です。
その複雑な心は、「依存」と「自立」を彷徨いながら成長していきます。
自立に必要な「甘え」とは?
赤ちゃんは親や養育者に依存して生活しています。
お腹が空けばミルクを与えてもらい、オムツがぬれて泣けば取り替えてもらえます。
自分の訴えに応えてくれる存在に安心し、甘えることができます。
赤ちゃんは「安心」と「甘え」の中で成長していきますが、成長と共に「不自由さ」を感じるようになります。
「自分の思い通りにならない、だから自分でやってみよう」という気持ちの芽生えです。
何でも「自分でやる」と言ったり、できないことを自分でやろうとしたり姿が見られるようになります。
これが2歳頃にみられる「第一次反抗期」で自立への第一歩です。
しかし、上手くいかなかったり、親や養育者から離れたりすると、今度は「不安」な気持ちが芽生えてきます。
すると、親に再び「依存」「甘え」を求め、また安心できると、不自由からの解放を求めて自立をしようとしていきます。
このような「依存」「甘え」と「自立」の間を行ったり来たりしながら、少しずつ精神的な面も成長をしていきます。
ですから「甘え」は決して「自立」の妨げになるものではありません。
むしろ、「甘え」られる場所、「安心」できる場所があることが分かっていると、「自立」に向けての1歩を踏み出すことができるのです。
「甘え」と「甘やかし」の大きな違いと注意点
「甘え」は子供の成長には大切なものですが、「甘やかし」は子どもの将来をダメにしてしまう可能性があるので、「甘やかし」には注意が必要です。
では「甘え」と「甘やかし」の違いは何でしょうか。
「甘え」は愛情を求める行為であり、子どもがやって欲しいと願うことです。
「甘やかし」は子どもが自分でできるのにやらせなかったり、やりたいのに親がやってしまうことです。
ついつい時間がないと、自分で身支度を整えさせると時間がかかるので、着替えさせてしまったりしていませんか?
これは「甘やかし」になります。
過保護や過干渉と呼ばれるような行為の多くは「甘やかし」です。
いつまでも「甘やかし」ていると、親や養育者に強く依存してしまい、精神的な自立が上手くできなくなる可能性があります。
「甘え」と「甘やかし」の違いを見極める方法!
しかし、「甘え」と「甘やかし」は非常に似ているので対応に迷ってしまうこともあるでしょう。
例えば、もう1人で食事ができるはずなのに、「食べさせて」と言ってきた場合、これは「甘え」でしょうか。
食べさせると「甘やかし」になってしまうでしょうか。
もしかしたら、甘えたい気持ちがあるのかもしれませんし、ただ単に食べるのが面倒だから食べさせて欲しいのかもしれません。
この様に迷ってしまった場合は、子どもの様子をみて判断してあげましょう。
表情や仕草など普段と違っているところはないか、何か様子がおかしくはないか、その前にどんな会話をしていたか、総合的に判断するしかありません。
行き過ぎた「甘やかし」は精神的な自立のためにはよくないですが、ここで「甘え」を突き放してしまっても子どもを傷つけてしまうかもしれません。
迷ったら、受け止めてあげるようにしてあげてもいいかもしれません。
子どもの自立は親の自立!
育児の最終ゴールは「自立」であると言われています。
親や養育者がいなくとも子どもが生きていくことができるようにすることです。
そのために、幼い頃から食事や排泄、着脱などの生活的自立をしつけているのです。
そして子どもが社会の中で働き、経済的な自立をし、自分の人生を歩むことができるようにすることが親としての役割です。
子どもが成長するということ、自立するとうことは、親や養育者との距離が離れていくものであり、それは自然なことでした。
しかし、最近はいつまでも親も子も離れられず、互いに依存しているケースも多くみられます。
親から自立できない人は、主体性に欠ける傾向がみられるそうです。
たしかに親に言われたことをやっていればいいのは、考えることも必要なく、楽なことです。
しかし、いつまでも親や養育者がいるわけではありません。
自分の道を歩んでいけるように、親や養育者も子どもに自立の時期がやってきたら、離れて見守ってあげましょう。
そして「甘えられる場所」の用意だけは忘れずに。